4—12 チームBその4
無事に外壁を越え、人気の少ない公園広場に降り立った莉衣奈たちは、その違和感に気がついた。
人っこひとり公園で遊ぶ子供たちが居ないのだ。
そもそも、これまで立ち寄った街に果たして公園があったかどうかは記憶にないので、この世界の子供の遊び場として公園が使われているかどうかもわからない。
ただ、そこはこの街に住んでいる人間であるセミノは断言する。誰もいないのはおかしい、と。
「リーダーたちと合流前にも、あーしはここで子供たちと遊んでたんです。毎日誰かしらは遊んでて……」
「時間帯の問題じゃなくて…?」
「早朝はランニングと散歩。朝ごはんの後は大体この辺に遊びに来る子供は多いです、特に学校に行く前の年齢の子たちは」
莉衣奈の疑問に答えるセミノ。
学校があるのかと、この世界で初めて聞く単語に驚きつつも、話を遮りはしなかった。
「遊ぶにしても、遊具がイッコも無いんじゃない? ブランコとか」
「この街の子は走り回るのと戦いごっこが好きですからねー……それに、遊具は危険だからダメだそうです」
「周りに柵があっても近付いて来ちゃうのかぁ」
「あーいえ、武器にしちゃうからだそうです」
柑奈は盛大にずっこける。
「遊び場だと言っても、この広場の周りは整備されてないみたいだねぇ」
羽海が周辺を歩きながら雑木林の方を見る。
「そこは虫くんたちの住処ですよ! 挨拶します?」
「普通サイズのカブトムシとか居るんですか?」
セミノと風香は少しの間、虫の話で盛り上がった。
虫全般が苦手ではなくて、カブトムシや蝶々くらいなら平気らしい。
それから8人は街の中央に建っている、ここからでも見えるそのビルへと向かい始め、途中でセミノが寄り道したいと言い出した。
「こっちに行くと町長さんの家があるんです。この状況について話を聞いて来ます」
莉衣奈たちは、適当に触れる場所を探して待つ事にし、暇つぶしにと柑奈と響、羽海は散歩しに行くのだった。
町長の家に着いたセミノは呼び鈴を鳴らすと、数秒でお手伝いさんが出て来た。
「おやセミノ様、何日振りでしょう。旦那様に御用ですかな」
歳は50代の女性で家事全般を担当している。
「チエさんこんにちは、町長さんいらっしゃいますか?」
「いえそれが……数日前から帰られておりません」
「え」
3日ほど前にビルへと向かったっきり帰宅していなく、周辺の聞き込みでも誰も見ていないのだとか。
「じゃあ、今の街の状況とかもわからないか……」
そもそも向かった先は、あのビルを建てた先輩の所なら直接行くしかない。
街の出入りだけではなく、お店の商品の金額まで上げられて困り果てているのだとチエさんは言う。
当然と言えば当然だが、あの先輩への不満もあるけど…どこで監視の妖精が聴いているかわからないので、悪口とかは控えるように伝えた。
「見て見てひびきちゃん! このりんごみたいなの金額、1個千もするよ」
「お店の前でそんな事言わないの! すみません」
柑奈の発言を注意すると、店員さんも困ったように「そうですよねぇ」と呟いた。
「そこの可愛いお嬢さん、アタシとお茶でもどうかな?」
「あのドリンク買ってくれるなら良いですよ」
「よろこんで! ———たっか」
屋台で販売していた値段を見た羽海は思わず口に出た。通常、他の街で見た金額と比べると4倍以上の値段が付けられていた。
ナンパしたお嬢さんは、「無理に買わなくて良いですよ」と言い去って行くのだった。
そして柑奈たちは莉衣奈たちの元へと戻ると、セミノが既に帰って来ており、そのままビルへと歩き出す。
目に見えていても距離はあり、30分くらい歩くとビル入口に到着。
「セキュリティの顔認証があるんで、少々お待ちを」
スタスタとセミノは入口横の機械に向かい顔を近付ける。
電子音が聴こえるとドアは左右に開いた。
ロビーの先に見えるエレベーターの前まで行くと、その階数の多さに驚く。
「一番上の50階、そこに居ます」
莉衣奈は呼び出しボタンを押すと、その50階から降りて来るのを待つ事に。
そして———
「……それじゃあ先輩たち」
莉衣奈たちの足場が消えた。
「行ってらっしゃい」
「なっ!?」
少し距離を置いていたセミノ以外の7人は、暗闇の底へと落ちて行くのだった。
「ちょっとおおおおおおおおぉおおぉおおおおおおおぉおおおおおぉぉぉぉ」
声はやがて、聴こえなくなった。




