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第十九話「元魔王、探索を継続す」

「二人とも無事か?」


「……死ぬかと思ったわよ。一瞬、川向(かわむこ)うのお花畑でおばぁちゃんが手を振ってるのが見えたわよ。見たことも会ったこともないけど」

 シュリが(のど)をさすりながら、鼻血を(ぬぐ)ってぼやく。


「誰だよ、そのばぁさん」


「知らないわよ」

 喉には手の形の青痣(あおあざ)が残っていた。


「師匠、ブイ!ブイ!」

 肩を骨折しているので、右手がプラプラしてるアリシアが、左手でピースサインして近付いてくる。足も痛めたか、びっこを引いているが、笑顔である。


「私たちこんなボロボロなのに、ガイはなんかすごくツヤツヤして、血色いいわね?」


「いや、まぁなんとか」


 さっきの魔族が魔力含め完全回復させてくれたとも言えず、ガイは言葉を(にご)す。言えば、色々説明しないといけないことが出てくるので、さらりと流すに限る。


「アリシア、シュリ、俺の近くに。回復魔法で怪我を治そう」

 二人同時に、効果範囲型の完全回復魔法をかける。


「完全ふっかーつ!!」


「すごいわね。ガイってなんでもできるのね」


「なんでもはできないさ。個の力なんて限られてる。誰かに助けられないと、みんな生きてはいけない」


「意外ね。すごい強いあなたから、そんな言葉を聞くなんて。でも、なんだか嬉しい気もするわ」

 シュリは率直に言った。


「師匠、これからどうするの?」


「そうだなぁ……」

 (あご)に手を当て考えるガイに、シュリは自分の意見をまず話す。


「ガイ、アリアブルグ襲撃は確実よ。さっきの魔族が言ってた。早く報告に戻って、対策を講じないと。魔族が関わっているとなると、街の防備や避難経路の手配をしたり、ある程度の戦力を(ととの)えておかないと、甚大(じんだい)な被害が出るかもしれない。だから、一刻も早くアリアブルグに戻るべきよ」


「俺はこの先の、北東にある開けた所が気になる。せめてそこは確認して行った方がいいように思う。さっきの魔族はここらを警戒していて、たまたま俺たちを見つけて襲ってきただけで、偶然の遭遇(そうぐう)戦だったんじゃないか?だとしたら、この先に何かある気がする」


 二人の意見が分かれる。


「そうね。それも一理あるわね。けど、また魔族がいたり、マンティコア級の魔物がいたとしたら、私じゃどうすることもできないから、私はアリアブルグへ報告に戻る。ガイはこの先の探索を続けるってのはどうかしら?ガイなら対処できる力がある」

 と、シュリは自分の意志が(かた)いことを示し、提案した。


「シュリ、ごめん。それなら、私は師匠に付いてく!」


「もちろん、わかってるわ」


(シュリは自分の役割を良く分かっている。なら、俺は俺の役割を果たすべきだな)


「一人で大丈夫か?」


「ええ」


「これを持っていくといい」

 空間収納のアイテムボックスから、三本の筒を取り出して、シュリに渡す。ちょうど剣の(つか)のような大きさの筒だ。


「これは?」


魔法筒(マジック・スクロール)だ。魔力を込めたイリア文字で刻まれた魔法言語の巻物が封入されており、(ふた)を開けて、対象に向けて投げると魔法が発動する。青は川を渡るときに使うといい。川を(こお)らせられるから、走って川を渡れる。残りは護身用に。赤は爆発(エクスプロージョン)の魔法、黄色は雷撃(ライトニング)の魔法が込められている」


「こんな貴重なもの、いいの?なんて聞かないわ。野暮(やぼ)よね。遠慮なく(もら)っておくわ。ありがとう!」


「ああ」


「色々終わったら、食事に行きましょう。(おご)るわ」


「楽しみしとくよ。じゃあ気をつけてな」


「シュリ、またね!」


「アリシアは人のこととなると向こう見ずなんだから。無茶しちゃダメよ。ガイも無理はしないでね」

 シュリは魔法筒(マジック・スクロール)を受け取ると、装備を確認し、二人と別れ、アリアブルグへと急報を届けに向かった。


「さてと、俺たちも行くか」


「ラジャ!」

 アリシアが槍を手に、いつもの敬礼ポーズで答えた。

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