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イージアン  作者: 高田
第二章 リオ
38/56

第38話 出会い3


 激しく動揺していたリオだったが、ここでいったん冷静になった。


「…………」


(彼女は……一体何者なんだ?)


 エスプラタ国の王宮内で、魔物と戦ったと言っていた。


(やっぱり兵士なのか?)


 そして、リオは沈黙する。


「…………」


(なんて言うか……彼女の話……ツッコミどころ満載なんですけど!)


 リオは、心の中で叫んだ。


(まず、彼女が兵士って! もう設定がおかしいだろ⁉︎ エスプラタ国には、女兵士が普通にいるのか⁉︎ それに、魔物が現れたから戦ったとか、当たり前みたいに言ってるけど、普通戦わないだろ! というか、戦えないだろ⁉︎ 全部ありえないだろ!)


 心の中で叫び続ける。


(あぶねー! うのみにするところだった!)


「はっ⁉︎」


 しかしリオは、先ほどレナが魔物と戦った姿を思い出す。あのレナの戦闘力――この目で見たものの方が、正直ありえなかった。


「…………!」


 リオは、とうとう頭を抱える。そしてそのまま、動かなくなってしまった。

 レナは、リオの様子をずっと観察していた。


(うわー……この人、全然動かなくなっちゃったよ)


 さすがに心配になってしまった。

 リオは必死で自分を励ました。


(落ち着け! 落ち着くんだ!)


 そして、なんとか声を絞り出した。


「君は……どこで……魔物との戦い方を覚えたの?」


「戦っているというほどでは……逃げてるだけだから」


 リオの必死の質問に、レナはひょうひょうと答える。


(あれを、戦っているというほどではない、と言うのか……)


 何から質問していけばいいのか、全然考えがまとまらない。


「一つだけ、言えることが……」


 リオは深呼吸をした。


「神殿に封印されていた魔物だとしたら……それは、解放術が行われたんだ」


「解放術?」


 聞き慣れない言葉に、レナは聞き返した。


「つまり……何者かが故意に、魔物を解放したんだ」


「なっ――⁉︎」


 レナは、目を見開いた。


「あれを……誰かが……望んだっていうの⁉︎」


 リオも真剣な表情に戻っていた。


「そういうことになる……」


 レナは、動揺した表情のまま訴えた。


「そんな……! どうして、そんなことを⁉︎」


 リオも考え込んでいる。


「……魔物の解放術は、とても難しい。それだけの高い能力と、地位や責任を持つ、限られた人間にしかできないはずだ」


 レナに説明するというより、もはや独り言に近かった。


「それ程の人物が、こんな事態になるとわかっていながら、魔物を解放したのだとしたら、一体何があったのか……」


 レナは、どんどん複雑な表情になっていった。


「誰かが……故意に……」


 視線が空中をさまよっている。


「じゃあ……なんで私は……その魔物に狙われているの⁉︎」


 心の声が無意識に漏れていた。


(魔物に狙われている……?)


 リオには、レナの言葉の意味がわからなかった。確か魔物に名前を呼ばれた時も、そんなことを言っていた。


(そうだ、魔物はなぜ彼女の名前を呼んだんだ?)


 レナをよく見ると、服はボロボロで体はあちこち擦り傷だらけだった。

 リオはその時、レナという不思議な娘に興味を持ってしまった。


(彼女の話を全て信じていいのかわからないが、もし事実なら、彼女は魔物が解放された時、その場にいた貴重な証人だ)


 リオは、調べてみる価値はあると思った。


「君は、これからどうするの?」


「これから……?」


 レナは、リオの質問に答えられなかった。


(……どうするも何も)


 そう言われても、レナにはなんのプランもない。


「このまま森の中で、夜になるのは危険だ」


 リオの言葉に、レナも辺りを見回す。


「まあ、確かに……」


(普通はね……)


「実は、自分は魔物の被害を調査しているんだ。君の話を、もう少し詳しく聞かせてほしい」


「えっ?」


 リオの提案に、レナは驚いた。魔物の被害を調査している人がいるなんて、思いもよらなかったからだ。


***


 リオの馬は、二人を乗せて街へ向かっていた。

 沈黙していた二人だったが、リオが質問する。


「さっき……魔物に狙われているって言ってたよね? それって、どういう意味?」


 レナは、脱力気味に笑った。


「はは……」


 信じてもらえないと思ったが、とりあえず本当のことを言ってみる。


「言葉の通りよ。理由はわからないけれど、私は王宮からずっと魔物に追われているの。まるで魔物たちの目的が、私を殺すことみたいに……」


 リオが沈黙したままだったので、レナは小さくため息をついた。


(やっぱりね……別にいいけど)


 リオは真剣に考えていた。


(魔物たちの目的が彼女の命とか、これはそんな規模の話じゃない……。魔物の被害は、もう近隣諸国にまで広がっているんだ)


 エスプラタ国内は、どれ程の被害になっていることかと心配になった。


(これはもう、簡単に収まる事態じゃ――)


「んっ⁉︎」


 突然レナが、リオの胸にもたれかかってきたのだ。

 レナはすでに爆睡していた。


(……もし本当に、魔物からずっと逃げていたんだとしたら、ろくに寝ていなかったとは言えるな)


 リオはレナの寝顔を見ながら、心の中で問いかけた。


(レナ、君は一体何者なんだ? 君には、一体どんな秘密があるんだ?)

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