Story 00「始まりとも云う双」
ジジッ……レコーダーヲ再生シマス…
◇◆◇◆◇
……世界の大きな分岐点から、
およそ2000年と少し頃だったか。
有識者の間ではそう見解がなされている。
──人類は大きな事件に見舞われた。
謎の力によりほぼ全ての技術が
その当時より1000年程度後退し、
あらゆる文化、経済、社会……
国際規模で情勢に打撃を与えた。
そして、世界中の有力者達が
知識、財力、持ちうる全てを投下し、
当時の数年先の技術レベルまで
到達することが出来たのは、
大事件から実に1000年の後であった。
一部の人々はこれを
【神の怒り】、【千の試練】と叫び、
遂にはこの一連の出来事は
世界単位で空白を生み出した、
【空白の千年】
と呼ばれるようになった。
そして、空白の千年の終わりと同時に
世界にある程度の共通言語が明確化され、
世界は少しずつの一体感を持つようになる。
……これがグローバルシフト、
現在のグローバル歴の始まりだ。
─そして今から始まるのは、
共存、自由、感情………
人々のドラマを描いた物語
まず最初は───
共存について、─語り直そう─か。
……ジジッ─
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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─理想と現実は、共存できないまま生涯を終える─
………時に問う。
──問1
青空を見上げて、何か分かった試しがあっただろうか。
世界はこんなにも広いのに、
「俺の居場所」なんて戯言には、誰も応えてくれない。
問2
前を向いて、報われた試しがあっただろうか。
直ぐに足元を救われて、立ち直れなくなる。
それなら、下を向いている方がよっぽど懸命だ。
─もう、惨めな思いはしたくない。
ただしそんな泣き言や願望よりも
人々に課される命題は、
この広げられた紙に書かれている。
「自分が何者に成りたいか」という問い。
………何者にも成らせようとしない社会が、
苦し紛れに打ち出す
さも選択を与えるかのような
「希望」
の2文字で人生の不条理さを常に
少年の心に叩きつける。
「はぁ…如何して高校2年から志望先を明確にしないといけないのやら…」
……教室の窓際、
スマホを触りながら文句を垂れている
少年、九椎 衣尾太は
鞄からココアシガレットの箱を取り出す。
いつもの通りであれば箱を取り出したその手には
直後に中身が1本取り出されているのだが……
その手には虚しくも菓子の擦り切れた残り滓が降り注ぐ。
(今日に限って切れてるし…)
◇◆◇◆◇
20分後
「あーっしたー」
…コンビニ店員の笑顔が痛い程に刺さる。
コンビニに行けば大概の菓子類は揃っている。
……はずだ。
「今日に限って売り切れ………
しかも家に財布置いてきてたからどっちにしろ……」
頭を抱え、少年は悩み、
そしてまたスマホを触る。
「今日もツキがない……
なんで…いや、新月は関係ないだろ……」
……彼はとことんツイていない。
幼くして両親が消え、
親戚もまともに頼ることができない。
傍から見れば─天涯孤独─という言葉が当てはまるだろうが、
正確に言うならばそれは違う。
──現在密かに話題に上がっている
正体不明のSNS 【ユアバディ】
登録したユーザーには個々に
個性豊かな【バディ】と言われる
AIアシスタントが付き、
人々の生活をより豊かにする…
はずだった。
サービス開始直前まで存在すら知られておらず、
直後から驚異的とも言える速度で登録者数を伸ばした
─それ─は
サービス開始から数週間経った今、
様々な噂がなされている。
ユアバディが関連しているのではないかとされる
事件、事故が連日で報道されるようになり、
利用者達のみならず、利用者以外まで
人々は不安を募らせている。
衣尾太もまた
ユアバディのユーザーではあるが、
登録をしてしばらく使っていない。
─つまり、彼には仮にも相棒
と呼べるものが残っているのだ。
ただし、どこまで行けど、彼にツキが回ることはない。
─そして今日。
世界が彼にとって、
人生で”最悪の”物語の始まりを通知する。
「……ユアバディの通知?フェス開催中…?」
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(See you next time to story 01……)
はい、どうも投稿主のりんりん8140です。
代表作更新できてないくせにマイペースにやってます()
リアルの方が地味に忙しかったりするのであんまり更新できてませんが、
少しずつ一部の読者様に応えていけるようにしたいなと思っています。
初めてりんりん8140の作品を読んだよ
という方は、
他の作品も読んでいただけると
どんな奴なのかっていうのがわかったりすると思うので、
お時間よろしければ読んでみてください。
ではでは。