蝶の翼
ぴるるるる…
人々が行き交う、街中。
スクランブル交差点。
雑踏のなか。
羽を震わせながら飛ぶ、一匹の蝶。
何かを、探すように。
誰かを、探すように。
ぴるるるると羽を震わせ、ふわふわと飛び回る。
花畑で蜜を探すように。
雑踏に流されていく人々のなかを、探し回る。
すると、背を丸めた一人。
君だ。
蝶は君を見つけると。
ぴるるるる…
羽を震わせ、そして。
君の。
君の、背中に飛びこむ。
蝶が君の背中に飛びこむと。
君の背中から、キラキラとした蝶の羽がはえる。
君の背に、立派な蝶の翼がはえる。
蝶はずっと…ずっと、君のことを探していた。
翼の持ち主を…君を、蝶はずっと探していた。
君の背で震える、キラキラとした蝶の羽。
蝶の翼。
蝶の翼が戻ったその時、君は───────…
君の蝶は。
君だけの翼を渡しに。
君を求めて。
君を探して。
時を超え。
時を渡り。
今を。
今も。
彷徨っているのだろう…