033 遊園地
第二層にある遊園地はジェットコースターからメリーゴーランドまで、多種多様なアトラクションに富んでいた。なんでここまで配慮したんだろうと思うくらい、ジェットコースターなんかは絶叫レベル別に分かれていて誰でも楽しく遊べるようだ。
「ほら小雛、元気出しなよ」
「うーーーーん……」
出会えてもいない、バトルも消化不良。そんな状態でどうやって元気を出せというのか。
「仕方ないな〜、ほれ」
「ちょ、由鶴!?」
「私も協力します」
「翼さんまで!」
2人は私の腕をがっちり胸元でキープして強制的に動かしてきた。
……感じる。もにゅとした、翼さんの胸を!
由鶴はあんまり感じない。どんまい。
「うへ〜〜」
「あっ、小雛なんか楽しそう」
「なぜでしょう。まだアトラクションに乗っていないのに……」
「まぁ何でもいいじゃないですか! 行きましょう!」
翼さんと由鶴に引っ張られ、この遊園地のメインコースターっぽいところに到着した。
大きい! 何メートルの高さから落ちるタイプだろうか。絶叫系は苦手ではないけど、これはちょっと怖いかも。
「っていうかあんまりお客さんいないんだね」
「まぁコースター乗りたい人はコースター専用ゲームで遊ぶからじゃない?」
「なるほど、確かに」
餅は餅屋と言いますし、わざわざ対戦式ファンタジーゲームでジェットコースターに乗る人はいないか。
コースターに乗り込んで、いざ出発!
「うわ! 速っ!」
「初速からやばいね!」
「トナカイたちより速い速い! ちょっと怖いかも!」
「だ、大丈夫ですよ小雛さん」
「……翼さんの顔が真っ青だ!!」
血の気が引いているとはまさにこのこと。
翼さんは身体を小刻みに震わせながら、コースターの安全レバーを掴んでいた。
ジェットコースターが一周走り終わる頃には、翼さんは顔面蒼白。あぁこりゃダメだというのが一眼でわかった。
「え、まさか翼さんジェットコースター苦手とか?」
「……小雛さんを元気づけたい気持ちで忘れていました。というかこういうの乗る友人がいないので、苦手かどうかも覚えていませんでした」
「う、うーん」
重い。というかなぜ翼さんには友達がいないのだろう。こんなに魅力的な人なのに。
「翼さーん、水買ってきましたよー」
「ありがとうございます、由鶴さん」
由鶴から水を受け取り、翼さんはそれを一気に飲み干した。
「あはは、じゃあ軽めのやつ乗ろうか」
「そうですよ! 軽いやつ乗りましょ、翼さん!」
「は、はい。ありがとうございます」
こうして私たちは遊園地を楽しみ尽くす……というまではいかないまでも、そこそこ楽しんだ。




