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3—9


———時は遡り、まもりが買い出しに宿を出た頃。


「カードは便利だけど、お店じゃないと使えないんだよね」


 屋台を見て回っても使えるとこと使えないとこがある。


 料理をする訳ではないので、食材を買ったところで…か。まもりは賞味期限が長持ちするモノを探す。




 ———今すぐ森へ向かって



「………え?」


 ———エルを助けて


「だ、誰!? エルって……」


 魚、肉、野菜、様々な食材が売られているエリアを人混みを掻き分けながら進む。


 他の通行人は気にした様子もなく、自分にしか聴こえていないのか、とにかくまもりは周囲を見渡す。


 すると薄暗い路地裏に人影が見えて、声の人物だと思ったまもりは追いかけた。


「待って!」


 叫び声も虚しく角を曲がった所で完全に見失った。しかし側の木箱の上に紙が置かれており、手に取ると地図が描かれていた。メッセージ付きで


「………この先真っ直ぐに進んで街の外にある森の中、そこを抜けた先にある渓谷?」


 後は読みながら進む。


 とある洞窟の中にエルの心が封印された玉があり、それを本人の所まで持っていけ……


「ふむ、わからん。エルって、同期のエルの事…?」


 可能性はある。他に考え付かない。


 街を出て森に入った所で複数の男がガサガサと草を掻き分けながら歩いていた。


「サバゲーか何かかな」


 やった事はないけど、見た事はある。それっぽい見た目してるし。


「邪魔しないように進むか」


 方向転換して更に進むと見知った背中を発見。身を隠す様に息を潜めて、周囲をうかがっている。


 ザッ


「!?」


 (ひびき)が驚いたように勢いよく振り返ってきた。


「あ、やっぱ響先輩だ。驚かせるつもりは無かったんですけど」


 響はまもりの顔を見ると、少しホッとしたように息を吐く。


「———ひとり?」


「え? はい」


「これ(ほど)いてくれない」


 響は後ろ手に縛られている縄を強調するように指を動かした。


 まもりは何とか解こうと奮闘するが、結び目が硬くて全く解けない。


 仕方なく剣を取り出そうとした所で、響がストップを掛けた。


「私のスカート捲って右太ももら辺にナイフがあるから」


「え、いいんですか!?」


「………スパッツ履いてるからね?」


「あ、すいません、失礼します」


 まもりは慌ててナイフを取ろうと手を伸ばす。妙な緊張感があった。


 白くてキレイな足。でも今は擦り傷がある。


 慎重に縄を切り、手が自由になった響は軽く手を動かしたり伸ばしたりする。


「ありがと、助かった」


「……何があったか、聞いてもいいですか?」




 響はこれまでの経緯を簡単に説明した。


 路上ライブのこと、柑奈(かんな)のこと、その辺を彷徨いている男たちのこと。


 そして、エルのこと。


「やっぱり、エルの事だったんですね。このメモの内容」


「メモ?」


 響はまもりの手にある紙を覗き込む。


「心が封印、ね……確かに感情があるようには見えなかったしな」


「この先の渓谷に行くとこだったんですよ」


「正直、柑奈と合流したいんだけど…会ってない、よね」


「はい……あ、路上ライブをしてる″歌姫″って、響先輩の事ですよね、リーダーたちが探してるんですよ」


「莉衣奈も来てるのか……街に戻れば居るんだろうけど、エルの方が優先だよね。その辺りの事聞かせてくれる?」



 周囲を警戒しながら2人は進む。


 道中、まもりが変な声が聴こえた事を聞いた響は


「……よくそれで行く気になったね。知ってる声だったの?」


「ちょっと声色を変えた感じだったので、何とも……」


「考えるより行動、まもりらしいよ」



 パァンッッ


「ッッ!?」


 突然、銃声のような音が聴こえたかと思ったら、響が左腕を抑えてしゃがみ込んだ。


 左腕から血が流れて、撃たれたのだと気付いた。


「見つけたぞッッ」


 男たちがゾロゾロと駆けてくるのが分かり、響は苦悶の表情で立ち上がり走り出す。まもりも盾でガードしながら後を追う。


 距離があった分、すぐに追い付かれずに済み、隠れながら着実に進んだ。


 響は髪を解いてリボンをまもりに渡し、それで左腕をキツく結んでもらうのだった。


「………大丈夫、かすり傷みたいなもんだからっ」


「汗、凄いですよ」



 森を抜けて辿り着いたのは渓谷、下の方に川が見える。


 まずは目の前の吊り橋を渡らないと。


「———待っていたよ」


「!?」


 金ピカのスーツを着たオッサン、その周りに何人かの男、森側にも。


「抵抗しなければ、大人しく石化で済ませてやったというのに……ザンネンだ。ヤれ」


 ひとつの方向からの狙撃は盾で防げる、左右からの同時は不可能に近い———ッッ


 狙いは響だが、一緒に居るまもりも対象であるかのように、容赦なく撃ってくる。


 顔や頭だけはと守っているが、他の露出した部分は弾丸が(かす)めたりして痛い。


 やがて吊り橋の方へと追い詰められ


「くっ———」


 弾丸が吊り橋のロープに命中し、響とまもりは吊り橋ごと落下した。


 高さ何十メートルだろうか、落下先は川というより石とか岩とかの方だろう。


「どうします?」


「……ふん、ここから落ちて無事では済まないだろう、それに何発かぶち込んだんだろ、時期くたばる」


 金ピカスーツのオッサンは、吊り橋があった付近に落ちている血まみれのリボンを拾ってズボンに突っ込んだ。




 その後、一命を取り留めた2人は、何故助かったのかは分からなかったが


 激痛を我慢しながら何とか歩き出し、メモに描かれた地図の目印らしき洞窟を発見するのだった。


 奥へと進み、祀られているような場所で小箱を開けて中にある玉を取り出した。


 道中、魔物とかに出くわさなかったのは救いである。


 ここからエルの場所へと目指すのは、厳しいと思ったが、不思議と痛いという感覚が麻痺したのか平気になった。





 ———そして今


「こんなボロボロになっても何とかなるもんだね」


「全然大丈夫じゃないよ!?」


 かっこよく駆け付けた響とまもりは、全身血まみれのボロボロで。しかも平気そうに笑ってる。


 柑奈は驚愕するしかなかった。



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