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009 打ち上げとイベント

「というわけで、第一回ギルド戦……お疲れ様でしたー!」

「お疲れ様ー!」

「お疲れ様でした」


 第一層にひっそり佇むカフェ「Birds」にて、私たちはジュースで乾杯をした。


「いや〜、あのロボット強かった〜。小雛の引き運に助けられたよ」

「いやいや、由鶴のひらめきでしょ! 私のアイテムなんてハズレばっかりだったよ……」


 木の薄っぺらい盾と雑巾を絞ったような汚水。とてもゲーム的に当たりアイテムとは言えない。それでも勝利に導けたのは、由鶴のひらめきと翼さんの状況判断能力の高さだ。


「違います」

「え?」

「あ、すみません。えっと、ロボットに勝てたのは……小雛さんの……」

「諦めない心、ですよね?」

「は、はい! それです」

「翼さん……」


 そうか、別に私以外のおかげって考える必要はなかったんだ。だってエリア1は、Phoenixの3人で獲得したんだから!


「それにしても見た? ギルド戦のランキング表」

「見た見た! 信じられないよ」


 そう、ギルド戦終了後すぐに運営からギルド戦の結果が発表された。

 1000あるエリアの内、初回の昨日で985エリアが獲得されたらしい。本当にプレイヤーの多いことだと思う。

 そこも驚きだったけど、何より驚いたのはエリア獲得ランキング表だった。


 1位 54エリア 『滅びの国』

 2位 21エリア 『燦々(さんさん)ミソロジー』

 3位 17エリア 『(おとこ)

 4位 15エリア 『Bad Cats』

 5位 12エリア 『東京ファンタジー』


「たったの2時間で54エリア獲得。まじで何者なの……」

「私たちからしたら複数エリア獲得しているだけで意味わかんないよ」

「なんにせよ、頂点を目指すのならライバルとなるでしょうね」


 この上位ギルドとは、いずれどこかで戦うことになりそうだ。でもまぁ、今はそんなこと考えなくていっか。

 呑気にアップルパイにフォークを刺した瞬間、ピコン! という音と共にメッセージが届いた。


『第一回イベントについて』


「い、イベント!?」

「へぇ、ついに来たね」

「……どんなイベントでしょうか」


『第1回イベントは個人戦になります。ルールは以下に記します。


 ・制限時間は60分

 ・場所はイベントステージ

 ・一度HPが0になったプレイヤーは敗退

 ・最後まで生き残るorすべて蹴散らせば勝利!


「わ、わかりやすいルール!」

「とにかく相手を倒して勝て! ってことだね」

「……いえ、そういうわけじゃないかもしれません」

「え?」


 翼さんが顎に手を当て、考えるように呟いた。その顔、美しすぎます!


「どういうことですか?」

「生き残ることも勝利に含まれるのなら、ハイド戦法……つまり戦わずして勝つことも可能かと」

「確かに! 例えばヒーラーみたいな攻撃手段がない人でも勝てる要素がないと不平等ですもんね」


 よく考えられているなぁ。まぁ当たり前なのかもしれないけど。

 えっとなになに……勝者には『あなたに見合ったスキルをプレゼント』


「えっ! 勝ったらスキル貰えるの!?」

「やるしかないね、小雛!」

「うん! 運ゲースキルだけだとしんどいからね」

「私も参加します。今回は私たちPhoenixで出会っても戦闘は行わないということでいいですか?」

「「もちろん!!」」


 Phoenix内で争っていても仕方ないからね。……うん? 待てよ……


「ねぇ、これってみんな戦わずに何もしないで1時間過ごせば良くない? そうすればみんなスキル貰えるじゃん」

「甘いよ小雛。例えばライバルギルドのメンバーにスキルが渡ろうとしていたら、小雛はどうする?」

「そりゃあなんとかして止めたいけど」

「でしょ? だからリスクを負ってでも戦いに来る人は絶対にいる。しかもほとんどが戦う派だと思う」

「うわっ、警戒しないと……」


 どうしたものかな〜と思いながら、乾燥してしまったアップルパイをお腹に流し込んだ。






 とあるギルド溜まり場。

 玉座に座するは、姫を思わせる桃色髪の少女であった。


「姫殿下、イベントの詳細が出ております」

「わかった。下がりなさい」

「はっ!」


 ギルドメンバーを下僕のように扱い、彼女は微笑んだ。


「ふっ、なにこれ。また私たちに勝てといっているようなものじゃない」

「まったくでございます。真紀(まき)お嬢様の勝利は確実でしょう」


 玉座の隣に直立する執事服の初老の男性は、あくまで真紀という少女を肯定する。


「ええ、とても気分がいいわ。そうだ、貴方も戦いなさいよ。一応職業は【バトル執事】でしょう?」

「よろしいのですか? わたくしの実力は当分隠せとのご命令でしたが……」

「構わないわ。ギルド戦でも2位とはダブルスコア。私たちに勝てる勢力なんていないのよ」

「かしこまりました。この斉藤、久しぶりに暴れて参ります」

「ええ、頼んだわよ」


 少女の名は御陵院(ごりょういん)真紀(まき)。17歳にして、マイ・ナンバー・オンライン最大のギルド『滅びの国』のリーダーである。


「さぁ、蹂躙と行こうじゃない!」


 目を見開き、真紀は両腕を広げる。

 その様を見て、部下たちは一斉に喝采の音色を奏でた。

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