本当の真実
「知っていたのは本当にたまたまでして……。高校生の時、渚さんの隣を通った際に電話の会話が聞こえてしまい、余命のことを知ってしまいました……だから」
「だったら何故付き合ったの?」
そんな前から知られていたのは驚いたと同時に、何故あの時付き合うのをOKしたのか疑問に思った。そのため、彼の話が途中でありながらも、言葉を崩して何故と尋ねてしまう。彼はその質問に一瞬戸惑いながらも、笑って答えた。
「それは最初から言っていますよ。渚さんのことがずっと好きだったからと。どんな時でも手を抜かずに明るい渚さんが本当に素敵でずっと憧れでした」
それは学校に居る時間は病気のことをあまり気にせずに楽しむことが出来たから生き生きとしていただけなのに。
「………嘘」
「嘘じゃないです。あの時、好きな人や付き合っている人がいるという質問が来た時には驚きましたが、逆に今もしっかりと想いを伝えたら、数ヶ月間だけでも付き合えるかもしれないと打算的にあんな風に言いました」
まさか余命のことを打ち明けたらこんな風に言われるとは夢にも思わなかった。私の気持ちを元々汲み取ってくれた優しい彼と付き合っていたことが分かり、嬉しくてただ嬉しくて堪らずに涙が溢れ出る。
「ありがとう。私、本当に幸せ者ね」
また言葉を崩してしまったけれども、これが今の率直な気持ちだった。涙は止まらないものの、自然と笑顔になる。
「渚さん、最後まで一緒にいても良いですか? もっと楽しい思い出を作りたいです」
「私も大好きな康太さんともっと傍にいたいです」
彼は最後の最後まで私の願いを汲み取ってくれて、それに本当に最後まで一緒にいたいと思ってくれた。そんな最高な言葉を言ってくれた彼に、嬉しくて抱きついてしまう。彼は私がこんな行動を今まで取ったことがないので、驚いているものの、笑みを浮かべて抱きしめ返してくれる。そこからは今までにないほどの温もりを感じた。