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商業エリアの一角に、他とは比べ物にならないくらいの大きな建物があった。
「こちらになります」
クロさんに案内されるままに、厳重そうな両扉を開けて中に入り受付を済ませて順番を待つ。
静かで重苦しい場所は苦手だと、ネコネと羽海は外に残った。莉衣奈とイズナ、リア、風香はロビーのような場所にあるソファに腰掛けて待つ事数分。
呼ばれて案内されたのは個室。全員は入れないので莉衣奈とイズナ、クロさんが入室した。
係の人に説明を受け、簡単に言えば、お金を預けてカードを作り…以降支払いはカードで出来るようになるという自分たちの世界でもあるシステムである。
手続きが終わり外に出てから莉衣奈はクロさんにお礼を言い、それから質問をしてみる。
「お店で働く以外に、お金を稼ぐ方法ってありますか?」
「漁師とか騎士団に入るとか、用心棒なんかをする方も居ますね」
「ギルド的なモノとかってないんですかね!」
イズナが目を輝かせながら質問をする。
「冒険者の事ですか? 何年か前はあったそうですが、今は廃止されてますね」
「なんでー!!? ですかー」
「確か……突然現れた少年が有りえない程の戦闘力で周囲を圧倒。高額のクエストなんかも全部こなしてしまい、やる気を無くした冒険者が続出したとか」
「がーーーん」
イズナはわかりやすく肩を落とした。
「我々ダンチ家に支えている兵士の殆どが冒険者を辞めた方たちです」
あの沢山の兵士たちは、元冒険者だったのか。
冒険者という職業に多少の憧れがあっただけに、イズナも莉衣奈もショックではある。
結局、お金稼ぎはこれからも旅をする身としては必須ではあるものの、なるべく一箇所に留まらないで出来る仕事はないものだろうか。
結論は出なかった。
「ゲームみたいに魔物退治で稼げないものかねー」
「稀に落とす毛皮や骨なんかは売ったりできますよ」
「そんな事出来るんですかい!?」
イズナの目付きが変わり、クロさんに視線を向ける。
「ええ、しかし手当たり次第に倒してはいけません。場所によってはペットだったり保護してる団体もありますので」
その後も話を聞き、最後にお礼を言ってからクロさんと別れた。
ネコネと羽海と合流し、改めて今後の方針を話し合う。
「お金は手に入りましたけど、全員分の船のチケットを買うほどはありません。この大陸の北は山しかなく、人里も無いそうです。南に向かうのは来た道を戻る事になりますが……」
リアが現状の説明をし、他のメンバーは地図を眺める。
莉衣奈が口を開く。
「海を渡るか戻るかだね」
「行き先の問題もありますけどーまもりたちと合流しません?」
羽海の言葉に全員が「あ」という顔をするが、そもそも居場所がわからない事に気付いた。
———所変わって小屋の中。
「解毒は出来た、安心しろ」
「ありがとうございます」
「薬持って来たのはオメーさんだ、礼なんかいらん」
「いえ、それまでの間フブキちゃんに薬草作ってくれたんですよね」
まもりは、すり潰されている薬草を見る。
「ただの痛み止めだ、気休め程度のな」
先程までは痛みで苦しんでいたらしい吹雪の顔も、今は落ち着いて静かな寝息をたてている。
「どのくらい安静にしていれば、動けますかね……これから旅になるんですけど」
「解毒したとはいえ、足に銃弾を受けたんだ。すぐに歩けたりはしねーだろうよ」
「……そう、ですよね」
「だったらニトちゃんに治してもらえば?」
部屋の隅々まで観察してたマホが割って入ってくる。
「なんでぇ、魔法使いの知り合いでも居んのか」
「魔法使いならアタシのことよ!」
「医者じゃなくて、魔法使い?なんですか」
「短時間で治せるってんなら、魔法しかあるめーよ」
「アタシそんな魔法使えないなー」
「マホ先輩、リア先輩を連れて来て貰えませんか?」
「オッケー!」
そう言うと、マホは小屋を飛び出して行く。
そしてしばらくして、目を回してぐったりしたリアが小屋に入って来た。
「傷は治せても、酔いは……ぅぷ……無理ぃ」
「あ、あの! リア先輩、フブキちゃんを観てもらえませんか」
リアはフラフラした足取りで、吹雪の元へと歩いて行く。
足の傷に若干驚きながらも、ヒールを使った。
数分後、傷が塞がり元のキレイな足に戻りまもりは安堵する。
リアは力尽きたように吹雪の隣りに横になる。
そこへおじさんが、何かの液体を差し出す。
「酔い止めだ、少しは良くなるだろ」
「……あ、ありがとうございます」
外は夕方だ。
「今日はどうするか、向こうの先輩たちに相談しないと……」
「宿屋探すって言ってたよ、その話の時にマホ先輩に拐われたんだけど……」
「そんな人が気の悪い」
「いきなり上空から来て何も言わずに腕取られて、ここまで連れて来られれば誘拐ですよ」
その後も言い合いは続き、今夜はここに泊めてもらえる事に。
おじさんは用事があると言って小屋を出て行き、ご飯はそこにあるパンで何とかしろ、だそう。
お世話になりっぱなしで申し訳ないが、ご厚意に甘えて眠りにつくのだった。




