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2—11


 自分でもわからなかった。


 意識が無くなり、気が付いたらメンクイの背後に回っており、その彼は倒れた。


 何が起きたかは分からなくても、自分が何をしたかは理解した。


「ごめんなさい……」


 気を失っている相手に謝罪の言葉をかけてもとは思うけど。



「リアちゃん、今の見えた……?」


「黒いオーラに移動だけじゃなくて、一瞬で2回攻撃………これもスキルなんでしょうけど、人間業じゃないですね」



 その後メンクイはリアのヒールで回復し、目覚めたのは数分後だった。


「ごめんなさい」


「………いや負けたよ、最後の攻撃まったく反応できなかった」


「最後のは私というか、私じゃないというか………」


「? ……まあ、勝負は着いた……悲しいが、君たちを帰そう」


 その瞬間、兵士たちがざわついた。


 玄関の方向に視線が集まっており、メンクイもその方向を見て固まった。


「と………とととととととととと父さん!?」


 複数の完全装備の兵士に囲まれ、目つきの鋭いおじさんが微動だにせず、メンクイをまっすぐ見ていた。


「お、おかえり……なさい、その……これは……」


「これは何の騒ぎだ?」


 鋭い眼光で周囲を莉衣奈たちを見回す。


 怖そうな男性は仕事で何度かお会いした事があるので、特にビクついたりはしなかった。


「ワシが居ない間に何をしていたんだ? 答えろ」


「あ、あああの、あの、あのですね……ええい! ここに居るのはお嫁さん候補だ、です!」


 すると黒服を着た男性が現れ、おじさんに耳打ちをした。


「メンクイ、ワシの部屋に来なさい。そこのお嬢さんたちは、玄関横にある客室で少々お待ちを」



 兵士たちはそそくさと持ち場へと戻って行き、使用人たちも解散した。


 そして莉衣奈たち4人は言われた通り客室へと使用人の案内のもと、向かう事になった。


 部屋に入るとテーブル横にあるソファでくつろぐ2人の影が見えた。


「あ、リーダー方ご無事でしたか」


 すぐに風香が反応し駆け寄って来る。

 ネコネはソファで寝そべっていた。


「うん、羽海ちゃんも無事だよ。そっちも薬手に入ったの?」


「はい、今マホ先輩とまもり先輩が箒で吹雪先輩のとこへ向かってます」


 莉衣奈と風香は互いのこの部屋に来るまでの話をした。


 解毒薬を手に入れた風香たちは、本物の研究者に賊だと疑われ、兵士たちによる一斉攻撃がされそうになったその時。


 黒服の男が現れそれを阻止、1発の弾は発射されたが部屋の壁に命中した。


 その男の姿を見た研究者は、何かを言いたげだったが我慢して大人しく引き下がっていった。


 そして風香たちに視線を向けると、話があるからついて来いと客室に案内されたのだそう。


「ここのヒトたちって、話の通じる方たちですね。気になる女性を連れて来るのに乱暴だっただけで……」


「私たちにとって、そこが一番の問題なんだけどね……毒に誘拐」


 部屋の入口付近で立話をしている莉衣奈たちをよそに、他の面々は椅子やソファに腰掛けてくつろいでいた。


 いつもの事務所とかでの光景と同じで、ここにテレビとかパソコンがあれば完璧だっただろう。


 だがこの世界ではそういった電化製品を見ていない。冷蔵庫や電子レンジはあるそうだけど。


「ネコちゃん疲れたのかい?」


「あー………いえ……イズちゃん先輩は撃たれたりしなかった?」


「撃たれたのかい!?」


「あ、いや……どこも撃たれてない、です」


「なら良かったけど、何かあったん?」


「……大丈夫です、なんもないです」


「……?」


 ネコネはソファに突っ伏したまま何も喋らず、イズナもそれ以上聞かなかった。


 莉衣奈たちは部屋に用意された紅茶等を飲みながら待ち続け、体感で2時間は待っただろうか。


 ようやくメンクイとその父親が部屋に入ってきた。全員が姿勢を正す。


「大変申し訳ございませんでした」


 入って来ていきなりメンクイが頭を下げ謝罪する。


「事情はこの愚息から聞いた、ひとまずコレで勘弁して貰えないだろうか」


 脇に立っていた黒服の男がアタッシュケースを莉衣奈の前に置き、中身を開いて見せた。


「こ、これは」


「30万を用意した、どうか受け取っていただきたい」


「こんなに受け取れないですよ、それに持ち運びも大変で……」


「もしやカードを持っておられない? だったら街の金融機関へそのお金を持って行けば作れる。クロ、後で案内してやりなさい」


「わかりました」


 クロと呼ばれた黒服の男はアタッシュケースを閉じて鍵をかけると部屋の隅に戻る。


 莉衣奈はまだ頭を下げ続けているメンクイを見る。


「そろそろ頭を上げては……?」


「俺、まだあなたと結婚したいという気持ちは変わらない! フラれたのはわかっているのに」


「………」


 アイドルという立場ではあるが、それよりも生まれてこの方恋愛という物に興味もなく、経験した事がない莉衣奈にとって、この場合どうすれば良いのかわからない。


 自分を好きだと言うファンも沢山観てきたが、それは応援してくれる全員に対して感謝するし好きだとも思っている。だがそれは恋愛感情からくるものではない。


「私は今後も、アナタの気持ちに応えられないです。だから他に素敵な女性を見つけてください」


 メンクイは無言で頷いた。


「そろそろ上の階に行くぞ、まだ20人も居るんだからな」


 そう言うと2人は部屋を出て行き、残されたクロさんが「こちらへ」と案内を始めてくれる。


 来た時には通らなかった正門をくぐり、左右に立って居る門番の2人の頬にはつねられたアトが付いていた。


 申し訳ない気持ちいっぱいに莉衣奈たちはお辞儀をしてから屋敷を後にするのだった。



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