1ー7 ソフィア2
お読み下さりありがとうございます。
この回は短目です。
次回から徐々に溺愛編に突入します。
『FRNFC、昼食時に中庭にて全員集合···sa』
次の日、フェルーナ様と行ったスイーツ店で購入した焼き菓子をお土産に学園のFC会員に招集をかけた。
呼び出しに応じて中庭に集まった会員は9名だ。
「あら?人数が足りないわね。全員っていったはずよ」
「ソフィア先輩。残りの4人のうち1人は生徒会役員の集まりがありこれません。3人は、会長の命でリリアンヌの取り巻きに紛れ込んで素行調査中ですわ」
あっ、すっかり忘れてた。
明日から素行調査を始めると、ルイザが昨夜いっていた。
FRNFCとは、フェルーナ様ファンクラブの略である。
そして、FRNFCの会長はルイザなのだ。
ルイザが会長?誰もが不思議がった。私もその中の1人だったし。
2年前の会長引き継ぎの際に、次期会長を決めるための試験に見事満点をもぎ取ったのはルイザだった。絶対に私が1番だと思っていたのに···。
後から知ったのだが、ルイザは小さな頃からフェルーナ様とお会いしていたのだ。いや···お会いしていたというより、陰から盗み見ていた?らしい。
ルイザの母親は王妃陛下付きの侍女だ。彼女が母親に連れられて王城に行ったときのこと。
フェルーナ様と第二王子のサイラス殿下が木登りをしていたという。ふたりとも下りられずにいたところをルイザはずっと物陰から見ていたという。
そのときに「女の子が木登りできるなんて!」とフェルーナ様に一目惚れしたのだとか。
フェルーナ様が登城する日に、たまに母親について行っては物陰から見ていたのだと、表情筋をほとんど動かさないルイザが頬を染めながらいう姿はちょっと気持ち悪かっ·····可愛らしかった。
それと、昨夜ルイザから知らされたのだが、ルイザがユリシーズ公爵邸でフェルーナ様付きの侍女となったのは王妃様からの指示によるものだったのだ。
ラングイットとフェルーナ様の結婚が内々で決まってから、公爵邸ではリリアンヌが別邸に入れないようにすること、それに加え学園ではリリアンヌの監視を言い渡されていたという。しかし、さすがルイザだ。
「興味の無いリリアンヌの監視なんて、私の学園生活を王妃様は何だと思っているのかしら?私は監視なんてしていないわよ。そんな無駄なことを私がしなくても、王家の影がしているのだから···。内緒よ」
そう言って彼女は、自分のしたくないことまで強制されるほどの給金をもらっていないのだと、私の両肩を揺らした。いや、私は関係ないよね?
昨夜のルイザは、ラングイットとリリアンヌの二人を殺した方がフェルーナ様がすぐに幸せになれるのにと、目をギラつかせ「殺る?殺っちゃうか」などと口角だけを持ち上げていっていた。
そのため、この場にルイザがいないのもリリアンヌを殺す名目を作るのだと意気揚々で朝早くから学園に向かって行ったのだった。すっかり忘れていた。
この場にいないルイザと、会員4人分の焼き菓子を取っておくと、残りをみんなで食べれるようにテーブルの上に置いた。
「今日、FRNFCの集合をかけたのはフェルーナ様の幸せのために協力してもらいたいからなの」
「今回、リリアンヌの悪事を暴かないことには、計画が先に進まなくなるわ」
そう、計画とはその名の通り···フェルーナ様幸せ計画だ。
会員たちは、私の言葉に息を飲みこんだ。
それもそのはずだ。
このことで公爵家が動けば、最悪一家路頭に迷うことにもなり得るのだ。彼女たちの選択1つで自身の家が揺らぐことになりうる。
なので、私は彼女たちに協力してもらう代わりに条件を先に提示した。
「もし、この一件で何かしらお咎めがあればユリシーズ公爵家の分家であるロイド子爵家、私が全責任を負います。ユリシーズ公爵邸で侍女をしている私が率先していることで公爵邸にもお咎めがあるはずですもの」
「ソフィア様、私をなめていますわ。ナルチェル候爵家も責任を負いますわ」
ナルチェル候爵令嬢であるサマンサ様が、やる気に満ちた表情でそういうと、会員のみんなも多数ならば怖くないと次々に手を挙げ始め、打倒リリアンヌのメンバーが結成された。
まず、私たちは、リリアンヌの行動を把握するために、彼女の取り巻きと表面だけ仲良くしている友人らに声をかけることから始めた。一般科に通っている学生らの中では、その人数は極わずかしかいない。フェルーナ様と王妃様の話を聞いていた私には、今回のことでリリアンヌの魔力が漏れていることが理由なのだと分かった。
では、魅了にかかっていない友人らは?王妃陛下と別れた後の馬車の中でフェルーナ様に疑問を投げかけると「魔力が全くないか、一度も好意を抱いたことがないためね」なるほどだった。みんな、リリアンヌのことは出会ったときから気に入らないのだと言っている友人ばかりだ。
各々が独自に情報収集をし聞き出した結果をまた一週間後にみんなで中庭に集まりまとめることを決め、仲間たちと別れた。
その日、学園の授業が終わるとリリアンヌはいつものように取り巻きを連れて教室から出ていった。二階の教室から外の様子を見ていたが、彼女は取り巻きたちに手を振ると、ユリシーズ公爵家の馬車に乗り込んだ。
「はぁー」
「ソフィア。今日の結果報告よ!」
深くため息を吐き出したところへルイザが私に声をかけると、彼女はバサリと机の上に数枚の紙を置いた。
それを手に取り目を通すと――。
「二時間目後20分の休憩時間···特別科へ入室、サイラス殿下の腕に自ら腕を組む。休憩時間が終わる3分前に絡ませた腕を離し退室。四時間目後60分の昼休憩時間···特別科へ入室、サイラス殿下の腕に自ら腕を組み、殿下を連れてそのまま退室。高位貴族の使用する学食へ行く。殿下は本日のCランチ。リリアンヌはAランチを注文。食事が終わると殿下は生徒会室へ。リリアンヌは殿下の腕に自ら腕を組み生徒会室の扉の前までついて行き、殿下が生徒会室へ入ると一般科に戻った」
読み終えたあとルイザを見ると、彼女は首を傾げて両手をお手上げ状態にした。
「なにこれ?リリアンヌがサイラス殿下と?どうなってるの?」
「私は、専攻科だから今日初めて知ったのだけど、特別科の令嬢たちに聞いてみれば毎日の光景だと教えてくれたわ」
最高学年になってからは、休み時間になると特別科へと行き、昼の休憩時間は第二王子らと学食にいることが多いのだという。
第二王子のサイラス殿下とも何かあるのかしら?しかし、王族相手になると調べるのには限界がある。
「ルイザ、ソフィア、お待たせ!」
一般科のリリアンヌと同じクラスのミリーだ。今日一日、ルイザから頼まれてリリアンヌの取り巻きに紛れ込み、クラス内での素行調査をしていたうちの1人だ。
ミリーからも数枚の用紙を渡され、私はルイザと一緒にそれに目を通す。
「なにこれ?リリアンヌってば、凄いわね。クラス内で1日で3人の男性に腕を絡めて体を密着させるだなんて···」
「彼女、男なら誰でもいいのでは?」
ミリーは両手を腰にあて毎日こんな感じよと見ていて吐き気がするのだと困り顔で笑った。
その後で私は鞄からお昼に渡せなかった焼き菓子を取り出すと2人に渡した。
「はい。焼き菓子!昨日、フェルーナ様と行ったスイーツ店で購入してきた焼き菓子よ。お土産に買ってきたからFC会員にもお昼に配ったの。菓子を選んでくれたのはフェルーナ様よ」
すると2人は、食べられないだの、家宝にするだの言い始めたので「腐る前に食べてよね」と呆れ顔で言うと、無言で菓子を頬張り始めた。
ルイザは、今回のことでサイラス殿下との仲も気になるし、しばらくの間はリリアンヌの言動調査を続けて行き、その後で計画をたてて行動した方が良さそうだと会長らしい意見を言う。
ミリーと私は、無表情でそう言うルイザの言葉にお互い目を合わせるとコクリと頷いた。
次回から溺愛編に突入します。
誤字脱字がありましたら申し訳ございません。