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007 Phoenix

『第一回ギルド戦を始めます。プレイヤーのみなさまはギルド毎に固まって第二層のコピーエリアにランダム転送されます』


 よかった、ギルドで固まれるんだね。

 コピーとは言え、第二層を完全再現しているわけだから23区の半分の広さがある。そこで合流なんてしようものなら2時間があっという間に過ぎちゃうもんね。


「よーし、Phoenixの目標は1エリア獲得! 頑張ろう!」

「うん!」

「はい!」


 エリアさえ獲得してしまえばお金かスキルかアイテムなどが手に入るはず。誰もエリアを獲っていない今がチャンスだ。


『それでは転送します。ギルド戦……開始!』


 目の前の景色が一気に変わった。

 第二層には来たことがない。ただ、その景色にどこか懐かしさを感じた。


「うわぁ、第二層は街エリアって聞いていたけど、本当に現代都市だね!」

「ビル群もあるし、ちょっと離れれば駅もある。完全に街だね」

「こ、こんな都会だと緊張しちゃいます……」


 少し萎縮した翼さんの手をとった。


「こ、小雛さん?」

「大丈夫ですよ、私と由鶴がついていますから」

「は、はい!」

「さぁ、エリアを取りに行こう。マップによるとここは……おっ、エリア1だって!」


 1000個あるエリアのうちの1番目のエリアに偶然来たんだ。じゃあそのまま頂いちゃおうか!


「じゃあ新規エリア開拓クエストを……」

「ちょーっと待った!!」

「え、誰!?」


 この近辺では比較的低いビルの頂上に、3人の人影があった。

 新規エリア獲得ではPVPは発生しないと思っていたけど、こうやってクエストの取り合いになることもあるんだ。思っていたよりプレイヤー人口は多そうだね。


「ここは私たち【中山家】が貰うわよ!」

「な、中山家……」


 凄まじいギルド名だ。アットホームなギルドなのかな?


「ママ、あんまり相手を刺激しない方が……」

「だまらっしゃい!」


 息子さんと思われる2人はおばさんに怯えながらプレイしている。あるんだよね〜、若い頃にゲームにハマっていた人が子どもを無理やり連れてゲームすること。


「小雛、相手も3人だしここは落ち着いて立ち回ろう」

「そうだね。翼さん、とりあえず高所は取られているので安全な場所に……」

「いえ。あの3人は私が対処します」

「え?」

「はぁっ!!」


 大きく叫んで、翼さんは左手を突き出した。その薬指には、透明な宝石がはめ込まれた指輪が付けられている。


「宝石顕現:ヒスイ」


 その透明な宝石が緑色に変遷し、やがて周囲に風が吹き始めた。


風魔顕現(ふうまけんげん)!」

「うおぁっ!?」

「ママ、どうすればいいの!?」

「気合い! 気合いで生き残れ!」


 翼さんは風でビルの屋上にいた3人組を下に叩き落とした。ぼ、暴力的……でもゲーマーとして、すごく合理的だとも思う。


「これで条件は完全にイーブンです」

「ありがとうございます、翼さん!」

「あ、甘いわね! 私の職業は【偉大なる母】。息子たちを大幅に強化させられるのよ!」

「おお、力が湧いてくるよママ!」

「これならいける!」


 息子さん2人の攻撃ステータスが上がったように見える。

 距離は30メートルか。ここは……

 私が由鶴に視線を配ると、親友はすべてを理解したようにニヤッと笑う。


「わかってるって。任せてよ小雛」

「うん、任せたよ親友!」


 誤差のない由鶴のエネルギー弾で、近づかれることなく攻撃に成功した。とはいえ相手は強化兵。エネルギー弾でもなかなかダメージを受けてはくれないみたいだ。

 なら、私も!


「プレゼント・フォー・ミー!」


 白い袋に手を入れ、中に入ってるものを取り出す。

 すると中から小さなぬいぐるみが出てきた。鼻が赤い、クマのぬいぐるみだ。


「これ……なるほど、そういうことか!」


 ゲーマーの直感で、これがどういうものか理解した。


「由鶴はそのまま撃ち続けて! 翼さんは協力お願いします!」

「どうすればいいですか?」

「あのおばさんの所に、できるだけ近づけるようにしてください!」

「分かりました。宝石顕現:ルビー」


 翼さんの左手薬指についた宝石が赤色になり、炎を出せるようになったみたいだ。


「道を作ります。炎魔顕現:焔一閃(ほむらいっせん)


 炎のビームが一直線に街を貫いた。それを避けた息子さんたち2人のところに、道ができる。


「うおおおお!」


 私は白い袋を引きずりながら走って、おばさんと17メートルくらいの距離まで来られた。


「何してるんだいアンタら! そこのふざけたサンタを倒すんだよ!」

「無理だよママ! 迂闊に顔を出したら撃たれる……ひえっ!?」


 看板やポストに隠れる息子さんたちがちょっとでも顔を出したら由鶴が撃ってくれる。本当に頼れる仲間だ!

 私はクマのぬいぐるみの鼻を引っこ抜いた。すると予想通り、ジーーーーという音が鳴り始める。


「やあっ!」


 クマのぬいぐるみを思いっきり投げて、おばさんの足元に転がった。


「なんだいこんなもの!」

「残念!」

「えっ……」


 ドカーーン!! っと、威勢のいい爆発音が街に響いた。

 やっぱりぬいぐるみ型手榴弾だったね。サンタクロースのプレゼントにしては物騒すぎるかも。

 あとは……


「翼さん、由鶴、お願いします!」

「もうやってるよ!」

「こちらも倒しました」


 私が振り返った頃にはもう戦闘は終わっていたみたい。

 ふう、PVP発生とは思わなかったけど、無事勝てたね。


「あっ!」


 ぬいぐるみ型手榴弾の爆発によってできた穴に、何かしらのボタンがあった。


「ねぇねぇ、これクエスト用のボタンじゃない?」

「そうかもね。押してみようか」


 私はポチッと、そのボタンを押してみた。

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