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イージアン  作者: 高田
第一章 レナ
29/56

第29話 刺客


 突然レナ目の前に、四人の男が立ちはだかった。

 そして、その異様な雰囲気が殺気であることも、すぐにわかった。


(この男たちは、刺客だ!)


 レナは剣を抜いて構える。


(一体何者⁉︎ 白昼堂々、どうやって城の中に入ったの⁉︎)


 刺客たちも、静かに剣を抜いた。

 その威圧感に、レナは思わずたじろいだ。


(まずい……相当の手練れだ)


 その頃、セラ王妃の部屋には将校が訪れていた。

 何やら声を潜めて報告をしている。


「今頃、刺客がレナの元に……」


「そうか……」


 セラ王妃は息をつくと、目を閉じた。


(あの娘さえ消えれば、何もなかったことになる……これからも、何も起こらない……)


 中庭では、将校の言う通り、レナがピンチを迎えていた。

 刺客たちが、一斉にレナに飛びかかる。しかし四人の剣は、絡み合って空を切った。


「いない⁉︎」


 刺客たちがハッと上を見ると、レナが剣を振りかざし落ちてくるところだった。その目は、完全に戦闘モードだ。

 レナはそのまま、刺客に剣を振り下ろした。

 刺客たちも瞬時に避ける。

 レナの着地と同時に、激しい戦いが繰り広げられた。

 しかし四対一では、かなり分が悪すぎた。しかも刺客たちはかなりの手練れである。

 刺客たちの剣が、レナの体を次々とかすめる。


「くっ……!」


 走って逃げようとしても、刺客たちはすぐにレナを取り囲んでくる。

 その動きに、レナは違和感を感じた。


(どうして⁉︎ こいつら、私が標的なの⁉︎)


 その時、レナはハッとする。


(そういえば……!)


 以前この中庭で、矢を放たれたことを思い出した。


(でもこいつらは、前に矢を放った者とは全然違う!)


 レナは逃げながら必死で考える。


(どうする⁉︎)


 刺客の剣を、かわし続けるのも限界だった。


(とにかく、侵入者がいることを誰かに知らせなければ! このままだと、まずい!)


 刺客たちの方も、レナに驚いていた。


「なんてすばしっこいやつなんだ!」


「グズグズするな! 相手は一人だぞ!」


 その時、レナは貯蔵庫の入口を見つけた。強い日差しで、入口の中に濃い影ができている。


(あそこだ! 暗闇に逃げれば、なんとかなるかもしれない!)


 レナは、すきを見て走り出した。

 しかし、刺客たちを振り切れない。貯蔵庫の入口まであと少しのところで、刺客の剣がレナの肩を突き刺した。


「うっ⁉︎」


 鋭い痛みに、レナはバランスを崩し倒れ込んでしまった。

 そして、刺客たちがレナにとどめを刺すために剣を構えた。


「ハアッ……ハアッ……」


(ダメだ、完全に囲まれた……)


 壁を背にして、レナは肩を押さえて、フラフラと立ち上がった。

 その時、通りかかった女中が悲鳴をあげた。


「きゃあああ! くせ者ー!」


「はっ⁉︎ しまった!」


 その声に驚いた刺客たちは、一瞬レナから目を離してしまった。だからその瞬間、レナに何が起こったか見ていなかった。

 刺客たちが視線を戻した時、レナの体が入口の影に溶け込むように、消えていくところだった。


「えっ⁉︎」


 刺客たちは慌てて剣を突き刺したが、もうそこにレナはいなかった。剣は壁に当たり、乾いた音を立てた。


「ばかな⁉︎ 今のは一体なんだ⁉︎ どこへ行った⁉︎」


「この中だ!」


「くそっ、早く片付けろ! 人が来るぞ!」


 刺客の一人が、貯蔵庫の中へ入った瞬間だった。正確には、影の中に入った瞬間だった。


「…………?」


 首のあたりを何かが横切った。

 すると、そのままカクンと膝をついて倒れてしまった。


「なっ⁉︎ なんだ⁉︎」


 後ろに続いていた刺客が、驚いて声を上げる。

 しかし次の瞬間、その刺客も崩れ落ちるように倒れた。残りの二人には、何が起きているのか全くわからなかった。


「おい、どうした⁉︎」


(何が起こったんだ⁉︎ 攻撃されたのか⁉︎)


 貯蔵庫の中は暗くて何も見えない。人の気配は全くしなかったが、すぐそばで狙われているかもしれない恐怖を感じひるんだ。


「…………!」


 二人は、思わず後ずさりを始める。

 次の瞬間、鈍い音がした。


「ぐあっ!」


 叫び声を上げ、今度は一番後ろにいた刺客が崩れ落ちた。


「おっ、おいっ⁉︎」


 その背中には矢が刺さっていた。

 刺客が顔を上げると、視線の先には弓を構えるメルブ将軍の姿があった。その隣では、叫んだ女中がオロオロしている。

 たまたま、その場に居合わせたメルブ将軍が矢を放ったのだ。

 四人もいた刺客は、残り一人になっていた。


「くそっ……なんてことだ!」


 あっという間に形勢が逆転してしまった残りの一人は、残念なことに影に入っていた。

 そしてメルブ将軍は、()()を目の当たりにした。

 刺客の男の首が突然切れ、鮮血が飛び散ったのだ。


「⁉︎」


 メルブ将軍は、目を見開いた。誰が何をしたのか、全く見えなかった。

 最後の刺客は、ぱたりと倒れた。

 すると、奥の貯蔵庫からレナがフラフラと出てきた。


「レナ⁉︎」


 メルブ将軍は、驚いて声を上げた。刺客と戦っていたのはレナだったのだ。

 レナは、ガクッと膝をついた。


「ハアッ……ハアッ……」


 体は切り傷だらけで、肩で大きく息をしている。

 その表情は放心状態で、レナは不思議そうに自分の両手を見つめているのだった。

誤字報告下さった方、ありがとうございます。

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