2—8 チームBその1
ルピナス4期生、船越羽海
人気投票でも常にトップの彼女は、人当たりがよく後輩の面倒見が良い。
女性ファンも多く、CM出演やドラマの主演も経験した事のある彼女は憧れの的である。
そんな彼女がアイドルを目指したきっかけは、ルピナスの音楽ライブを観てとある先輩に一目惚れしたからである。
カッコいい男性より可愛い女性が大好きな羽海は、同期や先輩に出会って大興奮だった。
「アタシはよく勘違いされるんだけれどもね、可愛いければ誰でも良いわけではないって事なんですよ……だからリアたん、この胸に飛び込んできて欲しい!!」
「お断りします」
屋敷の地下牢に辿り着いた莉衣奈、イズナ、リアは唯一使用中だったこの牢屋の前まで来た。
すると羽海が豪華な椅子に座りながら優雅に紅茶を飲んでいたのだ。
羽海は莉衣奈たちに気がつくと何かを語り出したのだった。
「まさかリーダーたちが来てくれるとは思ってませんでしたよ、まもりとふぶちゃんには会いました?」
「まもりちゃんは今ネコネちゃんたちと解毒薬探してる、吹雪ちゃんは会ってないけど。どこかの小屋で休ませてもらってるみたい」
「…………そうですか、ひとまず安心です」
「ここまで居眠りしてた看守しか居なかったけど、早く屋敷からでましょう……リーダー、鍵を」
莉衣奈たちがこっそり持って来た牢屋の鍵を取り出すと、羽海は牢屋の扉を普通に開けて来た。
驚き固まった3人をよそに、ご機嫌に言った。
「鍵は掛けないでとお願いしたらそのまんまにしてくれたんですよ。惚れた弱味ってやつですかね」
場所が牢の中ってだけで、やってる事はひとりお茶会である。
莉衣奈は羽海の使っていた牢の扉に鍵を引っ掛け、出口を目指すことにした。
自分たちが来た方向から複数の足音が聞こえ、反対側に進む事になった。
自分たちも走れば足音が響き、歩けば追い付かれるのは分かりきっているので、そのまま4人は走り続ける。
前方に見えてくるのは上り階段。
1階分上がった所で両開きの扉があり、そこを抜けると広い廊下に出た。
「どっか適当な部屋の窓から出よう」
イズナの意見に賛成し進み出した所で上から声が聞こえた。
「いったいどこに行くというんだい? ハニー」
吹き抜けになって上の階が見える場所で、2階から若い男がこちらを見下ろしていた。
「あー……アレが貴族の息子、メンクイってやつです」
小声で羽海が説明する。
男、メンクイは螺旋階段をゆったりと降りながら羽海の事から目を離さない。
さっさと離れようとしたが、すでに兵士が道を塞いでしまっていた。
「準備は整った、キミにピッタリなウェディングドレスを用意したんだ、さあ来てくれたまえ」
「先輩たちが迎えに来てくれたんで帰ります、ドレスは上の女性たちにあげてくださいな」
「もちろん彼女たちの分も用意してある! ハニーから順番に…………可愛いな、そこの黒髪の女! 俺と結婚しよう!」
「アンタ何いきなりリーダー口説いてんだ! 意味わかんねーぞ!!」
「嫁は何人居たって良い! さぁ返事を、レディ」
「お断りします消えてください」
「軽蔑するような眼差し、サイコーだ結婚しよう!」
「リーナちゃんに求婚とか何考えてんだオメーその喉元噛みちぎるぞこのヤロー!!」
両手を広げながら螺旋階段を降り切ったメンクイにイズナが指差しながら抗議する。
「なんだ嫉妬か? 好みではないが、お前も嫁にしてやろうか」
「ふざけんなぁ! お断りだこんにゃろー!!」
「どうせなら、そこのツインテールの女も嫁にしよう、これでどこにも行く必要なくなったねハニー!」
もはや滅茶苦茶である。
あの大量の婚約者たちも、こうやって集められたのだと羽海は理解した。
話の通じない男に対してどう対処するか頭を抱える羽海だったが、すぐ側で怒りのオーラのようなものが見えた気がして顔を上げると
「いい加減にしてください」
普段怒らない莉衣奈が静かに怒りの感情を出していた———




