海老フライとオムライス
「お待たせしました。海老フライとオムライス、そしてご飯大です」
店員の威勢の良い声で、料理が出来上がったことをお知らせしてくれる。
どちらも美味しそうな匂いがして、もともとあった食欲がよりそそられた。そして今回のオムライスはふわふわではなく、しっかりと形があるプレーンの方。最近は人気があるせいかふわふわのオムライスの方が多いため、久しぶりにプレーン型のオムライスを食べられることに喜びを感じる。
店員は「これはどちら様のものですか」と聞きながら、丁寧に1つずつ配置してくれた。
料理がそれぞれの場所に置かれたため、2人はいただきますと手を合わせて、それぞれ箸とスプーンを持って手を付けた。
早速前からは海老フライのサクッとした音が聞こえてきて、すでに耳も心地良い。
「渚さん、海老フライ食べます?」
「え?」
「食べたそうにしていたので」
美味しそうだなと思っていたことはどうやらバレバレだったらしい。何だか気遣いしてもらって申し訳ないけど、ここは甘えたいと思った。
「では一口お願いします」
そう言うと彼は海老フライを箸で掴み、こちらの方に向けて来た。少し緊張しながらもいただきますと一言挟んで、海老フライを一口いただく。衣はサクッとしておりながらも、海老の柔らかい食感で大変美味しかった。
「康太さんもオムライス食べますか?」
「なら、こちらも言葉に甘えて……」
今度は私がオムライスをスプーンで一口すくい、オムライスが零れないようにゆっくりと彼の方に向けた。私の動作に合わせて彼も口を開け、そのオムライスを嬉しそうに食べてくれた。こんなことして周りの人達からはバカップルだなと思われるかもしれないが、私にとってはこれ以上にない幸せな時間だった。
それから昼食を終えた私達は、再び森に向かって歩き出した。まだ着くのには時間が掛かると言うのに、全く退屈になることはなく、ただひたすら楽しい時間になった。