プロローグ1 マイ・ナンバー・オンライン
「出会いがなーい」
「もう、小雛はそればっかり」
モニターに映る親友、黒川由鶴は私を宥めるように「まぁまぁ」と言う。由鶴の「まぁまぁ」は、もう耳だこだ。
私……佐々木小雛は自他共に認めるレズビアン。残念なことに、学校でその噂が広まって避けられ気味だ。だから学内恋愛は諦めている。
「この世のカップルってどこで出会うのー?」
「さぁ? アタシだって恋人いないし? フリーだし?」
由鶴はなぜかフリーであることを強調してくる。自虐なのかな? いじった方がいいかな?
私がそう考えているうちに、由鶴は長い茶髪を触りながら何かを思いついたような表情になった。
「あ、でもでも共通の趣味から親しくなるってのは聞いたことあるかも」
「共通の趣味かぁ、んーーーー」
私の趣味って言ってもアニメか、漫画か、ゲームくらい。どちらかといえば男性社会だ。
「小雛ゲーム好きでしょ? ならあれやろうよ! ほら話題の!」
「あー、マイ・ナンバー・オンライン?」
マイ・ナンバー・オンライン。現在世間を騒つかせている明日発売のゲームだ。今では当たり前になったフルダイブ型のMMORPGだけど、革新的なのはマイナンバーを使う点。
「すごいよねぇ、マイナンバーを使って1人に1つ、唯一無二の職業が与えられるなんてさぁ」
そう、このゲームが話題になったのはその唯一無二性にあった。
普通のゲームでは10個くらいの職業の中から自分が選んで戦うけど、マイ・ナンバー・オンラインでは初回ログイン時に職業が決まっているみたい。それもマイナンバーに紐付けされて、他人と被らないって言うんだから驚きだ。
「すごいけど、怖くない? だって由鶴の職業が『バーテンダー』とか『カメラマン』とかだったらどうするのさ」
「それはそれで気になるけど……まぁどんな職業でもやりようがあるって!」
「んー……」
私は変な職業を引いたら泣く自信がある。マイナンバー登録だからいわゆるリセマラもできないしね。さらに親のマイナンバーを使うっていう裏道もできない。なぜならこのゲームは実名・実の顔でプレイしなければならないから。
一昔前だったら炎上ものだっただろうなぁ。お母さんが高校生の頃はSNSに顔を出すのもまだ抵抗ある時代だったらしいし。
「っていうか出会い目的ならマイ・ナンバー・オンラインが最適だって! だって実名と顔もわかっちゃうんだよ? ネカマ率0%だよ!」
「た、確かに!」
盲点だった!
「やってみようよ。あと1時間ちょっとで日付変わるし、今のうちにダウンロードすれば0時にログインできるって!」
「うーん……わかった! やってみる!」
「さすが小雛! じゃあ0時になったらログインして、自分のキャラ確認ができたらゲーム内メッセージ送るから合流ね」
「うん! よろしくね、由鶴」
「うん。じゃあ早速」
「ダウンロードだね!」
私と由鶴は、同時にストアからマイ・ナンバー・オンラインをダウンロードした。
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