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2—10 チームBその3


 莉衣奈とメンクイの一騎打ち、決着は武器が弾き飛ばされるか折れた等、試合続行が不可能だと判断された時。もしくは、どちらかが負けを認めた時。


 基本は剣術だが、体術の使用も有り。


 イズナたちや兵士たちは一定の距離を取り周囲を円状に囲んで試合の空間を作った。


「それでは始めようか。このコインが床に落ちたら試合開始の合図だ」


 メンクイは右手でコイントスのように親指で上に弾いた。

 回転しながら落下するコインが床で跳ねた瞬間、莉衣奈は突進し距離を詰める。

 剣を上段から振り下ろし、メンクイはそれを剣で受け止めた。


「その剣、女性が扱うには少々大きいんじゃないか?」


 莉衣奈は後方に跳び、今度は突きを繰り出す。

 しかしそれは軽く受け流される。

 莉衣奈の大勢が少し崩れた所を今度はメンクイが剣を上から叩くが、莉衣奈はそれで叩き落とされはしなかった。



「………リーナちゃんはなんだってこんな勝負を受けたんだい……負けたら結婚って条件なんだよ……?」


「あの男のヒト、剣術を学んでるみたいな感じしますね」


 イズナのぼやきにリアが反応すると、すぐ後ろから羽海が答える。


「なんとか流ってのを語ってたからね……術で来られるとパワーとスピードだけのリーダーじゃ厳しいかもね」


「実際、私たちにはこの世界で使えるようになったスキルや身体能力の上昇がある分、道中の魔物相手には勝てます。それで変な自信がついたとかでは……無いと思いますがね」


 莉衣奈も、そしてリアたちでも誰も剣術を学んだ者は居ない。風香が剣道をやっているくらいだが、彼女の戦いを見ても真似できる訳でもなかった。


 あらゆる攻めを繰り出し続ける莉衣奈だが、その全てが受け止め、流されるを繰り返す。


 メンクイは莉衣奈の力を理解すると、そろそろ決める事を考え始めた。


「俺と結婚したら、剣術をしっかり教えてあげよう」


「!?」


 攻守が入れ替わり、メンクイの激しい攻撃が始まった。

 その全ての攻撃は莉衣奈の剣を弾き飛ばす為、身体への攻撃を行わない。それを分かってか必死に飛ばされないよう強く握る。そのせいで防戦一方になってしまっているのだ。


 上段、中段の攻撃だけだったメンクイはフェイントを入れ、下から上へ莉衣奈の剣を飛ばそうと斬りあげた。


 剣を離す事は無かったが、莉衣奈は後方に飛ばされ仰向けに倒れた。

 すぐに起き上がる莉衣奈だが、メンクイが切先を目の前に突き付ける。


「思ったよりパワーがあって驚いたが、これで決着———ッッ!!?」


 莉衣奈の足がメンクイの剣を蹴り上げた。

 思わず手を離しそうになるが持ち堪え、一度距離を置き体勢を整える事にした。

 ヒヤリとした心を落ち着かせようと深呼吸。その間に莉衣奈は立ち上がり剣を構える。こちらも軽く深呼吸をする。


「パワー、スピード、そして気迫と集中力。この試合の中だけでも、何度驚かせてくれるんだ……とっくに決着しててもおかしくないというに……」


「………」


 ライブ前の緊張感、新曲発表のわくわくとドキドキ感、不思議な感覚。

 莉衣奈は落ち着いていた。今までにないくらい。


 こんな気持ちは初めて。



 ドクン


「………あ、れ……?」


 視界がぐらついた。

 倒れまいと踏ん張る。


 立ちくらみ?

 違う。


「リーナ、ちゃん?」


「おい、大丈夫か」


 周りも異変に気付く。

 大丈夫と駆け寄って来ようとするイズナたちを制する。そして目の前の男も。


「……俺の目の錯覚か? 彼女から黒いオーラのようなモノが見える」


 この時のメンクイは、ふらついた莉衣奈の為に決着を急いだ。集中力を切らさず、目の前に居る莉衣奈の動きを見て。


「——————は、がッッ!!?」


 何が起きたのか分からなかった。

 目の前に居た莉衣奈が消えたのだ。

 次の瞬間には背中を剣で殴られていた。


 遠くの方に、メンクイの剣が転がって行くのが見えた。

 一撃目で剣を飛ばし、二撃目で背中を——

 それはほぼ同時だったのだろう。

 メンクイは薄れゆく意識の中、倒れた自分に呼びかける莉衣奈の姿を見た。


 彼の意識はそこで途絶えた。


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