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2—9 チームBその2


 皆野莉衣奈(みなのりいな)

 ルピナス1期生でグループのリーダー。

 本人の記憶の中でもそして小学生の頃からの幼馴染みであるイズナの記憶でも

 莉衣奈が怒った事は一度たりとも無い。


「いい加減にしてください」


「そんな睨まないでくれよ、後で二人で話し合おうではないか」


「アナタね——「はいはーい、ストップストップ!」」


 イズナが莉衣奈の正面に立った。

 すると、両手で莉衣奈の両頬を包んできて


「リーナちゃんにそんな表情は似合わない!」


「はにふんお」


 むにっと両頬を引っ張った。

 ブスッとした表情が戻りイズナは満足気に笑う。


「真面目に、笑ってるキミがみんな大好きなんだよ」


 早く吹雪の毒を治したいというのと、そもそも毒を撃ち込んだ事に対しても言いたいこともある。

 それに羽海を誘拐して結婚させるという事にも——


 莉衣奈の頭の中でぐるぐると思考が巡る。

 落ち着いて深呼吸を一度。


「勝手に家に入ってごめんなさい。仲間の毒を治療したいのと………仲間を、羽海ちゃんをかえしてください、お願いします」


 深々と頭を下げた。

 それを見たメンクイは、頭をかきながら


「訪問に関しては別に問題ないさ、勝手に住みつかれたら困るけど……毒って誰が受けたのだ?」


 莉衣奈は吹雪の事を説明した。

 まもりから話を聞いた範囲でしかわからないが。

 それは羽海が捕捉して説明した。


 するとメンクイは兵士を呼び出し話を聞き始める。

 羽海を連れて来る時に出動していた兵士たちを集め事情を聞いた。


「その毒を受けた少女を捜索したが見つからなかったと、そういう事か………どうりで上の階も騒がしい訳だ」


 メンクイは何かを納得したのか兵士に指示を出し、それを聞いた兵士たちは階段を上がっていった。


「さて、毒の件に関しては被害者本人が不在なのでこちらとしてはどうしようもないわけなのだが、解毒薬の提供くらいかな……結婚に関して俺は諦めるつもりはないよ」


 莉衣奈は小声でリアたちに話す


「この世界って、一夫多妻が普通なのかな?」


「それはわかりませんけど、これまで会ってきた御夫婦は二人でしたよ」


 リアも小首を傾げながら小声でかえす。

 他のふたり、イズナと羽海もなんともいえない微妙な表情だった。

 莉衣奈は思っていた疑問をメンクイにぶつけてみる。


「初対面の羽海のどこが好きなんですか」


「顔」


「はい?」


「ダントツで顔、それ以外はこれからだな。……キミは顔と声、それと自分に厳しく教育的なお母さんになりそう———」


 トクン


 メンクイが突然俯き胸を押さえる。

 どうしたのかと思い心配した莉衣奈は声をかけようとして


「なんだこの感情は……今までいろんな美女を見てきた……なぜだ、俺は今! 結婚生活を考えている!!」


 あまりの衝撃に莉衣奈は一歩引いた。

 メンクイは頭を掻きむしりながらフラフラぐるぐる、回り始めた。


「よし決めた! そこのハニーと上の階のレディ達は帰そう、そして黒髪の女! 俺と結婚しよう!!」


 その場に居る全員が、いや莉衣奈たちよりも兵士たちの方がかなりの衝撃を受けたようだった。

 急展開すぎて莉衣奈は目が点になっていた。


「だから何でそーなんねん!!!」


 イズナが莉衣奈を強く抱き寄せながら、メンクイに向かって睨み付ける。


「悪いな女、お前も帰って良いぞ……期待させてすまなかった、ハニーも許してほしい」


「………」


「良かったね羽海、帰れるって」


 リアが隣で無言になっている羽海に話しかける。すると羽海はぶつぶつと呟き出した。


「………は? フラれたんだが……いや結婚とか論外だった訳だけど、フッた事はあってもフラれたの初めてだわ……」


 学校で告白された事はあってもした事が無く、アイドルとして人気になってからは更に注目を浴びた。

 ある意味、初めての経験をメンクイに奪われたという気持ちに少々思考が停止してしまったのだったが、隣で呆れ顔になっているリアを見て正気に戻る。


 そんな事よりも、ふたりの前で繰り広げられている言い合いの方が問題ではある。


「結婚は先程お断りしたはずですが?」


「俺もこんな気持ちは初めてなんだ、一人の女性と結ばれたい、キミの子供と仲良く幸せな家庭を——」


「気持ち悪い事を言うんじゃないよーッッ!!」


 全く会話にはなっておらず、そもそもメンクイは人の話を聞かない。

 莉衣奈の言葉にもイズナのツッコミにも。

 周りの兵士たちも、ただただ見守る事しか出来なかった。


「これじゃ埒があかない………だったら勝負しません?」


 莉衣奈の言葉にメンクイはピクリと反応する。

 気持ち悪い眼差しで莉衣奈を見ると、剣に気がついた。


「勝負か……なら剣での試合にしようか、君と俺との一対一のね」


 メンクイが手を出すとひとりの兵士が自分のとは別の剣を差し出し、メンクイはそれを受け取った。


「他のものは手出し無用だ、それでいいね?」


「乗らなくていいよリーナちゃん……リーナちゃん?」


「わかりました」


 莉衣奈はイズナの横を抜け、剣を構える。


「楽しいひと時にしよう」


 メンクイはニコリと微笑んだ。


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