第六十九話「瞬殺決着」
「ところで、だ。なぁ、『死骸蟻団』の。なぜ、今になってお前らが賢者の石を追う?『黄昏の黄金血統』と袂を分かったお前らが、今更どういう風の吹き回しだ?もはや神を信じぬ背信者どもが何を企む?」
グレナ・ガームは長大斧を肩に引っ提げ、眼前の敵に挑発的に問う。
「天使召喚による神性との合一などという計り知れない神秘主義を掲げるロマンチストの貴様らより、我らが団長は魔術的実証主義を信条とするリアリストだ。わかりあえるはずもない。それに、我らの望みは貴様らよりはささやかなものだ」
「お前らが言うささやかな望みなど、そうロクでもあるまい。どうせ死者蘇生くらいのことは考えているのであろう。でなければ、賢者の石も魔力場の特異点も必要ない。なのに、この場にお前がいるということは、そういうことなんだろ?」
グレナは見透かすように半眼でランスロットを睨み付けた。
「そうさ。我らが悲願は、ある人の蘇生に他ならない。ナニモノをも犠牲にしても生き返らせたい人がいる」
その言葉には強い決意が秘められていた。
「いいねぇー。そういう熱さは嫌いじゃない。だが!俺たちも自分たちの信念を譲るつもりはない!だから、お前はここで俺が排除する!」
長大斧を片手で振り上げると一閃!グレナは大地を割った。しかし、その場には既にランスロットはおらず、後方に飛び退いており、左手の宝珠から雷撃呪文を放っていた。
「ライトニング・フレアッ!!」
螺旋状に火炎を纏わせた雷撃が地を這う蛇の如く、グレナを襲う。
そして、直撃!盛大に炎と電撃を撒き散らして爆裂す。けれど、そこには無傷のグレナがニヤリと笑みを浮かべて立っていた。
「その程度の魔法など効かぬ」
「ならば、斬り裂くまで」
と、ランスロットは表情一つ変えず、右手のソードによる斬撃を浴びせかける。
グレナは避ける素振りさえ見せず、長大斧を真横に振りかぶる。
ランスロットの無数の斬撃がグレナの身体を斬り裂く。否!ランスロットの斬撃は、その一つすらグレナの肉体を傷付けるものではなかった。
逆に、グレナの真横からの長大斧の一撃をまともに喰らったランスロットの上半身が、下半身をその場に残し、凄まじい血飛沫を上げて吹っ飛ぶ。
ベチャッ!と嫌な音を響かせて、ランスロットの上半身が近くの木に叩き付けられ、地面へと落ちた。
即死だった。
「馬鹿め。最初から全力で来ず、試すような戦い方をするからだ」
グレナは心底つまらなさそうに呟いた。
彼の凛気転式は単純明快な能力であった。その名も『最強度硬質化』。自身の肉体とその手に触れる武具を最大限まで硬質化する能力。硬質化された肉体は、炎や雷撃などの物理魔法を通さず、斬撃などの物理攻撃も同様に一切通さない。そして、また最大限に硬質化された長大な斧を、人間離れしたそのバケモノ並の膂力で一気に振り抜き、全身全霊の会心撃で敵を屠る。
完全にランスロットはグレナの戦術にハマり、実力を出す前に一瞬にして葬り去られたのであった。
グレナは長大斧の血を払うと、ランスロットの死体を一瞥もせず、ミレニアルとリアンたちを追うために、その場から走り去っていった。




