追放された荷物持ちの俺は……
とあるエッセイを読んだ勢いで書いてみた。
「ジャック、今日付けでお前は俺たちのパーティから抜けてもらう。」
「えっ?」
突然のクビ宣言に俺はビックリした。
「そ、そんな! 俺達は、今までずっと一緒にやってきただろ! 何で突然そんなことを!」
「それはだな、お前が俺たちの冒険に着いてこられなくなったからだ。」
「そ、それは……」
確かに俺は今日、魔物の攻撃により大ケガをしてしまい、仲間の僧侶に治療して貰った身だ。一つ間違っていたら死んでいたのは確かだった。
「だけど俺は荷物持ちとして、みんなの役に……」
「確かにジャックのお陰で、俺達は荷物の運搬に関しては苦労することは無かった。本当に助かっていた。だが、ここから先の冒険はより危険な旅となる。
今日みたいな危険なことは、常に発生するだろう。その時になって、俺はジャックを守れる自信が無いんだ。だから、すまない!」
「・・・・」
「もちろん俺たちの都合でジャックに抜けてもらう関係上、出来るだけ退職金は支払おうと思っている。了解して貰えないだろうか。」
「……俺が抜けた後の荷物はどうするんだ?」
「俺達で手分けして運ぼうと思っている。」
「えっ? 他の運び屋を雇うんじゃなくて?」
「何を言っているんだ。ジャック以上の運び屋なんて存在するものか。苦労はすると思うがみんなで分担して運べは、何とかなるさ。幸いなことにそのことに了解してくれたしな。」
えっと、本当に俺を心配しての追放なのか? マジで?
リーダーの顔を見ると、本当にすまなそうな顔をして俺を見ていた。マジらしい。
「だったら他の仲間が何で来ないんだ?」
「俺が止めさせてもらった。だから俺を恨んでもらって構わない。」
理由は分からないが、リーダーの意思は固いみたいだ。
「……わかった。パーティを抜けさせてもらうよ。」
「そうか。すまない……決して俺達が、ジャックが必要無いから抜けてもらう訳じゃないことを理解してくると嬉しいな。」
「大丈夫だよ。今までの行動を見てきて、それが嘘じゃ無いことは理解しているさ。」
「すまない……」
リーダーがそう言うと、袋をを俺に渡してきたので受け取ると、ズシリとかなりの重量が有るのが感じ取れた。
「なっ!」
中身を確認すると、かなりの数の金貨が入っていたのだった。少なく見ても100枚以上は有りそうだ。
この金額が有れば、20年は余裕で生活できそうだ。
「こんなに金貨を貰ったら、お前たちの冒険が!」
「大丈夫だ。何とかなるさ。」
「せめて3分の1、いや半分だけでも受け取ってくれ!」
「ジャック、これは俺たちのわがままによる慰謝料なんだ。気にしないでくれ!」
「わがままなものか! 俺の安全のための解雇だろうが!! 何でこんなに払うんだよ!」
「……明日の朝には出発するつもりだ。ここでお別れだ。」
「おい!」
「じゃあな!」
リーダーはそれだけ言うと、振り向くことなくこの場から去って行った。
後から知ったのだが、仲間は全員俺が抜けることに関して反対していたらしい。だけどリーダーの説得により渋々納得してくれと言うことを風の噂で聞いたのだった。
それから3年が過ぎ、魔王が討伐され世界は平和となった。
噂話によると、勇者達は決死の覚悟で魔王と相打ちになったらしく、帰らぬ人となったとのことだった。
「馬鹿野郎が!」
俺は誰も入っていない勇者の墓の前で涙を流していた。何故なら、俺が所属していたのが勇者パーティだったからだ。
今思えば、リーダーでもあった勇者は、二度と帰れないことを知っていて、全財産を俺に渡してパーティから抜けさせたのだろう。
「馬鹿野郎が……」
俺は墓の前で密かに涙を流すのだった。
世間は平和になったことの喜びで、お祭り騒ぎだ。
「本人が居なくて、何が平和だ!」
俺は立ち上がると、旅の支度をするのだった。
「じゃあ、行くか。」
旅の目的地は魔王城だ。仲間を弔うため、俺は単身魔王城へ行くことに決めたのだった。
魔物が居なくなった平和な世界になったことで、弱い俺でも魔王城へ行くことは可能だろう。
「待ってろよ、リーダー! いや勇者!!」
俺は魔王城へ向けて出発するのだった。
その後のジャックの行方を知るのもは誰も居なかったが、魔王城には名も知らない5つの墓が立っていることを、誰も知ることも無くひっそりと佇んでいるのだった。
作品としては微妙になりましたが、自分の中での追放ってこんな感じだろうなって思ってます。