011 小雛のイベント戦:後編
「プレゼント・フォー・ミー!」
白い袋から何かを引き抜く!
袋から現れたのは、ダガーナイフと呼ばれる小さな剣だった。
ステータス……スピードが上がってる! もしかしたらこれって、制限時間付きでアサシンみたいな職業を体験できるのかも。
「へぇ、ダガーなんて出してくるんだ」
また「面白〜い」という金髪少女は笑ってみせた。
その余裕、今になくしてあげるんだから!
白い袋をしまって、ダガーを逆手に構えた。
「やあっ!」
強く地面を蹴って、木に飛び移る。隣の木へ、また隣の木へと移って金髪少女の目線を混乱させる。
なぜこんなに慣れているかって? 私、別のゲームでアサシンの職業やってたことあるんだよね。
「ふふ、ざんねーん」
「なっ!?」
金髪少女に最も近い木に飛び移った瞬間、木から魔法陣が現れた。
やばい……避けきれない!
ドンっ!
「あははは、私の勝ちかな?」
「どうかな?」
「っ!?」
煙に隠れての奇襲。逆手で持ったダガーは金髪少女の頬に食い込み、流血エフェクトを出させた。
「何で生きて……」
「魔法陣の下に潜り込んでダメージを最小限に抑えたの。それでもHPの6割は持ってかれたけどね」
同様に金髪少女のHPも6割ほど削ることができた。これで五分五分かな。むこうは貼った罠を一つ消費して、こっちはダガーが時間制限で消えた。
「……工藤ユナ」
「え?」
「私の名前。お姉さんとはこれからも因縁ありそうだから」
「そっか。私は佐々木小雛」
「……可愛い名前」
「ありがとう」
私はもう一度、白い袋に手を突っ込んだ。
ここで引くアイテムが、おそらく勝敗を分ける。お願い……私に力を!
白い袋から何かを引き抜いた。すると右腕に力が集まる感覚を味わう。
「なっ……何これ!」
慌ててメニューの『マイ・キャラクター』から状態を確認した。
【悪魔の右腕】……? 攻撃ステータスが意味わからない数値になってる! それに見た目も腕が黒い鎧みたいなのに包まれている。とにかくかなりの力が内包されていそうだ。
「ひひっ、お姉さんマジやばいね」
「その顔、まだトラップは仕掛けてあるのかな?」
「さぁ、どうかなぁ?」
試してみれば、いいこと!
私はもう一度強く地面を蹴って、ユナに向かって走った。
ユナは後退りするけど、悪魔の右腕を持つ私はスピードステータスも向上している。
「はぁぁぁあ! 悪魔の右腕!」
「かかった! トラップ発動!」
「なっ!? 自分に!?」
ユナは自分のお腹に罠を仕掛けていたようだ。魔法陣がユナの体を包み、そのまま発光を始める。
やばい、巻き込まれる……これじゃどっちも死んじゃう……!
ドン! と激しい音が鳴り、目の前で大爆発が起こった。
ユナはその場から消え去った。おそらく自爆してHPが0になったんだろう。
私は……悪魔の右腕が盾になり、なんとかHPが2割だけ残っていた。
「はぁぁぁぁ、しんど……」
実力も大事だけど、運要素がかなり強い。
このゲームで勝ち抜くの、結構難しいかもなぁ。
「由鶴と翼さん、大丈夫かな?」
私は遠くの空を見つめた。