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陽子を咥えた巨大鳥を追って行く莉衣奈たちが見たのは、巨大鳥のヒナと既に飛び回っている無数の子どもたち。
そのまま山を登るのは危険だと判断して洞窟内に入って行く。
軽傷で済んだ風香ら6人で洞窟内を駆け上がって行き、段々と暑くなって行くのを我慢しながら進むと。
風香が居ない事に気が付いた。
それでも陽子の救出を優先して先へ先へ、およそ普段体験してこなかった程の熱気で足取りが重くなる。
洞窟内のこのエリアに魔物は居ない。
普通の生き物、魔物と言えどこの暑い場所に生息しているのは少ないのだろう。
居るとしたら炎やマグマを苦にしないタイプの———
キィィイイイイィイイィイイイイィイイィイィイイィイィイイィイ
「ぅっ……」
先程よりも大きく頭に響いて来るのは、あの男が伝説と言っていた鳥の鳴き声。
両耳を抑えながら一歩一歩進む。
風香はただ莉衣奈の後ろを走っていた。
それなのに気がつくと1人になっていた。
先程まで赤かった洞窟の内部が、今では青く綺麗な水晶が壁から生えている。
そのまま進んで行くと道が細くなって来て奥も暗くて見えないので引き返す。ただいくら走っても景色は変わる事なく途方もなく感じて来た。
「はぁっ……はぁっ……」
だんだん息が上がってくる。
この疲労感は久々だ。
この世界に来て初めてかもしれない。
壁に手をついて寄り掛かると頭上から黒い何かが複数群がって来た。
「わあっ!?」
風香はすぐに刀を抜いて対抗しようとするが、折れている事に気が付いて、鞘を振り回して逃げる事を選択した。
右も左も、方向感覚が無くなって来た頃…どこかからか声が聞こえてくる。
———こちらです、適正のある者よ。
「! ……どちら様ですか…?」
道幅は広くなく、天井も高くない。
しかし至近距離で聞こえて来る。
———わたしはかつて、勇者に仕えていたモノ
「勇者! もしかして、私に勇者の適正が」
———それは違います
「あ、そですか」
———適正があるのは、光のモノ。闇を祓う力そのものです。
「闇を祓う、光……?」
———そうです。ここは適正のあるモノしか来る事が出来ない空間。
「はぁ……それで、どうしろと?」
———この先にある木箱に刀があります。それはかつて勇者として世界を旅した侍が愛用していた一振り。それにわたしが力を加えた光の刀。
「刀……それを私に……いいんですか?」
———ここに来れる者はごく少数。それに貴女は数百年ぶりに訪れた適正者。選ばれしもの。
「……木箱、これですね。刀に詳しくはないんですけど、光の刀はどうやって…?」
———適正があるだけで、必ずしも使える訳ではありません。与えられて使える物ではなく、自力で使えるようになる事です。
「ふっ———能力が発動、しない」
———最後に一つだけ、光を使えないとここから出る事はできません。
「え゛」
———いやぁこれで解放されます。来てくれてありがとう!
「え、ちょ、ちょっとぉ!? 何かキャラ違ってません!?」
———その刀の能力を使えないと帰れないのはホント。出なきゃわたしみたいに数百年もここに閉じ込められるからねー。一生出られなくて魂が刀に宿る程度には苦労したよーうんうん。
「私この刀要らないんで、帰してもらえないでしょうか!?」
———ごめんねー! 来た時点で、だし。その刀を握ったら後戻り出来ないんだよね。
「は、はめましたね!?」
———大丈夫! 自分の力として使えるようになれば出られるから! 適正があるんだし頑張ればイケるイケる!
「そんなぁ……光の力を加えた本人が使えなかったんですよね?!」
———そーなんだよねー……役目を終えた刀を封印しようとしたら閉じ込められて、自分で設定した条件もクリアできず、だったよ。わたしに適正はあっても駄目だったわぁ。
「お、恐ろし過ぎる……なんて悲しい……」
———もう時間だから、バイバイ! 異世界の侍さん。
その後、声は聞こえなくなり風香は1人取り残された。
「………早く出ないとっ」
風香の試練は突然始まるのだった。




