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「いやーごめんごめん」
地面に激突したのにも関わらず、マホは笑いながら謝罪する。
一緒に落下したまもりはまだ地面に突っ伏しており、ネコネがヒールをかけていた。
全員が無事に外壁を超え、特に騒ぎになる事もなく敷地内に侵入できた。
「羽海ちゃんがどこに居るのかわからないけど……捕まってるなら牢屋とかになるのかな、それとも結婚相手だから豪華な部屋とかになるのかな………?」
「それは、羽海が大人しくしているかどうかですね……」
莉衣奈の疑問にリアが答えた。期生は違うがよく一緒に居るからこその心配でもある。
羽海は男性に恋愛感情を持つことはない。
アイドルとしてはいいとこなのだろうけど。
———ところ変わって、ある一室。
「これはどういうことだいハニー!!」
「ごちゃごちゃとうるさいね、アタシの他にも嫁候補はこんなに居たんじゃないか……何十人と結婚するつもりだったんだい?」
「うるさい! 何人と結婚しようが俺の勝手だろう! ハニーも黙って結婚すればいいんだっっ!!」
「………だ、そうだけど……君たちはアタシとコイツ、どっちと結婚したい?」
「「「ウミさまですううううううううううううううううう!!!!!!!!」」」
「な!?!?!?!?!?」
「あっはっはっはっは!! 残念だったねぇ……この娘たちはもうアンタと結婚する気ないってさ、元々アタシもないけどね」
「ぐぐぐぐぐぐぐうぅぅぅぅぅうううううううううううぅううぅぅ」
羽海が連れてこられた部屋には二十人を超える女性たち、大人の女性から中学生くらいの女の子までが集められていた。
ずいぶん大きな部屋だと羽海は思った。それとどの女の子も可愛い。
全員が貴族の息子との結婚が決まっており、乗り気な者も居れば嫌がる者も居た。
羽海と同じように無理やり連れてこられたのはどのくらいだろう。
ただ羽海はこの部屋に入ったとき思わず心の中で歓喜の声をあげていた。
可愛い女の子が大好きだからだ。
何度目かの結婚報告を報せる号外新聞の支持出しをし戻ってきた貴族の息子、メンクイは結婚相手たちの待つ部屋の扉を鼻歌交じりに開け放つと、目の前には羽海に抱きついたり膝の上に顔を埋めている者やら、部屋に居る全員が羽海を中心に集まっていた。
激怒したメンクイは羽海だけを地下牢に入れることを兵士たちに指示した。式までにそこで大人しくしてもらうために。
そして現在———
「自分が高いところが苦手って、今知りました……」
「あんな勢いで地面に落下は誰でも怖いよねぇー……他に痛い所はない?」
まもりは自分を抱きながらブルブルと震えている。その横でヒールを使っていたネコネは手を止めると、痛みが無いかを確認する。
まもりは肩を回しながらチェックして、問題が無いことを告げた。
現在の場所は屋敷の東側で、建物の窓が設置されている側だった。
門を越えた先は無人かと思うほど静かだったが、7人は身を隠せる場所へと移動した結果、ここに居る。
「羽海ちゃん救出チームは下の階から探すから、解毒薬チームは上の階からお願い出来るかな」
「分かりました、まずは階段を———」
「あの窓から入ればいーんじゃない?」
風香の言葉をマホが遮り、最上階の開いている窓、5階を指差す。
それを見た風香は口をポカーンとしたが、すぐに正気に戻り首を横に振る。
「流石に4人は厳しいと思いますよ? だから階段を……」
「ボクは猫になってそこのパイプを登って行くからさ、気にしなくていいよー」
「え゛」
「地面落下よりはマシかなー……ねぇフウカちゃん?」
「な、ななななななななんで乗り気なんですかまもり先輩!? あとネコネ先輩逃げないでくださいよ!!」
「じゅーりょーオーバーになっちゃうじゃん? だからボクはこれで行くんだー」
「さあ行こうぜ!! カギちゃん! イガちゃん!」
「まず私の話を聞いて———」
マホがまもりの左手を掴みまもりが風香の左手を掴んだ状態で5階を目指して飛んだ。
それはもうフラフラと、風香にとって救いだったのは勢いが無かった事——だったが、マホが全力を出したのか途中からスピードがアップして屋根より高く上がってしまう。
旋回しながら高度を下げ狙いを定めたマホは、開いている窓目掛けて突撃したのだった。
「カギちゃんって、だれ?」
それを見ていた莉衣奈は疑問を口にした。
その解答は同じく見上げていたリアがしてくれる。
「まもりの事ですよ、最初はキーちゃんでした……そこからカギになったみたいです」
「岸まもりの原型が無くなっているよねそれ」
「マホ先輩はあだ名を捻りすぎる事があるんです、しかもいきなり呼んでくるので……呼ばれた方は自分だと思わないっていうね……」
「そうなんだ……この旅が始まって、メンバーの知らない一面を知る事が出来て良かったなーと思うよ」
「基本皆さんリーダーの前ではふざけませんからね」
「お二人さんこっちもそろそろ出発しますよ、あっちの玄関とは反対側に庭と開いてるベランダがあったから、そこから入れそう」
周囲を探索していたイズナが戻って来て報告する。
屋敷の中は、本当にヒトが居るのかわからないくらい静かだと思ったが、上の方から悲鳴が聞こえたので、やっぱり誰かは居るんだなーと莉衣奈は思うのだった。




