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イージアン  作者: 高田
第一章 レナ
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第6話 変身


 翌日、レナは王宮の大浴場で、口をぽかんと開けて立っていた。


「すっごーい……!」


 あまりにも広く、あまりにも豪華で、まるで夢を見ているようだった。

 しかも目に飛び込んでくるのは、セクシーな美女ばかりだ。彼女たちは、いわゆるウルネス王の恋人たちで、その豊満な裸に女のレナでも目のやり場に困るほどだった。


(すっごーい……!)


 レナは自分が裸だったことを思い出し、慌てて隠しつつ、自分の胸を見た。


「…………」


 そのまま両手で胸をしっかり隠しながら、静かに湯船に沈んでいった。するとレナは、後ろから侍女に声をかけられる。


「さあ、体を洗いますよ。早く出てください」


 そう言って、侍女たちがレナを湯船から引っ張り出そうとした。


「えっ? あの、ちょっと……自分でやりますから」


 レナが戸惑っていると、侍女たちはレナをじろじろ見ながら言った。


「言ってはなんですが……レナ様、あまりお風呂に入ってないですよね?」


 その質問に、レナは驚いて答えた。


「当たり前じゃないですか。私、兵士ですよ? お風呂なんてめったに入れません」


 すると侍女たちは、顔を見合わせて大きくうなずいた。そして、すぐさま彼女たちの手がレナに襲いかかった。


***


「あら? あれは何かしら」


 巨乳美女たちは、侍女たちに押さえつけられ、全身をガシガシ洗われているレナに気がついた。


「大人しくしてくださいっ」


「いたたた! 誰か、助けてー!」


 叫びながら必死の形相で抵抗しているレナを見て、巨乳美女たちは戸惑いの表情を見せた。


「新人ちゃん……かしら?」


「ウルネス様ったら、今回はまた随分と趣向を変えたのねえ」


 そう言いながら、豊満な胸をぷるんと揺らした。

 仕上げにお湯をかけられたレナは、水も滴る……とはいかず、残念ながら色気は少なめであった。

 その時、侍女がレナの後ろ姿を見て声を上げた。


「あら、これは?」


 レナの左肩には、サソリの模様のタトゥーが入っていたのだ。侍女に聞かれたレナは、目を輝かせて得意げに答えた。


「これは村のみんなと、おそろいで入れたんです。強そうですごくかっこいいですよね!」


 侍女たちは返事に困った。サソリの柄など、若い娘が選ぶ柄ではない。そして侍女たちは本気で不思議がった――ウルネス様は、この変わった娘のどこが気に入ったのかと。


***


 体を洗い終わり、着付けをする部屋へ移動したのだが、その部屋からうめき声が聞こえてくる。


「ぐええ! くっ、苦しい!」


 レナはウエストを思いきり締め付けられ、思わず声をあげた。


「うふふ……大げさですねえ」


「はい、こちらを向いてください」


 侍女たちは笑いながら、慣れた手つきでレナにドレスを着せ、化粧を施していく。レナは顔にいろいろと塗りたくられ、髪を引っ張られながら思った。


(キレイになるって、こんな感じなんだ……)


「さあ、出来上がりましたよ」


 侍女はそう言って、レナを鏡の前に立たせた。そこには何と、美しい娘が映っていた。


「ええっ?」


 レナは思わず叫んだ。


(こ、これが私? どうなってるの⁉︎)


 レナは侍女たちの技術(マジック)驚愕(きょうがく)した。そして、女の子らしい格好などしたことがなかったレナは、生まれて初めてこんなに奇麗な格好をして、気恥ずかしくも心が躍った。そして、鏡に映る自分を自画自賛した。


(結構……いいかも)


 その時、ウルネス王が部屋に現れた。


「あっ、ウルネス様!」


 侍女の声にドキッとして振り返るレナ。


(えっ⁉︎ ウルネス王?)


 侍女たちが道を開けると、ウルネス王はまっすぐにレナのところまでやってきた。


「いかがでしょうか?」


 侍女たちが得意顔でウルネス王に聞いた。


「どれどれ」


 ウルネス王は上機嫌にレナを眺める。レナの方は恥ずかしくて目を合わせることができず、下を向いてしまった。

 するとウルネス王は、指先をレナのあごに添え上へ持ち上げた。強制的に目を合わせる形になり、レナは顔が真っ赤になった。


「今日の宴で私の横で酒をつげ。いいな?」


 ウルネス王は、レナの目をまっすぐに見つめて命じた。


「は、はい」


 レナは返事をしながら、自分の胸の高鳴りに戸惑うことしかできなかった。


***


 今夜も盛大な宴だった。

 ウルネス王が家臣たちと和やかに談笑している横で、お酌をするという大役にレナは緊張しっぱなしだった。ぎこちない手つきでお酒を注ぐたびに、ふうっと息をついた。

 そして護衛でもないのに、癖でついつい周囲を見回してしまう。


(今日は、セラ王妃はいないんだ……)


 レナはこっそりほっとした。

 その時、広間の柱の影にいる二人組の男に目が留まった。ちょっとした言い争いをしているように見える。


(ん? けんか……?)


 なぜか二人が気になった。

 すると広間の外が急ににぎやかになったので、レナの注意はそちらに移った。

 家臣たちが興奮気味に声を上げた。


「ウルネス様、来たようですな」


「そうか」


 ウルネス王も上機嫌な声だった。

 その時、使いの者が広間に飛び込んできて叫んだ。


「わが軍が遠征から帰ってきました!」


 それを聞いて、レナもぱっと顔を輝かせた。


「えっ? 遠征軍⁉︎」


 そして、大歓声とともに兵士たちが広間に到着した。

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