する気ないです?
あの時はこの季節とは真逆の桜が満開な時のこと。
本来なら授業が終わった後は予定がない限り友人と一緒に遊んだり、勉強をするのだが、この時は友人全員が予定が入っており、遊ぶ約束がなかった。そのため1人寂しく勉強でもするかとトボトボ帰っていたところ、後ろから彼が声を掛けてきたのだ――今大丈夫ですかと。
別に急いで変える必要もなかったため、大丈夫ですと答えて彼の話を聞くことにした。
「僕は……立花先輩のことが……好きです。もし良ければ僕とお付き合いしてください」
顔を真っ赤にして、恋愛に大変疎い私でも分かるぐらいのどストレートな告白をしてくれたのだ。勿論その告白はとても嬉しかったし、その状況を理解するまで少し時間が掛かってしまうほど驚いた。
実は彼とは違う学年であるものの、同じ係であるため、時間があると一緒に話して盛り上がっていた。彼のお話は別段面白いというわけではないけど、とても包容力があって聞いていると心地良かったし、またどんな些細な話でも私の話を真面目にいつも聞いてくれていたため、彼に対しての印象はとても良かった。
それでも病気のこともあるし、今は恋愛なんて考えられないとやはりその告白を断ってしまった。
「そうですよね。あの……困惑させてすみません」
その時の彼はまるで本当にショックだったようだったが、何とか取り繕うと必死に笑顔を無理矢理作っていた。あの表情を見た時に凄い罪悪感を感じたことを覚えている。
それでも、先程の告白はあの時と同じように、顔を真っ赤にしてストレートに告白してきた。同じシチュエーションに既視感を感じていたのにも関わらず、再び胸の高鳴りを感じてしまう。もしかしたらこれは一生で一度のチャンスかもしれないと感じて、今までの私では考えられないようなことを口にした。
「櫻井さん、私と……お試しでお付き合いなんて……する気ないです?」