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イージアン  作者: 高田
第二章 リオ
44/56

第44話 レナの村


 レナは驚きと興奮で、感情を整理できずにいた。単純に、リオの強さに感動している自分がいる。

 しかし、強すぎるのだ。瞬間的に見せるリオのオーラに、恐怖すら覚える。

 そして何より驚きなのは、不死と思われる魔物ですら倒してしまうことだった。


「一体どういうことなの……⁉︎」


 結局、質問攻めになってしまった。


「どうしてリオは、そんなに魔物に詳しいの⁉︎ なんで、不死の魔物を倒せるの⁉︎」


「…………」


 リオは、少し表情を曇らせている。

 そして間を置いてから、言葉を選ぶように答えた。


「……この剣には、特別な力があって……魔物に有効なんだ」


「魔物に有効?」


 確かにこの剣で切られると、魔物は破壊されるようなダメージを受けていた。それは剣の特別な力なのだと、やっと()に落ちる思いだった。

 それにしても、リオはいつもレナの想像もできないことを言う。


「そんな剣があるなんて……!」


 レナは感服しきった表情で、リオの剣をのぞき込んだ。


(この剣のことは、知らないか……)


 内心、ほっとするリオ。

 そして、明らかに触ってみたくてウズウズしているレナに、剣を手渡した。


「おっ、重い!」


 レナは驚いた。剣はずっしりと重く、レナではとても扱えるものではなかった。


「こんな重い剣を軽々と……リオって本当にすごい!」


 レナは、剣を抜いてまじまじと眺めた。これといって、特殊な剣には見えなかった。


(でも確かに、光って見えたんだけどな……)


 レナの様子を見ながら、リオはぼそりと言った。


「俺がこの剣を扱えるのは……この剣に選ばれたからなんだ」


 それを聞いて、レナは目を丸くした。


「剣に選ばれた⁉︎」


(なにそれー! 超かっこいいー!)


 レナは思わず叫ぶと、目を輝かせて剣を空にかざす。


「リオだから光るのか! すごいね!」


 レナは無邪気に『すごい』と言うが、リオは複雑な気持ちだった。


(選ばれた――か……)


 この剣の場合、決して光栄なことではなかった。

 そして、リオの心が、チクリと痛んだ。


(レナは、本当の俺を知らない……)


 二人は既に、エスプラタ国に入っていた。

 国境は警備をしている様子もなく、すんなり進むことができた。レナも、何も気づいていないようだった。

 ひとまず、ホッとするリオ。

 今後は自分がアサニス国の人間だと、バレないように気をつけなければならない。

 そのまま二人は、まっすぐレナの村に向かった。

 村が近づくと、レナはそわそわと落ち着かなくなってきた。


「あっ、見えてきた!」


 村が視界に入ると、レナは居ても立っても居られなくなり馬を走らせた。

 リオも慌てて追いかける。

 レナはそのまま馬で村に駆け込むと、今度は馬から飛び降りて走っていってしまった。

 レナは、辺りを見回しながら顔を輝かせた。


「ああ! 変わってない!」


(良かった! 村は無事だ!)


 懐かしさに、思わず涙腺が緩みそうになる。

 そして、レナはムルを見つけ声を上げた。


「ムル様!」


 その聞き覚えのある声に、ムルも驚いて振り向いた。


「レナ⁉︎」


 レナは、走ってムルに抱きついた。

 突然目の前に現れたレナに、ムルも信じられない思いだった。


「おまえ……! 無事だったのか⁉︎」


「ムル様……ムル様!」


 その瞬間、せきを切ったようにレナの目から涙があふれた。

 ムルも夢ではないことを確認するように、泣きじゃくるレナを抱きしめた。


「良かった……本当に良かった!」


 周りのみんなも、レナに気づき大騒ぎになった。


「レナ⁉︎」


「おい! レナじゃないか!」


 みんなが大喜びで、レナの元に集まってきた。


「レナー!」


 その時、ひときわ大きな声が聞こえた。


「おまえ、生きてたのかよ!」


「ルカス!」


 レナは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ルカスと大はしゃぎで抱き合った。


「城での話は聞いていた! よく無事でいたな!」


 ムルは本当に感激したように、レナの頭をなでた。


「この村は、大丈夫でしたか?」


 レナも、涙を拭いながら聞いた。


「ああ、ここは大丈夫だ。ここにいるのは、屈強な男ばかりだからな」


「よかった!」


 頼もしい返事が返ってきて、レナは泣きながら笑った。

 レナたちの感動の再会を、リオは静かに見守っていた。

 正直、レナがあんなに泣いていることに驚いていた。自分の前では、どちらかと言えば飄々(ひょうひょう)としているように見えたが、本当は相当な恐怖と戦っていたのだと、あの涙が物語っていた。

 そして、ムルがリオに気がついた。


「彼はリオです」


 レナが紹介をする。


「私の命の恩人です! 魔物に襲われているところを、助けてもらったんです」


「そうでしたか……それはありがとうございました。感謝します」


 ムルは、リオに頭を下げた。


「リオです」


 リオも丁寧に頭を下げた。

 それからレナとリオは、喜ぶ村の人々にもみくちゃにされながらムルの家へ向かった。

 リオも、みんなに歓迎された。

 その日の夜は、当然大宴会となった。人々はレナの無事を喜び、レナもみんなと喜びを分かち合い、泣いたり笑ったり大忙しだった。

 リオは、その様子をずっと見ていた。

 レナが村のみんなに愛されているのがよく分かって、微笑ましかった。

 そして何より、レナの屈託のない笑顔に、リオの心もいやされるのだった。

誤字報告下さった方、ありがとうございます。

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