026 脱落
ギルド戦は残り45分。
それだけ耐え抜けば、またこのエリア1は私たちのものだ。
『こちら由鶴。正面に敵を発見。1人だね』
「1人? 真紀さん?」
『いや、見るからに男性だね』
「そっか。まぁ1人なら由鶴に任せていいよね」
『もちろん!』
頼もしい幼馴染だ。
パァン! と、乾いた銃声が鳴り響く。
それと同時に、由鶴の驚愕の声もトランシーバーから漏れてきた。
「どうしたの!? ねぇ由鶴! 由鶴!」
返事がない。いったい何が……
『小雛さん! 目の前!』
「えっ……」
翼さんの叫びで、よくやく私の目の前に敵が現れたことに気がついた。
ゲーマーとしての癖で、瞬時に相手の装備状況を確認する。
武器なし、アイテムなし、バックなし、鎧なし。
軽装のランニングウェアとシューズをつけただけの、一般男性がそこに立っていた。
「でぇい!」
「うっ!」
回し蹴りを白い袋でなんとか受け止めて、1撃KOだけは免れた。
この男性、とにかく速い。速すぎて目に追うのがやっとだ。
「あなたは……」
「滅びの国3賢者が1人、山岸宗治」
山岸宗治……? もしかしてあの陸上男子100メートル日本記録保持者の山岸宗治!?
通りで速いわけだ。たぶん職業は『スピードランナー』とか何だろうけど、何より本人が走り方を熟知しているのがその速さに磨きをかけている。
落ち着け。こんなの一瞬の隙が命取りになる。
「翼さんは待機していてください。……山岸さん、私たちの狙撃手はどうしたんですか?」
「あのビルの屋上から俺を狙っていたやつか。あいつは俺の仲間がビルごと吹っ飛ばしたよ」
「ビルごと……?」
「狙撃手なら狙撃ポイントを変える。よく覚えておくんだな!」
まずい、やられる!
諦めて目を瞑った瞬間、高火力の黄緑色の銃弾が横切り、山岸さんの頭を横方向に貫いた。
「な……んで……」
「ふぅ、ビル倒壊くらいで死ぬアタシじゃないっての」
「由鶴!」
「でもごめんね小雛。HPほぼ持ってかれた。で、今の狙撃でこの通り」
由鶴はHPバーを私に見せてきた。
そのHPは、全損している。
「由鶴……」
「アタシはここでリタイアだね。あとは任せたよ、小雛。それから翼さんも」
「うん。任せて。由鶴に助けてもらった命、絶対に無駄にしないから」
「頼んだよ、親友」
由鶴はにっこり笑ってギルド戦から離脱した。
3賢者……ってことはあと2人もあんなに強い人がいるってこと?
改めて、真紀さんのそろえた戦力に恐れ慄いた。




