5—10
———起きなさい
「…………」
———起きてー
「…………」
———可愛いの穿いてるわね
ガバッ
———やーね、見えないわよ
「………どのくらい寝てました?」
———そんなに経ってないよー時間の感覚なんか無いけど
「あの……帰ったのでは?」
———うん、まあ……あと長くて数日くらいだろーし、付き合ってあげよっかなーって
「………そう、ですか」
何が、とは頭に浮かんだが口にはしなかった。
時間の感覚が無くなるのは本当で、昼なのか夜なのか1分なのか1時間なのか、知るすべがない。
ひたすらに刀を振るっては、いつの間にか剣道の稽古のような感覚になっていた。
「ここ、なんでこんなに息苦しいんですか」
———んーと、君の居た場所と空間が違うからかな。動き続ければ疲れるし飲まず食わずで生きながえられない。
「………ふぅ」
ただ反復で素振りしていても効果が無いので、風香は息を整えて、イメージトレーニングを始める。
それから気の長くなるような時間、実際にはそんなに経過していないかもしれないが、頭の中でイメージした敵との戦いが繰り広げられた。
様々な魔物との戦いの果てに、次に思い浮かんだのは刀を折ったあの巨大鳥。
勝ち筋が見えない相手。
それでも必ず斬れる場所はある。
カチャン
風香は刀を鞘に収めて呼吸を整える。
上空の敵に攻撃するには助走が必要だ。
一歩
二歩
三歩
大きく前方に跳んで斬りかかる。
「違う……もっとこう……」
ひたすら同じ動作を繰り返しては試行錯誤する。
そして———
「一歩、二歩……三歩っ」
ダンッ
強く地面を蹴り跳び上がる。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ」
真上に大きく一閃。
すると刀は強く光り輝き、空間を切り裂いた。
「!」
いつの間にか天井の高い場所に来ているのに気が付いて、上空に開いた何かに驚いた。
———おめでとー! やっぱ凄いよ君!
「でき……た…?」
———才能と実力がちゃんと備わってないと出来ないよ!
「〜〜〜っっよしっ! よし! やったぁ!!」
———早く行かないと、穴閉じちゃうよ? あれが帰り道だから
「えっあ!?」
———最後にいいモノ見れたな
「ありがとうございました! 行ってきますっ」
———ふふ、バイバイ。侍さん。
その後、山の洞窟まで戻った風香は迎えに来た晴と会い今に至る。
「するってーと、あの黒いオーラを斬れるってことなのか」
話を聞き終えた真希は改めて確認する。
それに対し風香は大きく頷いた。
伝説の鳥に唯一ダメージを与えた事に希望が生まれて改めて作戦会議が開かれた。
莉衣奈たち16人は円形で座り、それぞれ意見を述べる。と言っても陽子は吹雪の膝枕でお休み中。
「最終的には、コイツを口の中に放り込めばいい」
真希は黄色い野球ボールサイズの塊を手に持って見せる。
「さっきまでは、近付く事すら出来なくて頭を抱えたが……風香の力があれば可能になる」
「あのー……ちょっといいかな?」
声がする方に皆んなが振り向くと、ネコネとその後ろにうさぎが立って居た。
「2人とも無事だったんだ!」
莉衣奈が笑顔で迎えると、ネコネは苦笑してから
「まあ、安全地帯に居ましたからね」
「安全地帯? どこ?」
柑奈が反応して聞くがネコネは「それは後で」と返し続けてモニターを差し出した。
莉衣奈がそれを受け取ると、映像が停止した状態で、ネコネは説明をする。
「うさぎの妖精さんの映像なんだけど、あの鳥の黒いオーラが風か何かで揺らめいた時に一瞬だけ見えたんですよ」
「んー? この縦線みたいなのかな」
「切り傷かねぇ?」
莉衣奈の持つモニターをイズナが覗き込んでくる。
「傷だとしたら、そこは斬れるってことなのかも」
「フウカちゃんも見てみなよ」
イズナが手招きして風香を呼ぶ。
それは首の辺りに出来てる傷で、弱点なのかもしれない。
「……次にアイツが現れた時が最後だ。晴、お前の能力で怯ませて欲しい」
「それは……」
晴はチラリとイズナとネコネを見る。
「気にせず使いなよ。連発は出来ないだろーし、やるって分かってるなら耳を塞ぐから」
イズナとネコネは頷いて了承した。
「あの、ヨウちゃんを避難させたいんですけど…安全地帯があるんですよね」
吹雪が挙手をしてネコネに聞く。するとネコネは地下にある場所を説明した。
「なるほど、だったら戦闘に参加しない人はそこに避難した方がいいね」
響がそう言うと莉衣奈たちは頷く。
「今回必要なのは、風香とサポートのリア、後は空中戦が可能な人。それと、晴だな。地上に落とせれば一斉攻撃も考えるが……」
真希が周りを見回しながら説明していく。
「ケモ耳組は地下に避難するとか」
その後も話し合いは続き。
「それじゃ、気合い入れて行くよ! 行くぞー!」
「「「おー!!!」」」
うさぎ以外の全員が手のひらを下にして前に出し、掛け声と共に上に上げた。




