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とある街でアイドル2人による路上ライブが行われている。
道行く人々は足を止めそれに聴き惚れ、曲が終わると歓声が鳴り響いた。
「ありがとうございましたー!!」
拍手が巻き起こる中、投げ銭を集める女の子。
「どーもどーもありがとございまーす!」
社柑奈はぺこぺこしながら袋に入れてもらっている。
歌い終わった歌乃響は笑顔で来てくれたヒト達に手を振って応える。
投げ銭が終わるとお辞儀をしてから2人はスーッと立ち去って行った。
「もー、私にばっか歌わせないで自分も歌いなさいよーアイドルでしょー」
「だって、ひびきちゃんが歌った方が集まるんだもん! 何倍の差があると思ってんの!」
「それは柑奈が歌詞飛ばすからでしょーが」
「だってさだってさぁ! 音が無かったんだもん! アカペラで歌えないよ!!」
「選曲の問題でしょーよ」
「それにアレに関しては、ひびきちゃんが歌わないと意味ないし……」
「それの後の話よ、これ」
帰路に着いた2人は言い争いながら街外れまで行き、山道を進んで行く。
ヒトが踏み入れないような場所を歩いて行くと、小屋があり、その中へと入った。
「今日の稼ぎはココにしまって……そろそろ食材買って来ないとなー……先日の分のお金がココに……ん? 柑奈、ココにあったお金どーした?」
「え? ………そ、そっちの床下、とか?」
視線を泳がせながら答える柑奈を見て、響は詰め寄る。
「嘘ついても直ぐ分かるんだからね? ギャンブルか? またギャンブルなんでしょ!?」
「ご、ごご、ごめんなさい! 最初は増えてったのに気付いたら減っちゃっててーっっ!!」
「それはもう、カモにされてるんだよもー」
からん
「!?」
「でも「しっ———」
柑奈の口を塞ぎ、響は外の音に意識を集中させる。
事前に仕掛けていたトラップに引っ掛かった音。
それは何者かが近くに来た事を知らせるモノ。
魔物の可能性もあるが、それなら複数回音が鳴るはず。
それが一回という事は………
「柑奈、そこの床下にある穴から脱出して」
「———え?」
「前に説明したよね。いざという時に使う穴」
ドンドン
小屋のドアが叩かれる音に柑奈はビクッと反応する。
普段ココには誰も来ない。
来るとしたら———
「私が時間を稼ぐから、早く脱出して、ね?」
響はなるべく小声で言うとドアの方へと近付く。結構な数が居そうだ。
幸いあの脱出口は小屋の窓からは死角。
柑奈はお金の入った袋を持てるだけ持って、ようやく穴に入る。
響を見て手招きする。
いいから早く行け
ジェスチャーで伝えたその時
「中に居ることはわかっているのだ。早く開けたまえ。小屋を壊されたくなかったらな」
「……………」
柑奈の姿が完全に見えなくなり、ホッとしたのも束の間。
バァン!!!
木製のドアが蹴破られた。
「早く開けないからこうなる。私は気が短いのだよ」
「………ずいぶん乱暴ですこと。何の用なんです?」
「説明せんでも分かるだろ? 歌姫」
いかにも小悪党のような人相が汚くニヤァと歪む。タバコなのか葉巻なのか知らないが、でっかいのを咥えて、そこから出る煙が響は心底嫌いだ。
小柄で太ったオッサンで、金ピカのスーツに身を包んでいるこの男は何かと難癖を付けてくる。どこかの施設に出入りしている偉そうな人物。
後ろに居るのは軍服ようなモノを来た集団で、ニヤニヤといつでも撃つぞと言わんばかりにライフルを構えているモノも居た。
「わからないから聞いてるんですけどね」
「散々計画を邪魔をしておきながら白々しい……ここで始末しちまいたい所だが、我々と一緒に来てもらおう。博士がお呼びだ」
「………はかせ?」
「ボス、もう一人が見当たりませんが」
「どうでもいい。目当てはこの女だけだからな。邪魔して来るようならコロしてしまえ」
「———ッッ」
笑いながら物騒な会話をするコイツらを不快に思いながらも、響は大人しく従うしかなかった。




