4—6 チームAその5
直接攻撃は防げる。
しかしミカの攻撃が防げない。
「貫通なんてズルい……ですっ」
吹雪が鼻を抑えながら立ち上がる。
ネコネ、イズナ、陽子からの攻撃を何とか凌いでいるが、ミカの攻撃はノーガードで殴られる。
いくら頑丈な身体になっているとはいえ、限度がある。
「こうなりゃ、アレやるしかない! 2人とも耳塞いでて」
晴は大きく息を吸い込み
「わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁああぁああぁぁああああ!!!!」
拡声器顔負けの大声が闘技場内、いや闘技場の外まで響渡る。
間近で聴こうものなら鼓膜がイカレるだろう。
その結果、ミカ以外の3人はケモ耳を抑えながら悲鳴を上げて倒れた。
「はぁっ……はぁっ……よっし」
「……こ、こんなのがあるのなら、早く使ってくださいよ」
吹雪が両耳を抑えながら晴の側までやって来る。
荒い呼吸を整えながら晴は首を横に張った。
「これ自分にもダメージ入るから。うるさくて」
「普段の声も耳痛めますもんね」
「どういう意味かな? 吹雪」
「叫び声ですよ叫び声! ホラー系とかっ」
「声がデケェとはよく言われるけぼッ」
晴は横から殴られたように吹っ飛び顔面を手で覆った。
「2人とも! まだ終わってないんだから集中してくださいよ!」
「「すみません」」
時間が経てば経つほど、イズナたちが目を覚ましてしまう。
晴と吹雪はまもりの側まで移動し、戦闘体制に入る。
「殴るモーションに入ったら、直線から外れてください! 恐らく衝撃波のようなモノが来てます」
まもりは、これまで観察した事で仮説を立てた。
「……ひとつ、試したい事があるんです」
吹雪は簡単に説明する。
氷の壁の二重張り。
ミカは動き自体は速くない。
飛び道具を連発している感じだ。
「———いきます!」
結果、1枚目は無傷で2枚目の氷にヒビが入った。
「ミカ先輩の攻撃は、ワープしてきています」
「ワープ…?」
晴は首を傾げると吹雪は説明を続けた。
「つまり、ターゲットが晴先輩だとします。攻撃のタイミングで私が間に入ったとしても、攻撃は晴先輩の前にワープして先輩だけが当たるという事です」
「つまり?」
「誰かが囮になって他の2人で攻撃を仕掛けるって事です」
吹雪とまもりは一斉に晴を見る。
「それってつまり、晴に囮になれってコトかな?」
「ターゲットを途中で変更する事もあるでしょうから、そこは臨機応変に」
3人は一斉にミカの方に駆け出す。すぐさま攻撃モーションに入った段階で横っ飛びで回避する。
吹雪は右手に氷の槍を作り繰り出すも粉砕されるが、ミカの周囲を氷の壁で囲う事に成功した。
が———
「氷に穴が空いたんですけど!?」
壁が壊れるのではなく、穴が空いた。
更にそこからミカは正拳突きを繰り返し、その度に穴が空き視界が良くなった所で晴を狙い撃ちし始めた。
「ちょちょちょちょっっ何で何で!?」
段々と攻撃が激しくなり、避けられなくなっていく。
その隙を狙ってまもりは剣で斬りかかり、反対側から吹雪も氷の槍で攻撃を仕掛けた。
ミカはそれを屈んで躱すと、吹雪の腕を掴み引き寄せ頭突きを喰らわした後まもりの方へとぶん投げた。
まもりは咄嗟に剣を引いて吹雪を斬らないようにしたが、飛んで来た吹雪の身体を受け止められず一緒に後方に吹っ飛んだ。
重なるように倒れた2人に対し、ミカはその場で右足を大きく上げてダンッと地面を踏みつけた。
その結果、2人の上空から地面を抉る威力の重力が降って来て押し潰される。
「———やっばッ」
その光景を目の当たりにした晴は、2人の元へ駆け寄ろうとして———
「グオオオオオオオオオオオオオォオオオオオオオォオオオオオオオォオオオオオオオォオオオオオオオォオオオオオオオォォォォンンンンンンンッッッッ!!!!」
背後から獣の咆哮が聴こえた晴は恐る恐る振り返ると、陽子が立ち上がっており、その横で潤葉がイズナに何かを食べさせていた。
「———何をして…何をしてんだ潤葉ッッ!!」
「……え…? 何って、仲間を回復させるのは当たり前では?」
「ちがっ……仲間だけど、今は敵っていうか……っ!! 陽子の様子を見て変だと思わねーのか?!」
「トラ、ですよね…? 戦闘スタイルは知りませんけど、理性を失わせて闘うんですね」
今までどこに居たのか、いつ来たのかわからないが……潤葉に状況を説明している暇は無い。
「とにかく! 回復させるなら吹雪たちからにしてっ……ていうか、そこ危ないから離れてっ」
「………はい、今そちらに」
「騙されないで!!!!!」
「———え…?」
潤葉の後ろにある入口から、潤葉が現れた。
「う、潤葉が……ふたりっ!?」




