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4—16 チームBその8


「……違う、ここも、ここも……」


 何百もの妖精を街に放って探しているのに、一向に町長どころか自分の偽物も見つからない。


 ビル入口付近は住民が押し寄せ騒がしいのだが、住宅区は静かなもので、出歩いているのがメンバーだけ……いや、風香(ふうか)たちが接触しているか。


 うさぎへの悪評は広まり、抗議の声が鳴り止まない。まあ、50階に居る以上直接の声は届かないのでそこでの妖精モニターを止めればいいだけ。


 批判なんかどうでもいい。



「そういや、エレベーター壊れてんだっけカ」


 これではどの道外には出られない。


 そう言えば、玄関ロビーで落とされたと言っていたな。


 下に空洞でもあったのだろうか。


 地下は作った覚えはないが、もしかしたら妖精が作った可能性もある。


 うさぎは妖精を何体か呼び戻し、下に行くことにした。


 エレベーターのかごが無くなった空間を一直線に、妖精の力で軽く宙に浮きゆっくりと下降して行く。


「うわぁ……」


 船一隻が通るスペースを確保する為にかなりの広さの空間を見て思わず絶句する。


 暗闇でも妖精が光るので、十分な明かりが確保出来ている。それでも底の暗闇はずっと続いていて、呑み込まれそうな気分になった。


 降りる速さはゆっくりだから、気が遠くなる程の時間に感じながら、ついに目的の地下に到着した。



 3体程の妖精の光りでも完全には照らせないほどの広さと暗闇。


 床、というよりは地面で小石も転がっている。


 とりあえず適当な方向に歩き出してみる。


 やはりこちらも暗闇に向かっているという点で闇に呑まれそうだ。


 しん、と静まり返った空間を自分の足音だけを響かせながら歩く。


「誰」


 すると進行方向から自分以外の足音が聴こえうさぎは立ち止まる。


 相手は眩しさに顔を(しか)めながら手で目線を隠した。


「……リア先輩…?」


「! うさぎちゃんかぁ眩しくてわかんなかったよ」


「別に懐中電灯を当てたわけではないじゃないですカ」


「こっちに誰か来なかった…?」


「いや誰も」


「そっかぁ……勘が外れたな」


 リアは怪しい人物、偽物だと思ったヤツを追って来たがこの暗闇で見失ったらしい。


「そういう時は、妖精で通信してと説明したよネ?」


「あはは、小さくて景色に同化してるのをどう見つけろってのよ」


「こうやって、ですヨ」


「! これは、どういうこと?」


 2体の妖精がリアの頭上に移動して2本の光のロープで拘束した。


「このうさぎを悪者にした理由と目的、説明してもらおうか偽物さん…?」


「……何のこと? 偽物は私が追ってきたんだよ」


「惚けるな、リア先輩はうさぎの事うさぎちゃん何て呼ばないし、妖精の事なんて説明してないんだよ。まして同化してるなんてネ」


「へぇ……もともと悪人みたいな事してたクセに……住人達があっさり信じる程度には」


「黙れ」


「ぐっ……このロープ、ちょっとピリピリするね」


「さっさと質問に答えて」


「はいはい、資金調達と憎悪の回収…かな」


「憎悪…?」


「これ以上は教えませ〜ん!」


 リアの偽物は光りのロープを引きちぎると煙幕を使って逃げ出した。


「バカめ! 妖精の目からは逃げられないんだヨ!」


「これならどーかなっ!」


 するとリアの偽物はニヤリと笑い、2人、3人と分裂して行き四方八方に走って行く。遂には数えるのが面倒な程に。


「他人に興味ない君には見分けなんか付くわけないもんね!」


「ちっ——だったらなんだ! 全員倒せばいいんだろ!!」





 所変わって柑奈(かんな)の居る暗闇ではお爺さんの会話が続いていた。


「——この街は、大きくなり過ぎた……いや、なったように見えているだけなんじゃ」


 お爺さんの声しか聞こえてこない分、話が聞きやすかった。


 普段、長話では途中で眠気に襲われてしまう柑奈だが、今回は目が冴えている。


「この1年で移住者が当時の3倍も増えたのだ……嬉しい反面不安もあった……そして、その嫌な予感は当たった」


 うさぎとセミノが魔物に襲われたこの街を救ったその日、町長は目撃してしまった。


「逃げて行く魔物が、住人の姿になったのを……」


 つまり、ヒトの姿をした魔物たちが移住者を装い街に居を構えた。


 住む家を建てる度に街は広くなっていく。


 だが魔物たちは基本的に街の外で生活をしているため、日中に自宅を訪ねても誰もいない。


 買い物客として、商店街やお店を出歩いているわけでも無い。


 移住民たちの正体を知ってしまった町長は、うさぎに相談してみようと出掛けた。


 その直後に何者かに魔法のような、呪いのようなモノをかけられ、誰からも存在を認知してもらえなくなった。


「とりあえずさ、ここから出ようよお爺さん! 私にも見えたんだから、そんな呪い? もう解けてるって」



「———なんだ、こんな所に居たんだ町長」



 柑奈がビクッと反応して振り返るが、暗闇では何も見えない……いや、段々と見えてきた。


「リアち———いや違う、誰、偽物!?」


「さすがだね、あっさり見破るなんて……じゃあ、本物と偽物の区別もつかない間抜けちゃんと戦って逃げる時間を稼いでもらうよ!」


「逃すかあー!!」


 走って行く偽物を追いかけようとして、急に明るくなったのに気がついた。


「そこか偽物!!」


 妖精が柑奈を拘束する。


「何すんだうさぎぃ!! 偽物に逃げられるでしょー!?」


「柑奈先輩がこんなとこに居る訳がない! だからお前は偽物だ!」


「はぁ!?」


 うさぎは容赦なく柑奈に攻撃を仕掛けて来た。



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