013 由鶴のイベント戦:後編
額に蓄えられた汗が、頬を伝う。
3人と向かい合って、アタシは逆に開き直ったように冷静だった。
「息子たち、復讐の時よ!」
「そうだよママ!」
「やってやろう!」
一方、復讐に燃える【中山家】は、その士気を高めていた。
不利な状況……でも、やるしかない!
「エネルギー弾!」
乱射はしない。ただでさえHP管理が難しい職業なのに、1対3で無駄撃ちしていたらバカの極みだ。ここは一つ一つを丁寧に、撃つ!
「残念ねお嬢ちゃん! ここは深い森の中。あんたのフィールドじゃないのよ!」
アタシが丁寧に狙った弾のほとんどが木に吸収されていく。その上1人はめちゃくちゃに速い。これじゃ当てようがない……!
HPは残り4割。ポーションはあと1個。打開策を早く見つけないと負ける。わかってるんだけど、何も思いつかない!
「ぐっ……」
諦めるな考えろ、何か……何かあるはずだから!
…………これしかないか!
思いついたのは一つの作戦。ただ、あまりに成功率が低い上に大きなリスクまであった。
でも、やるしかない。針の穴のような確率でも、狙わなければ当たることはないんだから!
「武装変換:スナイパーモード」
「あはは、血迷ったようだねぇ!」
「さぁ、どっちの運が良いか試そうじゃない!」
「は、はぁ!?」
アタシは狙撃銃であえて奴らが隠れ蓑にしている木を撃った。
スナイパーモードになるとエネルギー銃弾の貫通力は格段に上昇する。だから木くらいなら余裕で貫通するわけだ。
「ママ〜! 腕が……腕がぁ!」
「が、我慢しなさい! あの小娘ぇ〜!」
「もう1発!」
同じ木に、もう1発スナイパーモードで撃ち抜いた。【中山家】は貫通攻撃を狙っているように思っているみたいだけど、真意は違う。
私の狙いは……
「ママ! この木倒れちゃうよ!」
「くっ、はやく避難を!」
「逃がさない!」
少しでも体を木から出したら狙撃する。
悪いけど、もうアタシの狙いにハマっているんだから!
やがてミシミシという音と共に、巨木が傾き始めた。
ダメだ……まだ完全に折れるには足りない!
「最後の……1発!」
撃ち抜いた最後の1発も真っ直ぐに飛び、木の下部をほとんど削り取った。これにより、倒木に拍車がかかる!
「う、うわぁぁ、ママぁぁぁ」
「くそ、くそぉぉ! 覚えていろよ小娘ぇ!」
「はぁ、はぁ……あーーーー、もう絶対終わったと思った」
アタシは草の上も厭わずに寝転んだ。
我ながら1対3で勝てるとはね。諦めない心、やっぱりアタシの信念にはいつも、小雛がいるんだなぁ。




