表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/82

第四十七話「元魔王、巻き込まれる」

 翌日。【風の凪亭(なぎてい)】において、朝食をとりながら、レカイオンと話すガイ。


「アリシアはまだ寝てるの?」


「昨日の今日だからな。心の整理もあるだろう。ただ変な負い目を感じてなきゃいいが」


 朝から食欲旺盛なガイは、ガツガツと二人分の朝食セットを軽く平らげながら、普段と変わらぬ様子であった。


「ガイはあれで良かったの?」


「どういうことだ?」

 レカイオンの質問に食べる手を止めて、ガイは聞き返した。


「最初の老人以外は、向こうの人たちに害意のようなものはあまり感じなかったけど」


「……………………」


 そう言われてみれば、ガイの魔剣の査定についても、逆にやや高いくらいで、適正といえば適正な鑑定であった。


 会頭が会話の端々(はしばし)でマウントを取りにきていたが、悪意という程ではなかった。


 帰った後も、嫌がらせなどあるかと警戒していたが、それもなかった。


 あのときはアリシアのことで頭が一杯だったので、他のことに一切気が回らなかった。今、レカイオンに指摘され、よくよく思い返してみたら、そうかもしれないと思い当たる。


「昨日は、いつものガイらしくなかったね。アリシアのことが余程(よほど)心配だったんだね」


 虚勢で余裕を(よそお)ってはいたが、アリシアを取り戻すことに必死で、周りが見えていなかったのは確かだった。


 最悪、リックワース商会のヤツらを皆殺しにして、アリシアと街を出ることも考えていた。


「視野が(せま)くなっていたのは事実だな」


(しかし、何の目的があり、ヤツらは俺たちに接触してきた?アリシアを取り戻すのが目的なら、もっとゴネているはず。そうすんなり帰すわけがない。金か?いや、そんな短絡的なことではあるまい。だとしたら、アリシアを盾に俺を取り込もうとしたと考えるのが妥当(だとう)か。けれど、何のためだ?)

 そんなことを考えていると、隣の大工職人風の男性客二人が話している内容がふと耳に入ってきた。


「聞いたか?昨晩遅く、北地区にある奴隷商の商館が火事で、結構な人数亡くなったって話」


「リックワース商会の商館だろ。奴隷商なんて因果(いんが)な商売してるから、バチが当たったんじゃねぇの?」


「色んな所で恨み買ってるってウワサだしな」


「非合法なトコからも、獣人や亜人を買い付けて来たりしてるって聞いたぜ」


大市(おおいち)の奴隷オークションで出すことになってた、奴隷たちも輸送中、魔物に襲われて全滅したって話だし、踏んだり蹴ったりだな」


「何人かは助かって、オークションに出品されるって、オレは聞いたが……」


「まぁ、奴隷なんて維持費もかかるし、貴族様でも財産家でもない、オレら一介(いっかい)の小市民には関係ねぇけど。まぁ、火事と聞いてざまぁと思ったけどな」


「ははは。同感同感。あくどいことして(もう)けてるヤツの不幸話は聞いてて楽しいよな」


 (くち)さがないおっさん同士の会話である。品も配慮もない、でかい声での。別にそれをどうこう言うつもりもない。内輪(うちわ)の話のノリというものだと理解できるくらいの分別はある。


 だが、内容は実に引っかかりを覚える、非常に気になるものであった。


「行って来たら?気になるんでしょ?あたしが昨日の事、蒸し返しちゃったばっかりに。アリシアにはあたしからうまく言っておくし」


「その必要はない。気になるもクソもなく、どうやら(すで)に巻き込まれているようだ」


「……そのようね。殺気がダダ()れね」


 レカイオンの瞳が冷たい色を()びた。立ち上がり、振り向いたときには、腰の剣は抜き放たれ、二人の喉元(のどもと)目掛けて投げられた匕首(ひしゅ)を叩き落としていた。


 その落ちた匕首(ひしゅ)を拾い上げると、すかさずガイが投げ返した。同時に、レカイオンはもう一本の腰の剣を(さや)ごとガイに投げ渡すと、(おもて)に駆け出した。ガイもそれに続く。


 朝の通りは、安息日のためか、(さいわ)い人通りはほとんどなかった。通りの石畳(いしだたみ)に真新しい血痕が続いている。


 二人はそれを追う。


 血痕は路地裏へと続く。二人を(さそ)い込むように。おそらく待ち伏せされているだろう。


 けれど、二人は躊躇(ちゅうちょ)せず、路地裏へと駆け込む。


 (あん)(じょう)、正面から二人と頭上から一人が匕首(ひしゅ)を投げながら、襲いかかってきた。


「レカイオン、殺すな!」


 こくりと(うなず)く動作が見えた。


 匕首(ひしゅ)をたやすく白刃で(はじ)くと、頭上から短剣を抜いて(せま)り来る一人を紙一重(かみひとえ)(かわ)すと、(さや)でその横っ(つら)をぶっ叩く。

 そして、正面の二人へと突っ込む。白刃を逆刃(さかば)に、(さや)との二刀流で正面の二人も難なく()す。


 ――――も、打撃が甘かったか、正面の一人が魔法筒(マジックスクロール)を自分たちとレカイオンの間に放り投げた。


 激しい爆発が起こった。


「レカイオン!!」


 もうもうと砂塵(さじん)が巻き起こる。


「……大丈夫。流絡纏剣(りゅうらくてんけん)で爆風ごと衝撃を吸収したから。けど、二人はばらばら」


 魔族特有の瘴気(しょうき)を魔力のような力に転化し、固有技能(ユニークスキル)顕現(けんげん)させる能力――――瘴気転式(デビルズコード)。レカイオンの瘴気転式(デビルズコード)流絡纏剣(りゅうらくてんけん)』は、剣で受けた魔法や物理衝撃を吸収し、その力を蓄積したり、剣撃に乗せてその力を自在に放出し、自身の攻撃に転換できる技能(スキル)であった。


「まぁ、ここにまだ一人、伸びてるヤツがいるが、俺たちが直接話を聞くのは無理そうだ」


 騒ぎを聞きつけた、近くを巡回していた警察隊の連中がすぐに、二人のいる路地裏に駆けつけてきた。


「一体、なんの騒ぎだ!」


「俺たちを襲ってきた奴らを追いかけ、逆に追い詰めたら自爆しやがった。こいつはその生き残りだ」

 と、ガイは黒い覆面のいかにも怪しい姿の男を、警察隊に突き出す。


「あっ!これは、大賢者殿!」

 警察隊の面々が敬礼をする。


 レカイオンが突然、大きな声を出した。

「ガイ!!もしかして、これって陽動じゃない!?」


「アリシアっ!!」


 二人はあわてて【風の凪亭(なぎてい)】へと戻る。三階の逗留(とうりゅう)している自室へと駆け上がり、扉を開けると、部屋はぐちゃぐちゃ、争った形跡が……。


 壁には匕首(ひしゅ)でメモが貼り付けられていた。


 そのメモにはこう書かれていた。

狐人族(こじんぞく)の娘は預かった。今夜一時に西の城壁外、カッソールの丘にある一本木まで、()()()()()()()()()()()()を持って来い。さもなくば娘は殺す』

【作者からのお願い】

「面白い」「続きが読みたい」「先が気になる」なんて思われる方がいましたら、下↓にある☆にチェックを入れて頂けると、とても励みになります!よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ