とうとう告げた真実
時間は流れ、早もう3月末。
本来ならもう余命のことを彼に打ち明けて別れているか、そのまま付き合っているかのはずだった。しかし、彼に打ち明けようとする度にどうしても言葉がつかえて、そのまま言うことが出来なかった。言おうとする度に、騙したとか許さないとか、大嫌いと言われる言葉が彼の声で頭中に勝手に響いてしまう。それを言われるのを大変恐れており、もう彼のことを好きであるのは間違いなかった。それでももう桜が満開な時期であり、宣言された余命は伸びることもなく、あと2季もない。ここで言わなくてはならない。
「康太さん、私達は付き合い始めてもう半年近く経ちますが、どう思います?」
「どうって………凄く幸せです」
「そう言ってくれて嬉しいです。でも私は……ずっと貴方に隠していたことがあります……」
彼は最初の質問に屈託のない笑顔で答えてくれた。それに対しては心の底から喜びを感じた。しかし、私は顔を強張らせてようやく言うべきことを告げた。
「私はもう長く生きられません。あと2・3ヶ月と言われています。実は幼い時から長くはないと言われていて…………。今まで黙って半年近く付き合って本当にごめんなさい。ただ少しの間恋愛というものをしたくて貴方と付き合っていただけです。だからもう……別れましょう?」
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本当は大好きだと伝えたかった。でも、それを言ったら別れたくない、ずっと傍にいて欲しいと言うのが分かっていたから。彼をまた縛ってしまうから。だから気持ちは抑えて、泣くのも抑えた。それでも彼の言葉を真正面から受け止めたくなくて、受け止められる気がしなくて、後ろを向いて重い足を前に進めた。
「実は僕も隠していたことがありました。それは、渚さんの余命のことを知っていながら付き合っていたことです」
彼の予想外の言葉に私は思わず振り向いてしまう。彼の表情を見ると、項垂れて申し訳無さそうにしていた。