表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イージアン  作者: 高田
第一章 レナ
14/56

第14話 任務2


「なんだなんだ? 自警団が部屋に入ってきたぞ」


 隠し扉の内側の部屋から、外側の部屋を監視していた男が声を上げた。


「あっ、手配書を持ってる!」


 ダラムたちに一瞬緊張が走る。

 しかし手配書の似顔絵が見えると、監視していた男は吹き出した。


「ぷっ、全然違う男の顔だ。あの間抜け野郎、ボスとは関係ない男を探しに来たぞ」


 それを聞いて、安心した周りの男たちも笑う。


「雑魚を追ってるすぐそばに、俺様がいるとは思いもよらねえか」


 ダラムも馬鹿にするように笑った。


「ふん、見つかるもんか。この部屋の入口をカモフラージュするために、あいつらを騒がせているんだからな」


「あんなガラの悪い連中には、誰も関わりたくないですからねえ」


 手下たちも余裕の態度だった。

 しかし、外側の部屋で何やら言い争っている様子を見て、監視していた男が不審に思う。


「やけにしつこく食い下がっていやがる。何やってんだ?」


 それを聞いて、ダラムは眉をひそめた。


「……気に入らねえな」


 レナは、自警団が仲間だと確信していた。


(私がいないからだ! 仲間は私がどこにいるか探している。なんとかしてこの部屋の存在を知らせなければ!)


 その時レナは、カーテンの裾にチャンスを見つけた。ろうそくの台の脚がカーテンを踏んでいたのだ。レナは辺りを気にしながらカーテンを引っ張り、ろうそくの台を倒した。

 大きな金属音が部屋に響き、全員がはっと驚く。気が付いた時には、瞬く間にカーテンに火が移っていた。それを見て、踊り子たちが悲鳴を上げた。

 部屋の中は一気にパニックになる。


「火だ! 火がカーテンに燃え移ってるぞ!」


「何やってんだ!」


「俺じゃねえ!」


 男たちが叫んでいる間にも、煙がみるみる部屋に充満していく。


「燃え広がっている! 早く消せ!」


 次第に全員が煙でせき込み始めた。


「やばいぞ、逃げた方がいい!」


「このままじゃ煙でやられる! 隠し扉も開けろ!」


 ダラムも怒鳴った。


「ちくしょう、どうなってるんだ⁉︎」


 レナも手で口を押さえながら、うつぶせになり耐えていた。


(お願い! 誰か気が付いて!)


 外側の部屋で、まだ押し問答を繰り返していた男たちだったが、レナの仲間たちは隣の部屋がやけに騒がしいことに気が付いた。しかも焦った顔をして、そちらをチラチラ見ている者が何人もいる。


「……?」


 レナの仲間が壁の方に目を向けた瞬間――。

 壁の装飾の幕がめくれ、突然扉が現れたのだ。


「なっ⁉︎ 扉⁉︎」


 レナの仲間は思わず声を上げた。

 同時に大量の煙と人が扉から出てきたので、今度は外側の部屋の男たちが叫んだ。


「何だ、あの煙は⁉︎」


 余りにも突然の展開に、混乱するレナの仲間たち。


(これは一体どういうことだ⁉︎ 奥に部屋があるのか⁉︎)


 そして、胸騒ぎがした。


(まさか……!)


 一方、秘密の部屋ではレナが必死で煙に耐えていた。


(やった、扉が開いた! チャンスだ!)


 レナは、近くにいた男の剣を素早く盗んだ。


「気をつけろ! 外にいるのは敵かもしれないぞ!」


 ダラムが叫んだその時だった。レナは剣を振り上げた状態で、ダラムの背後に立っていた。


「⁉︎」


 背後に殺気を感じるダラム。

 レナは心の中で叫んだ。


(もらった!)


 そして一気に剣を降り下ろした。しかし、レナの攻撃はダラムの剣に阻まれた。


「えっ⁉︎」


 ダラムは剣を背中に回し、背面でレナの攻撃を遮ったのだ。

 振り向いたダラムと目が合う。


「貴様……」


 ダラムの目に、レナはぞくりと恐怖を覚えた。


(しまった!)


 そう思った瞬間、ダラムの足が飛んできてレナは蹴り飛ばされていた。物凄い痛みで、一瞬息ができなくなった。

 ダラムはゆっくりと立ち上がる。


「おいおい、これは一体どういうことだ?」


 レナを恐ろしい目で見下ろしていた。


「おまえ……まさか俺の首を取りに来たのか?」


 ダラムの低い声が、レナの恐怖をさらに増幅させた。


(甘く見ていた! 油断していると思って安易に切りつけてしまった!)


 そして確信する。


(この男は恐ろしい! 逃げなきゃ!)


 部屋はすでに炎に包まれていた。レナは煙の中へ逃げ込み、隠し扉の方へ走った。

 しかしダラムは素早くレナの前に立ちふさがると、今度は剣を振り下ろしてきた。

 慌てて応戦するレナ。ダラムの剣は重く、先程蹴られた場所がズキンと痛んだ。


(まずい! 強い!)


 レナはダラムの剣の威力に弾き飛ばされ、煙とともに外側の部屋へ転がり出た。


「レナ⁉︎」


 仲間たちが叫んだ。

 その時、煙の中から低い声が響いた。


「その娘は刺客だ! そいつらグルだぞ!」


 その声にレナの仲間たちは、はっと息をのんだ。出てきたのはダラムだった。


(ダラム――⁉︎)


 ターゲットを目の前にして、全員が驚きと興奮で血が沸き立つ思いだった。

 しかし、レナたちはすでに取り囲まれてしまっていた。


「レナ、大丈夫か?」


 心配する仲間にレナは謝った。


「すみません! チャンスがあったのに……!」


 その時、ダラムの低い声が響いた。


「この俺に、こんな小娘をよこすとは……なめたまねしてくれるじゃねーか」


 怒りのこもった鋭い目に、レナたちは完全に射すくめられてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ