はしゃいでいません!!
次にデートをしたのは2週間後。
今度は彼がエスコートしてくれる番だった。彼には何処にいくのか、何をするのかは全く言われていなかったため不安に思いながらも、密かにワクワクしていた。
今回は彼が15分前で、私が10分前に来たため、私の方が彼を少し待たせることになってしまった。彼と同じぐらいに来ようと思っていたのにと少し悲しくなってしまう。
「今日はスカートやワンピースではないのですね。このスタイルも素敵です。それに今日は少し歩こうと思うのでピッタリです」
いつもはワンピースの方が可愛く思ってくれるかなと思って彼の前では、いつもそのような服装をして毎回会うのだが、普段はこのような格好もしている。しかし、彼に素敵と言われて照れてしまい、今回は素直にありがとうとは言えなかった。
「では目的地に向かいましょうか」
彼に連れられて約30分。着いた場所は紅葉した樹木が多くある森林だった。そこには数十人が楽しそうに落ち葉や木の実を拾っている。また、右奥には小屋が立っており、そちらに向かっている人達は集めた落ち葉や木の実を持っていた。
「ここは自分達で集めたものをあそこの小屋で作品を作って楽しむところです。是非渚さんと思い出を形に残したいなと思って」
こんな場所があるとは知らなかったため、感嘆してしまう。ただ流行りの店を調べて連れて行った私と違って、しっかりと調べてくれていたのだと感心してした。それに何よりも思い出を形に残したいという言葉が嬉しく堪らなかった。
「素敵な場所に連れてきてくれてありがとうごさいます」
「いえ、自分が渚さんと来たかっただけですから。折角なので文化祭の時のように無邪気にやりましょうよ」
「別に無邪気にやっていません」
「あんなにはしゃいでおいて……ですか?」
「はしゃいでいません!!」
ちょっとにやけながら私に言ってくる。子供の様な無邪気な意地悪。
ただあれは、去年の文化祭に立ち会えなかったため、初めての文化祭で張り切っていたというだけで、はしゃいで物を作っていたわけではないのに。彼とは同じ係をやっていたが、その時も同じことを言われて思い出して少し腹を立ててしまう。ただやはり冷静に考えたら、はしゃいでいるようにしか見えないため、これ以上反論することはやめた。
最初は悔しくて冷静を装って落ち葉や木の実集めをしていたが、やはり楽しくなって張り切ってやってしまい、また作る際も張り切ってしまった。その私の姿を見て、彼は楽しそうな笑みを浮かべていたため最初は腹を立てていたものの、そんな彼を暫く見ていると私も嬉しくなって自然と笑みを浮かべていた。
出来たものは別段上手いわけではなかったが、私にとっては最高の小物を彼と作ることが出来てとても素敵な物になった。