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第四十三話「元魔王、出掛ける」

 翌朝、目覚めると、アリシアとレカイオンがベッドに(もぐ)り込んでいた。


「レカイオン、お前まで……」


「ガイ、おはよ」

 寝ぼけ(まなこ)をこすり、レカイオンが上半身を起こすと、巨大な二つの(ふく)らみが屹立(きつりつ)する。シャツ一枚の薄着だと、改めてその大きさが際立(きわだ)つ。


 また、普段のポニーテールではない()ろし髪のレカイオンは、いつもの雰囲気と違って、アンニュイな可愛さがある。


「俺だって男だぞ。下手(へた)したら一夜の(あやま)ちなんてことも。だから、自分のベッドでちゃんと寝ろ」


「あたし、ガイとならいいよ」

 上目遣(うわめづか)いに見つめてくるレカイオンは、まさに小悪魔チックな妖艶(ようえん)さで、理性が飛びそうになる。


「からかうなよ。さぁ、起きた起きた。アリシアも!」


「……あたし、本気なのに」


「あ、師匠!おはようごじゃいます」


「寝ぼけてないで顔洗って来い」


 カーテンを開いて入ってきた朝の光に、三人は目を細めた。


 ギルドから程近い【風の凪亭(なぎてい)】という宿に逗留(とうりゅう)していた。


 不意に、ノックの音が響いた。


「誰だ?こんな朝っぱらから」


「俺だ。ガルフだ。ギルマスからの使いで来た」

 扉の向こうで、ミスリル級冒険者パーティー【銀馬蹄(ぎんばてい)】リーダーのガルフの野太い声がした。


 寝起きでシャツとズボンしか()いてないが、男ならいいかと、ガイは扉を開いて廊下に出る。


 今日は重苦しい甲冑姿(かっちゅうすがた)ではなく、ガルフは普段着であった。


「寝起きのところ、すまんな」

 ガイの寝癖(ねぐせ)を見て、ガルフが言う。


「問題ない。何かあったか?」


「勘がいいな」


「ギルマスの使いなら普通シュリを寄越(よこ)すだろうからな」


「まぁな」


「で、用向きは?」


「一つは訃報(ふほう)だ。昨夜、ミレイ・エセルバ騎士団長が亡くなった。ギルマスは責任を感じて ひどく落ち込んでいて、シュリ・シュナ嬢が付いている。だから、俺が来たというわけだ」


「そうか。多少だが面識(めんしき)はあったから、葬儀には参列しよう」


「葬儀はローゼオン教会の共同墓地で本日二時から()り行われる」


「わかった」


「あと、探索の依頼完了報酬と今回の特別報奨金が出ているから、都合のいいときにギルドへ受け取りに来てくれってシュリ・シュナ嬢からの伝言だ」

 簡潔明瞭にガルフは用件だけを手短に伝えた。


「了解。ありがとよ」


 ガイの礼に、ガルフは反応を示さず、その場に立っていた。


「まだ何かあるのか?」


「……たいしたことではないかもしれんが、ギルマスが倒した女魔族の死体がどこを探しても見つかっていないという話でな。一応お前の耳には入れておくべきかと判断した。まぁ、戦闘のどさくさで分からなくなったか、仲間の魔族が弔ったのかだろうと思うが、念の為な。ギルマスが首を撥ねて倒したと言っているから問題はないと思うが」


「そうか。頭の隅には置いとくよ。使いっ走りみたいな役目、悪かったな」


「いや。たいしたことではない」


 そう言うと、ガルフは後ろ手を振って、ギシギシといわせながら階段を降りて行った。


 薄情かもしれないが、何度か言葉を交わした程度なので、ミレイが亡くなったことは残念とは思うが、正直そこまで何も感じなかった。


 部屋に戻ると、まだベッドでアリシアとレカイオンはうねうねしていた。


「俺は色々用ができたから、今から出掛ける。今日はお前たち二人で好きに過ごしてくれ。夕方には戻る」

 と、ガイはアリシアに大金貨二枚を指で(はじ)いて渡す。


「大金貨!?ニ枚も!」


「一人一枚ずつな。色々頑張ったから、そいつで散々(さんざん)無駄使いして来い。使い切れよ。残したらバツゲームな」


「え、えー!!こんな大金、一日で使えないよ!」


「ダーメ!ちゃんと使って来い。ミッションだ。明日にはちゃんとした探索の依頼完了報酬も渡すからな」

 ガイは靴下を履きながらそう言う。


 アリシアは目が覚めたか、大金貨を前に正座して、真剣な表情で腕を組み、(うな)り出した。


「それより、用って何?ガイ!」

 レカイオンはガイの用向きの方が気になるのか、立ち上がってはグイッと顔を近付け、束縛する彼女のような聞き方で聞いてくる。


「顔が近い。これからギルド行って報酬を受け取って、昼からは、騎士団長が昨日の戦いで亡くなったそうだから、その葬儀に参列することになった。お前たちには面識(めんしき)もないし、退屈だろうから、俺だけで行くことにした」

 コートを羽織(はお)りながら、レカイオンの目を見て、ありのままをそのまま伝えたら、納得したのか、


「うん、わかった。今日はアリシアと一緒に過ごす。晩御飯は一緒に食べてほしいから、ちゃんと夕方には帰ってきてね」


「ああ、約束しよう。今日はいい天気だし、二人も街を楽しむといい。それじゃあ、また夕方な」


「うん、いってらっしゃい」


「師匠、いってらー!」


 二人に見送られ、ガイはギルドへ向かった。道すがらどっかの店か屋台で朝飯でも食うかと考えながら。

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