001 ミニスカサンタとスカートの中
「あ痛っ!」
乱暴に放り出されてしまった。地面が硬くてちょっと痛い。
ここは……おお、活気あふれる町だ! 説明にもあった、第一層の初心者向けのフィールドだね!
さすがに話題のゲームだけあって、0時ログイン勢はたくさんいた。次々に乱暴に第一層に放り出されている。
「あ、由鶴にメッセージ送らないと」
メニューからメッセージを開こうとすると、やたら視線を感じる。
ヒソヒソとした声で、「サンタクロースよ」「サンタだ……」と聞こえてきた。
「……あぁ! 私サンタクロースじゃん!」
自分の格好を見て気がついた。
かなり際どいミニのスカートも、ヒラヒラとした頼りない胸の武装も、全部赤と白。とんでもないミニスカサンタがここに爆誕していた。
やっばー、超目立ってる。どうしよ、早く由鶴と合流しないと……
「おーい、こっちこっち」
「由鶴!?」
メッセージを送るまでもなく、由鶴は私の手を掴んで走った。
しばらく走ると町を離れて草原に出た。ここならまだ人もいないから視線も集まらない。はぁ、やっと落ち着けるよ。
「はぁ、はぁ……もう何この衣装!」
「初期装備でしょ。それにしても分かりやすい職業だね」
「あー! バカにしてるなー!」
「してないって〜」
絶対バカにしてる……。
由鶴はいいなぁ、黒いロングコートが茶髪とよく合ってる。誰が見てもかっこいい装備と言いやすいやつだ……。
「小雛の綺麗な白髪に赤い服、どこから見ても100点のサンタクロースだよ。ちょっと身長が低すぎる気もするけど」
「あー! 地雷踏んだなぁ!」
見た目でイジってもいい関係なのはそうだけど、身長はなるべくイジられたくない。146センチでサンタコスは犯罪なんですか!?
ただ私の生まれつきの白髪を綺麗って言ってくれるのは嬉しいね。
そんな私をよそに、由鶴はジロジロと私の太ももを見ていた。
「ちょっとスカートがミニすぎるなー。どれ失礼」
「ちょちょちょい、何してんの!?」
何の躊躇いもなく、由鶴は私の短いスカートを捲り上げてきた。
「あーよかった。暗黒でパンツは見えないや」
「見えたらどうするのさ!」
「アタシならいいでしょ」
「う、うーん……」
私がレズビアンってこと忘れてない? 目覚めちゃうかもしれないのに。怖いものなしだなあ、由鶴は。
「あとその大きな袋はなに? プレゼント入れる袋?」
「うわっ! 何これ気が付かなかった!」
私は無意識に大きく膨らんだ白絹の袋を持っていた。サンタクロースがプレゼントを入れている、アレだ。
「あははは、ネタ枠は小雛に取られたか〜」
「そういう由鶴はどんな職業なのさ!」
これで変なのだったら笑い返してやるんだから!
「んー? アタシはねぇ……」
由鶴が職業を教えてくれようとした瞬間、大きな羽音が草原に響き渡った。
数秒後、大きな蜂が10匹も私たちを取り囲むように現れた。草原にはモンスターも出るんだ!
「ありゃ、囲まれてるねこれ」
「どどど、どうしよう! 私武器一つもないんだけど!?」
「まぁまぁ、ここはアタシにお任せあれ」
「由鶴……?」
由鶴は私に親指を立てた。そしてスカートの中に隠していたのか、白と緑が鮮やかな拳銃を取り出す。
「が、ガンナー!?」
「ただのガンナーじゃないよ。えいっ!」
引き金を引いた瞬間、銃の乾いた音ではなく、SFチックな高い音が響いた。弾は目に見えるほど緑色に光っていて、実態を持たずに発光してる。
「【エネルギーガンナー】。これがアタシの職業!」
エネルギーガンナー……何それずるい! めっちゃカッコいいじゃん!
1匹、また1匹と由鶴は大きな蜂を倒していく。何もできない私、めっちゃ暇なんだけど〜。
「あ、しまった小雛! 撃ち漏らしがそっちに!」
「え、ええっ!? そう言われても……」
「もう一か八か、その袋で殴っちゃえ!」
「えーい、どうにでもなれぇ!」
由鶴の言った通り、サンタクロースのプレゼント袋でぶん殴ってみた。
すると蜂は大きくのけぞり、距離が離れた。
「ノックバック搭載!? そんなことある!?」
「ナイスだよ小雛! あとは任せて」
また高い音を出す白緑の銃で、最後の蜂を撃ち抜いた。
「ナイス勝利! 小雛のサンタクロースも結構強そうじゃん」
「んー……どうなんだろ。あ、スキルとか見られるみたい」
「えっ? どこどこ?」
「ほら、メニューの『マイ・キャラクター』から」
「本当だ。アタシはエネルギーバレット。HP消費で強力な弾を撃つってさ。うわ、本当にHP減ってる!」
由鶴は強そうって思ったけど、分かりやすいデメリットがあるんだね。えっと私のスキルは……
「あ、プレゼント・フォー・ミーってのがある! 白い袋から1日5回まで、ランダムなアイテムが手に入るんだって。時間経過で消えるみたいだけど」
「何それ。超運ゲーじゃん」
「ねー、どのレベルのものが当たるかに左右されちゃうよ……」
「じゃあ、試してみない?」
「え?」
「ここでアタシと、PVP、やろうよ!」
「ぴ、PVP!?」
ブックマーク登録、よろしくお願いします!