005 ギルド結成!
「あっ、返信きたよ」
メッセージを送ってから10分くらいで返信が来た。翼さんもゲーマーさんなのかもね。
「な、何だって?」
「『もし良かったら話を聞きたいです』だって! カフェの位置共有してさ、今すぐここに来てもらおうよ!」
「う、うーん。わかった……」
ちょっと由鶴は複雑そうな顔をしている。緊張しているのかな? 由鶴らしくもない。
翼さんにカフェの位置情報を送ってから5分。カフェの窓から、黒髪ショートの女性が覗いているのが見えた。
「翼さん、もしかして緊張して入れないのかな。可愛い」
「え、あの人が翼さん!?」
「思ってたのと違った?」
「いやだって……美人すぎない? モデル? 女優?」
「さぁ……あんまり長くは話せなかったし……」
由鶴は珍しく慌てているようだった。何に慌てているのかは分からないけど。
私はカフェの外に出て、中の様子を伺う翼さんの手を取った。
「来てくれてありがとうございます! どうぞ入ってください!」
「あ、どうも……」
相変わらず言葉少ない人だ。でも嫌な感じはしない。むしろクールでいいね、とすら思う。
翼さんには私の隣の椅子を促した。
「えっと……小雛さん?」
「あ、はい! 小雛です!」
翼さんに名前呼ばれるの、なんか嬉しい!
「この方は……」
上品に手で差したのは由鶴だ。そういえば由鶴のこと説明するの忘れていたよ。
「アタシは黒川由鶴です。小雛のし・ん・ゆ・うです」
なぜか親友を強調している由鶴。翼さんの緊張をほぐしてくれているのかな。やっぱり優しいな〜由鶴は。
「天城翼と申します……えっと、私をギルドにということでしたが……」
「はい! ぜひ翼さんに私たちのギルドに入って欲しいんです!」
「で、でも翼さんはもうギルド決まっていたり……」
「いえ。フリーですので」
「あ、そうですか……」
翼さんはいつのまにか頼んでいたらしいラテをひと口啜った。優雅で、エレガント。少女漫画の王子様を少し可愛くした感じだ。
「フリーなら入ってくださいよ! 私たちギルド戦でもらえる報酬が欲しいですし、翼さんも欲しいですよね?」
「そ、そうですね……でも……」
「何か懸念事項がありますか?」
「私、人見知りなんです。ずっと黙っていて愛想もないから大学でも人から無愛想・怖いと言われて……。ゲームは1人で生きていても誰にも迷惑かけないからよくプレイするんですけど……」
なるほど、翼さんにとっては人付き合いはコンプレックスなんだ。
私は立ち上がって翼さんの頭を胸に抱き寄せた。
「ちょ、小雛!?」
「いいんですよ翼さん。人見知りでも、コミュニケーションが苦手でも。私はそんな翼さんでも、一緒にプレイしたいって思いましたから」
言いたいことを言い切って、私は翼さんの頭を解放した。
「ど、どうしてそこまで……」
「直感です!」
運命の出会いって、たぶん直感だからね。
「……わかりました、不思議ですね……小雛さんの直感を信じてみたくなりました」
「あ、それわかります。小雛って小さくてポンコツなのにどこかついて行きたくなりますよね」
「由鶴!? どういう意味!?」
ごめんごめんと、由鶴はテキトーに謝っている。はぁ、褒められているんだか貶されているんだか。
まぁともかく……
「これでギルド結成だね!」
「あの、なんて名前のギルドなんですか?」
「あっ……」
考えてなかった。
「ゆ、由鶴さんお願いします」
「えー? またアタシー?」
名前付けとか、大事な予定とかは大体由鶴に決めてもらっている。直感じゃなく、思考力やセンスは由鶴に丸投げだ。
「うーん……小雛に由鶴に翼かぁ。みんな鳥に関係している名前だし、それ関連はどう?」
「いいね! たぶん!」
「たぶんって……」
「不死鳥……」
「え?」
「あ、ごめんなさい! 不死鳥のように強いギルドになれたらいいなと思っていたらつい……」
翼さんは慌てて謝罪をしている。ポロッと呟くくらい何の罪にもならないのに。むしろ……
「それいいんじゃないですか? ねぇ、由鶴!」
「うーん、じゃあギルド名は【Phoenix】でどう?」
「賛成!」
「よかった……です」
こうして、私たちPhoenixは結成された。