表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/80

第三十七話「元魔王、お姫様抱っこする」

「アリシア!レカイオン!」

 ガイは二人のもとに駆け寄る。


「あたしは大丈夫。たいした怪我じゃない」


「良かった」


「うん」

 レカイオンは嬉しそうに(うなず)いた。


「でも、アリシアはひどい怪我。両手が骨折してて。あと、軽い脳震盪(のうしんとう)で力が入らないみたい」


 ガイが来るまでの間に、レカイオンが添え木をしてくれていた。両腕を双剣の(さや)で固定されているアリシアが、地面に寝かされていた。


「師匠……」

 アリシアが口を開く機先を制し、ガイが謝る。

「すまない。さっきので魔力を使い果たした。今は回復魔法が使えない……」


「ううん。大丈夫。骨折は日が経てば治るから。師匠、さっきの技、(すご)かったね」


「ああ……」

 ガイはバツが悪そうに鼻の頭を()いた。


「……でも、恐いからもう使って欲しくないかも。助けてもらったのに、こんなこと言ってごめんなさい」

 そう言って、アリシアはガイから顔を(そむ)け、謝った。


「ああ、もう使わん」


 しばしの沈黙。


 でも、ガイには言わなければならないことがある。


 意を決し、ガイは言った。

「……アリシア、黙っていて悪かった。俺は魔族なんだ」


「そんなのはどうでもいい……」

 そっぽを向いたまま、アリシアはぼそっと言った。


 思っていた反応と違い、

「どうでもって、俺は魔族なんだぞ!」

 と、よくわからないことを口走る。


「だから何?魔族だからって、今までの師匠と何が変わるの?」


「ぶっちゃけ別に何も変わらないけど……」


「前に、私が尊敬する人が言ってた。『……人の中にも嫌なヤツもいれば、魔族の中にも気の合うヤツもいる。種族なんてどうでもいい』って!

 それより私が怒ってるのは、レカイオンは知ってたみたいなのに、どうして、私が聞かされてないってこと!私の方が先輩なのに……」

 涙目でガイを(にら)んで、アリシアが(ほお)(ふく)らませる。目一杯(めいっぱい)木の実を頬張(ほおば)ったリスみたいだ。


「へ?」


「アリシア、いじけてる」

 ほんの少し口角を上げて、レカイオンが言った。


 アリシアの視線に気付いて、ガイがレカイオンの顔をちらりと見るも、そこにはいつもの無表情があるだけだが、アリシアにはその表情の違いがわかるからこそ、腹立たしかった。

(今、すんごいドヤ顔してるぅぅぅ!!)


「お前、()()()()()()そっぽ向いてたの?」

 朴念仁(ぼくねんじん)が火に油を注ぐようなことを言う。


「師匠のばかあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 耳がきーんとする。


「まぁ、黙っていたのは謝る。すまなかった。レカイオンは同じ魔族だから、俺が魔剣を使ってたからすぐに気付かれただけだ。けど、それだけ元気があれば大丈夫だな。ほっとした」


 ガイはアリシアの頭をワシワシと乱暴に()でると、ひょいとアリシアを抱え上げた。いわゆるお姫様抱っこというヤツだ。


「え、え、え?師匠……」


 相変わらず無表情だが、レカイオンがすごく(うらや)ましそうにしているのを見て、ちょっぴりアリシアの気分は晴れた。


「全くお前は無茶ばかりして。心配させんな。とりあえず回復魔法使えるヤツに()てもらおう」


「うん」

 ガイの分厚い胸に顔を(うず)めて、アリシアは満足気(まんぞくげ)に微笑む。そして、レカイオンにドヤ顔のお返しをする。


 レカイオンの右眉が跳ね上がる。悔しそうだった。


 ちょうどそのとき、ラーサムたち三人がやって来た。

「探しましたよ、ガイさん!」


「ガイ様、無事に出られてホント良かったです。一時は皆、殺されちゃうと思ってましたから」


「そちらは?」

 ミカナがアリシアとレカイオンを見て、(たず)ねる。


「俺の仲間だ。さっきの魔族との戦闘で怪我をしている。俺は魔力切れなんで、回復魔法の使えるヤツの所に案内してくれないか」


「もちろんです!」


「空間収納も使えないんで、そこの黒剣を一緒に運んでもらえると助かる」


「了解っす!このラーサム、責任もって運ばさせてもらいます!」

 と、意気揚々とラーサムが黒剣の(つか)に手をかけるも、全く持ち上がらなかった。


 柄と分厚い刀身を腕で抱え上げるように、ちょうどお姫様抱っこの要領で、額に青筋(あおすじ)立てて、ラーサムがなんとか持ち上げる。


 けれども、他の連中は彼のことなど気にもせず、さっさと移動し始めていた。

【作者からのお願い】

「面白い」「続きが読みたい」「先が気になる」なんて思われる方がいましたら、下↓にある☆にチェックを入れて頂けると、とても励みになります!よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ