016 トナカイ(超便利)
「トナカイ!? なんで私だけそんなにサンタクロースに忠実なの!?」
頭を抱えて叫んだ。
ちなみにソリまで用意されていた。ミニスカサンタコスで、ソリに乗り、トナカイに引っ張られろ。ということなのかな? 怒るよ?
そんな私とは対照的に、翼さんはトナカイたちの頭を撫でていた。そういえば初対面の時、私も頭を撫でられた気がする。
「翼さんって何で初めて会うものに頭撫でるんですか?」
「あっ……いえ。私その……可愛いものが好きで」
保護欲の対象だったの!?
出会い目的で始めたこのゲーム。顔がタイプの人に出会えたと思ったけど、翼さん的には私は近所の子どもみたいな感じか〜……。はぁ。
「あ、本当だ。つぶらな目で可愛いよ、小雛」
「えー?」
ジッとトナカイたちの目を見つめてみる。私が関心を向けると、8頭のトナカイたちは「ご主人様ー」と言わんばかりにアピールしてきた。
黒々とした、丸い瞳。草原を照らす太陽の光すら反射してしまうその瞳に……気がつけば虜になっていた。
「うへへ、可愛いな〜トナ太郎は」
「トナ太郎!?」
「8頭もいるし、名前付けてあげた方がいいかなぁって」
「無理無理無理! 覚えられるわけないって」
「そっかー。残念」
ひと通りその可愛さを堪能したら、当たり前の質問が翼さんから飛んできた。
「それで、この子たちはいったい何ができるんですか?」
「あ……」
そうだよ! ただ癒してくれるだけじゃ何にも意味ないもん! だってこれゲームだし!
「ただのペットじゃないと思うけど……ソリに座ってみよ」
私が真っ赤なソリに座った瞬間、ソリの先端から光の紐がトナカイたちに向かって伸びていった。
「え、え?」
ジリジリと、ソリが動いていく。そして混乱している間に、トナカイたちが大加速を始めてしまった!
「うわわわわわっ!」
「小雛ー! どこ行くのー?」
「わ、わかんない!」
困惑していたらソリの手綱にラジコンのコントローラーみたいなのが出てきた。もしかしてこれで操作できる?
レーシングゲームの感覚でコントローラーをイジると、トナカイたちは旋回、減速を行ってくれた。
「ふぅ、一生ソリ生活かと思ったぁ……」
「ブブン! フゥーーー」
「うん? まだ何かできるの?」
分からないけど、なんかそう訴えている気がする。
もう一度コントローラーを握って、押してないボタンを押してみた。すると……
「うぉぉぉお!?」
なんと、ソリがゆっくりと地面から離れていった。まさかこれ、空飛ぶサンタクロースになれるの!?
「あははは、みんなすごーい! 優秀だね〜」
「ギャース!」
トナカイたちを褒めて調子に乗っているのも束の間、目の前に鳥型のモンスターが現れてしまった。
「ヤバっ」
慌てて空飛ぶソリを止めようとすると、トナカイたちがこちらに振り向いて「自分いけますけど」みたいな顔をした。
「い、いけるんだね? 信じてるからね?」
トナカイくんたちを信じて、そのまま鳥のモンスターに突進! するとトナカイたちの角が輝いて、そのまま頭突きで鳥を一撃で仕留めてしまった。
「うぇぇ!? 強い!」
トナカイたちは一斉に振り返り、見事なドヤ顔を見せてくれた。
「おーい由鶴〜! 翼さーん! 私飛んでますよー!」
「ええっ!? 何それー!」
「降りてきてくださーい。目立ちすぎです」
「はーい」
あはは、なんか楽しいスキルゲットしちゃったな〜