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あなたと最初で最後の恋を  作者: 原案:武 頼庵(藤谷 K介)様 作者:本羽 香那
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成人の日


 年が明けて今日は成人の日。


 私の住む町では18歳の時ではなく、20歳の時に行われるので、本来なら私はまだ関係ない日である。

 しかし20歳を迎えることが出来ないと言われているため、振り袖を着て会場の前に来ていた。勿論中には入れないが、母が会場の前で写真を取りたいと看板がある前で写真を取る。本来なら友達と一緒に写真を取って、会場に入って祝うのだろうなと想像すると少し寂しく感じてしまう――折角鮮やかな赤に梅の刺繍が入った綺麗な振り袖を着ているのに勿体と。細くて青白い私とは正反対の明るい振り袖に押しつぶされそう。そんなことをひしひしと感じてしまった。


 和気あいあいとしている人達を見ながら、私は母と共にひっそりと会場前から去り、帰路についている途中、母が買い忘れた物があったからと少し外で待っておいてとスーパーの前に置いていかれた。本当なら猫背にでもなって楽な体勢を取りたいところだが、綺麗に着付けられた振り袖では体勢を崩すことも出来ない。


 現在成人式が行われている時間帯にスーパーの前で1人派手な振り袖を着ているため、横を通り過ぎる人達に毎回ジロッと見られているような気がして気分は良いものとは言えなかった。その苦痛から開放されたいと、早く母が帰って来ないかなと今か今かと待っていると、突然後ろから声を掛けられた。


「渚さん、こんにちは。振り袖を着ているのですね。とても綺麗です!!」

「康太さん……こんにちは」


 まさかここで彼に出逢うとは夢にも思わなかった。ありがとうとお礼も言えないまま、しっかりと振り袖のことにも触れられたことに対して動揺が走る。今日は休日であるため、今日が成人の日であることぐらいは流石に知っているだろう。20歳にもなっていないのにも関わらず、振り袖を着ていることに対して疑問に思うのではないかと不安に思ってしまう。


「渚、待たせてごめんね……って彼は何方?」


 こんなタイミングで母が帰って来るのはかなり不味い。母には付き合っている彼氏がいることは話していないため、どう切り抜けるか悩んでいると彼が母に早速挨拶をした。


「渚さんとお付き合いしている櫻井康太です。よろしくお願いします」

「ああ……貴方なのね。始めまして、渚の母です。いつも娘がお世話になっております」


 私が介入する間もなく、母も彼に挨拶をする。母は平然を装っているものの、内心驚いているのは見て取れた。彼は母の受け答えに何の疑問を持たずに、こちらこそと返しており、会釈をして失礼しますと言って立ち去った。 


 そのまま家路へとついたのだけど、母は無言のまま歩き、家に着いてようやく口を開いた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 中には入れないけれど、振り袖を来て成人式の会場の前で写真を撮って。主人公の切なさや複雑な気持ちを感じました。また、帰りに康太さんに会った時の不安と動揺も。心理描写がきめ細かいです。 お母…
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