表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/80

第二十三話「元魔王、ケツを捻り潰される」

「どうして、レカイオンは当然のように師匠と手を組んで歩いてるのよっ!」


 五月に近付き、日も伸びてきてまだ明るかった。


 なので、少しでも早くアリアブルグへ戻るため、もと来た道を辿(たど)り、歩いていた道中のことである。


「だって、あたし、丸腰(まるごし)だから、ガイの近くにいないと危険」


「だからって、デートみたいに手を組む必要はないでしょ!」


「暗くなってはぐれても大変。手をつないでた方が安全。合理的な理由」


 抑揚(よくよう)のない、平坦な声で言う割には、(ほお)だけはほんのりピンク色をしているレカイオン。


「師匠からもなんとか言ってよっ!」


「ガイもイヤじゃないでしょ?」

 凶悪なまでの柔らかさをガイの腕に押し付けて、レカイオンは言った。


「え、ま、まぁ……エスコートくらいはも、問題ないかな」


 アリシアの言う通りの隠れ爆乳だと、ガイは腕を通して深く理解した。


 完全に鼻の下が伸び切っていた。


「ぎょえあ!!ケツがぁー!?ケツ、もげたー!?」


 アリシアが全身全霊でガイのケツ肉を(ひね)(つぶ)す。


 ガイはその場でケツを押さえて、地面に倒れ()す。


 どうやって捻ったら、これほどまでの激痛を与えられるのか?世界七不思議の一つだと、ガイは思った。


「ガイ、大丈夫?」

 無表情なレカイオンが、ちょっぴり頬を紅潮させて、顔を(のぞ)き込んでくる。


 思ってる以上にレカイオンが可愛すぎる件だ、これは。しかし、この件にしっかり対処せねば、このままではケツがなくなる。もはや半分取れかけてる気さえする。


「ごほん」

 変な咳払(せきばら)い一つして、


「護身用に武器はあった方がいいな。何かいいのはあったかな?」


 ガイは起き上がって、虚空(こくう)に手を突っ込んで、空間収納のアイテムボックスから、二振(ふたふ)りの剣を取り出す。


「こいつは水精(すいしょう)の加護を受ける連星剣だ。双剣を扱うレカイオンにぴったりの剣だろ。(つか)の先にある水晶の青が濃い方がリチュア、薄い方がレポアという名をしている」


「ガイ、ありがとう」


「良かったね、レカイオン。これで師匠の手をずっと握らなくてよくなったね」

 アリシアが皮肉()じりな笑顔で言うと、


「別に危なくなくても、手を(つな)いだらダメってワケじゃない。さ、行こ。ガイ」

 と、レカイオンは連星剣を腰に差すと、どこ吹く風で、ガイの腕に手を(から)めて歩き出そうとする。


「じゃあ、私も!!」

 負けじとアリシアがガイの反対の手を握る。


 なんかバチバチ(にら)み合ってるんですけど……。恐くて何も言い出せずに、ガイは両手に花で歩いていく。


 しばらくして、レカイオンがぼそりと(つぶや)く。


「……あたし、ずっとガイと一緒にいられないかも。あたし、魔族だから、額に角あるし、人の街には入れない」


「そのくらいの角なら、鹿人族(かじんぞく)で通せば大丈夫よ。鹿人族の女性や子供には、あなたと同じくらいの角を生やした人もいるから」


 アリシアはツンと横を向きながら言った。 


 これぞ、教科書のような、見事なツンデレ!とガイは思ったが、口にした途端(とたん)、ケツを永遠に失うような気がして、あえて黙っておくことにした。


「アリシア、教えてくれてありがとう」


「べ、別にレカイオンのためじゃないし!師匠が優しいから、あなたが街に入れないと困るだろうと思って、言っただけだし」


 口を(とが)らせるアリシアもなかなか可愛いところがある。


「アリシアは優しいな」

 と、ガイはアリシアの頭をもふもふと()でた。


「師匠、ふふふ」

 くすぐったそうにしていたが、アリシアは笑顔で、ガイに撫でられるままにしていた。


 それを(うらや)ましそうにレカイオンが見ていた。


 そうして、三人はアリアブルグへの帰途(きと)を急いだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ