7. 『フェリス』の大冒険
「今宵は月がないので星が見えやすいですな」
「今年のペルセウス座流星群は残念だった。ほぼ満月だったから流れ星が全然見えんかった」
常連さん同士の会話が聞こえて来る。
普段から空を見上げているのがよく分かる。常連さんなだけあって下手したら僕より詳しいんだよね。年若い星空案内人の僕の説明を、既に知っていることでもちゃんと聞いてくれる。
それ楽しい? 楽しいよね。僕だって自分より年下の子が辿々しく星を語っていたら応援すると思う。
僕の場合、どうしても見上げた空が少ないから偶についていけなくなるんだよね。
光害もあるのが当たり前だった。
機材も今はスマホでできる事が多いからカメラの話をされても分からない。
今日は早めに解放して貰って、月見山さん父娘のもとに向かう。
「どうですか? 楽しんでいますか?」
弦さんに話しかけてみる。
さっきまでこと座のM 57を見ていた彼は、少し興奮気味だ。いいなぁ、僕も後で見よう。
M 57はリング星雲とも呼ばれていて、天文界隈だとわりと有名な天体。
ただ、肉眼じゃ見えないから自分でやるには導入が難しいんだよね。僕が個人で持ってる望遠鏡じゃ口径が心許ないのもある。値段に負けたせいでいろいろ損してる気がする。バイト台が貯まったら、口径の大きな反射望遠鏡買おう。
「普通に暮らしてるだけではこんな機会なかなかなくてね。たまにはこうして星を見るのもいいものだ。誘ってくれてありがとう」
「いえいえ、こちらこそ僕の趣味に付き合わせてしまって申し訳ありません」
「君の惑星食レポート見せてもらったよ。まだ若いのにすごいね。星に詳しくない私でも分かりやすかったよ」
「……ありがとうございます。光栄です」
危うく専門用語並べて早口でまくしたてるところだった。
なんとか堪えて言葉を繋ぐ。
「次の惑星食は十一月ですね。月食と重なるので今から楽しみなんですよ。五月みたいに遠征じゃないのがちょっと残念なんですけどね」
今年は惑星食が三つもあって嬉しい限り。
五月が金星、七月に火星、十一月は天王星。
二年後の土星食で惑星食シリーズは一旦打ち切りかな。水星と木星は当分起こらない。もう五年早く惑星食に興味を持てていれば、いや当時小学生か。どうだろ? 流石に無理かな。
「あー、君はその、私達のことをどう思っているのかい?」
「星に興味を持ってくれたらいいなと。どうですかね。可能性ありますか?」
「いやいやそうじゃなくてだね。もちろん星を見るのは楽しかったが」
……が。
続く言葉はあんまり聞きたくないなぁ。
まぁ一回来てくれたのだから十分ではあるんだけど、やっぱり難しいかな。星を継続的に見る人は思ってたよりずっと少ない。
自分が好きなものを理解されないのは、やっぱり淋しい。
「その、私達が、怖くないのかい?」
「は?」
思わず失礼な声をあげてしまった。
怖い? まぁ星が嫌いと言われるのは嫌だけど、怖いとはベクトルが違う。どういうことだ?
「いやほら、私達は普通の人とは違うじゃないか」
ふむ?
ひょっとしてネコ耳のことか?
意識から切り離し過ぎてた。そもそも周りが暗すぎて意識してない耳なんて見えない。親子揃って黒いネコ耳だから夜に見たいなら月でもないと単なる一般人。
「えっと、弦さん。今まで同胞に会った事はありますか?」
「そりゃあない事はないさ。これでも君達より長いこと生きてきたんだから」
「じゃあ、たかが趣味のために学校サボった人に会った事はありますか? 別に金星に限らなければまだその年のうちに同じようなのが見れるのに」
「それは、……確かに君が初めてかもしれないな」
「なら僕は貴方にとって普通の人間とは言い難いですよね」
妹に打ち明けられてから、本気で考えた。
でも、あんまり自分の妹が特別とは思っていない。そりゃあ、僕にとっては唯一無二の妹で特別な存在だけど、それは以前と何一つ変わらない。何より、のぞみは自分が普通の人間だと言いきった。
少し考えれば、僕だってかなり特殊なケースだって気づいたんだ。
「僕にとって大事なのは、今日の観望会で貴方達に星を好きになってもらえるかどうかだけだったんです」
そして、その成功率が著しく低いことを知っている。
でも、それに憤ったところでいい事は一つもない。
「今日はどうでしたか? 退屈でなければ良かったんですが」
ああ、やっぱりちょっと怖いかもしれない。
面と向かって否定されるのは、それなりに堪える。
弦さんは少し無言で佇んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「……いや。童心に返ったようだったよ。ただ、君の事が気になってのめり込めきれなかったのは確かだ。良かったらもう一度案内してくれないか、星空案内人さん」
「よろこんで」
「こんなところで何してるの?」
「さっきまでパ……お父さんと一緒にいなかった? もういいの?」
「天の川の奥深さを語って来たとこ。そのまま第二章に言っても良かったんだけど、僕のもう一人の招待客が気になってね」
一人で星を見ていた月見山さんを発見して話しかける。
招待客と言っても、直前まで知らなかったんだけど。
あんまり関わらないでと言われた手前どうすべきか悩んだけど、先に踏み込んで来たのは月見山さんの方だ。せっかくなら月見里さんの方も星を好きになってほしい。
それにしても暗がりだと黒い尻尾と耳が全然見えないな。月でも出ていればまた違うんだろうけど。
「ねえ、ねこ座ってあるの?」
なかなか難しい質問をされた。
あるって答えることもできるし、ないって答えることもできる。
「やまねこ座ってのがあるよ」
「ヤマネコかぁ。やまねこ座の神話ってなんなの?」
「ん? やまねこ座って新しい星座だから神話とかないんだ。暗い星が多くてヤマネコでもないと見えない、って感じで名前が付けられたらしいよ」
「何それ。ネコ関係ないじゃない。梟でもいいわけよね」
ちょっと不満気な感情が感じられる声での呟きが聞こえた。
やっぱりそういうの気になるものなんだな。
スマホを起動して星座のアプリを開き、やまねこ座の場所を探す。
どこだ?
微かな記憶を頼りになんとかやまねこ座を見つけた。
……地平線の下に。
「残念。もう沈んでる」
「別にいいわよ。神話がない星座もあるのね。星座って何かしら神話がつきものだと思ってた」
「あー。昔からある星座と、新しく作られた星座があるんだ。だから神話がない星座も結構あるよ」
なんなら半分くらいは神話が存在しない。
星座の文化は北半球で発達したから日本で目立つ星座はだいたい神話持ってるけど、南半球はほとんどないんじゃないかな。
今度調べとこう。
「他にはしし座とこじし座がそうと言えるかもね。春の星座で両方ともネコ科」
「ちなみに神話は?」
「こじし座はなし。しし座は……まぁ可愛くはないよ」
ヘルクレスの十二の試練の内の一つ。
その敵役だ。ねこ座を探し求めている月見里さんにはあんまりオススメできない。
「今定義されてる八十八星座ではたぶんもうない」
流石に絶対の自信がある訳じゃないけど、星については結構詳しいと自負している。
ネコで関連して思い出すような星座は他にない。
「イヌはいるのよね。おおいぬ座とこいぬ座を聞いたことあるもの」
「両方とも冬の大三角の星座だからかなり有名だよね。イヌ科の星座は他にもあるよ。おおかみ座とりょうけん座。あと、こぎつね座もそうかな」
ちなみに、こぎつね座はあってもきつね座はない。
こぎつね座のことをきつね座と呼んでいた時代もあったらしいけど、今はこぎつね座で統一されている。
この場が静かだった事が幸いした。この時の月見山さんの台詞を聞き逃す訳にはいかなかった。
――やっぱり私は求められてないのかな
小さく泣きそうな声が聞こえた。
僕が言うのもなんだけど、そこまで感情移入しなくてもいいじゃないか。
たかが星座だぞ、……とも言い切れないか。
「そんなこと言ったらジェローム・ラランドに怒られるよ」
「誰よそれ」
「昔の天文学者。メートル法の確立に携わった人なんだけど、今はどうでもいいか。ジェローム・ラランドはねこ座を作った人だ」
「でもさっきネコの星座はもうないって」
「ちょっと昔話に付き合ってくれない?」
「……」
不満気な目を向けられたけど無視。
申し訳ないけど、こっちも頭の中でストーリー組み立てるのがちょっと間に合ってない。時間稼ぎをさせて欲しい。昔ねこ座があったことは確かに事実なんだけど、今存在しないことだって事実。
僕だって星の世界に拒絶される悲しみは分かるんだ。でも、できることなら星を嫌いにならないで欲しい。
「僕さ、一度だけ星を嫌いになったことがあるんだ」
「そう。一度も星を好きになったことない私に話しても仕方ないんじゃない?」
毒を吐かれたけど話自体は聞いてくれるらしい。
星に興味を抱けない人はたくさん見てきた。そういう人にも好きにはなって欲しいけど、やっぱりどうしても難しい。だから、例えば先月末なら昆虫採集みたいな余興を用意してせめて観望会は楽しんでもらおうといろいろ画策している。
つまらなかったで終わって欲しくない。それは僕も館長も、他のスタッフもみんな思っている。
「誕生日で決まる星座があるじゃん、黄道十二宮のやつ」
「黄道なんちゃらはしらないけど、みずがめ座、みたいなやつだよね」
でも、星に居場所を求めるくらい心を寄せてくれる人には応えてあげたい。そのためなら天文の歴史的背景を覚えるし、非科学的な星占いにだって手を出す。
夜空には、それこそ星の数ほど星が輝いている。そこから派生する話は、星の数の何倍もあるんだ。
嫌いな側面はあって当たり前。
なら、その逆もあり得るはずなんだ。
「そそ。僕は七月生まれだからかに座になる。で、かに座の神話を調べちゃったんだよね」
「? どんな神話だったの?」
「英雄ヘルクレスに気づかれもせずに踏みつぶされて終わり」
「んっ。……ごめんなさい」
肩を竦めながらかに座の不遇っぷりを話す。吹き出すくらいには僕の話を聞いてくれているようで何より。
スタートラインには立っている。なら、ここから月見里さんが星を嫌いになるとしたら僕の所為だ。
「ちなみに明るい星は全くない。一番明るい星でも三等星。目立つ特色もほぼない」
「なるほど、それで嫌いになっちゃったと」
「単純でしょ。自分と少し関連付いているだけの星座が不遇ってだけで、人は星を嫌いになれるんだから」
毎日のように星空を眺め、毎月のように観望会に参加していても、ふとどこかで冷める瞬間は絶対にくる。
二四時間三五六日死ぬまで星が好きな人なんて存在しない。少なくとも、僕は一時期星を見なくなった。
「でも今は好きなんだ。どうして? かに座の神話に続きがあったとか?」
「いいや、あったとしても知らない。かに座は今でも好きじゃないんだ」
でも、僕は再び空を見上げるようになった。
星空案内人になったのもその後だ。
「それなのに、どうして?」
どうして、星を好きでいるのか。
時には学校に行くのを諦めてさえ、県外でしか見えないなら遠征してまで星を追いかけていられるのか。
他の人に説明しようともちょっと難しい。
……というかそんなこと、僕だって
「忘れちゃった」
「へ?」
よっぽど意外だったのか、思わず漏れたんだろう声が聞こえた。
「忘れちゃったよ。それにたぶん、星を嫌いになる前より星は好きになってる。いつからか分からないけど、やっぱり僕はもう星なしの人生なんて考えられないほどどっぷり浸かってたんだ」
僕の星を嫌いという感情は、所詮その程度のものだった。時の流れとともにいつの間にか風化してしまうもの。要するに、時間が解決した。
「ジェローム・ラランドは自分が飼っていたネコが好きでねこ座を作った。今から二百年以上前の話だ。そこから約百年、ねこ座は確かに存在したんだ」
「……」
僕と月見山さんは違う。
知識の下地、見え方、感性、一つとして同じじゃない。
それでも、星はただそこにある。
星座なんて所詮、他人が決めた自分とは無関係なもの。地図としての役割を果たす為の共通認識は必要だと思うけど、なんなら今ここでオリジナル星座を作ったっていい。
「実は今の星座が決まったのってちょうど百年前なんだ」
一九二二年。
国際天文学連合、略称IAUという団体が星座を定義した。以降、表記が多少変わる事もあるが、星座は固定されている。そこから星座同士の境界線が決められたのが一九二八年。本として世に出されたのが一九三〇年で、星座百周年と言える年は今年を含めて三回もある。
「それに星がなくなった訳じゃない。今だってちゃんと空に輝いているよ」
「それでも、今はもうないんでしょ」
駄目か。
なんでねこ座残ってないんだよ。
当時の天文学者イヌ派説。のぞみが喜びそう。
「うみへびに食べられたんだよ」
少し神話をいじる。うみへびのまま行くか原典のとおりヒドラで行くか少しだけ悩んでヒドラの名前を封印。登場する名前は絞らないと分かりにくい。ヒドラ、またはヒュドラーと呼ばれる怪物を知っていればまた違うんだろうけど、あんまりメジャーじゃない。兄(姉かもしれないけど)のケルベロスなら大丈夫だったかも?
「ねこ座を冠した星として名前が残っているんだ。フェリスって言ってね、今のうみへび座にあんだ」
もともと派生が多くて原典を辿れない神話に正解はない。なら、もっともらしく付け足すことも自由なはずだ。
フェリスはラテン語でねこ座を意味する。
フェリスの位置はうみへび座から微妙にズレていたと思うけど、星座がどういった像を結ぶのか、実は定義されていない。決まっているのはどの星座がどの星で構成されているかのみ。星の結び方すら決まっていない。つまり、どんなうみへびを描こうが構わないんだ。
「あるところに、フェリスという名前の猫がいました。彼女の趣味は海辺の散歩です。今日もとことこ海岸沿いをあるいてゆきます」
唐突に寸劇を始める。
頑張れ僕。演出・シナリオ・ナレーター、その他もろもろ全部やるための時間は既に稼いだ。ちょっとだけ勇気を持って、覚悟を決めるだけ。何せ知識を伝えるのと、自作の物語を話すのとではまるで違う。
館長の言葉を思い出せ、コツは羞恥心を捨てることだ。
「そんなある日、日課の散歩をしていたフェリスは、突然現れた怪物うみへびに食べられてしまいました。丸呑みにされて動けません。暗闇の中、身動き一つ取れず死を待つばかりです」
荒唐無稽な神話が結構多い中、導入としてはまあ整合性取れてるはずだ。
あとはうみへびの神話に準えて話すだけ。もともと退治される側の星座だ。改変、というよりは解釈の追加。
「でも大丈夫。この空にもううみへび座の姿はありません。フェリスを飲み込んだうみへびはもう西に沈みました。一人の英雄がその怪物を打ち倒したんです。その英雄は今ちょうど天頂付近、あのあたりにいます。ギリシャ神話において数々の怪物を打ち倒した英雄です」
手をほぼ真上に向けてベガの隣にある星々を指さす。僕につられて月見山さんも空を見上げた。
うみへび座の方はもう沈でる。つまりフェリスももう沈んでいるんだけど無視。
でも、うみへびを倒した英雄を冠する星座は今、少し西にずれているけど見上げ続けるのに首が痛くなるほど上の方にある。あんまり目立つような星座でもないけど、今日は雲もないしよく見える。
「あの星たちこそが、その邪悪な怪物を打倒した、英雄です。その名もヘルクレス」
「ん? ……あれ?」
大人しく話を聞いてくれていた月見里さんが疑問の声を上げる。
よし、伝わった。
「ちなみにヘルクレスがうみへびと戦った時、うみへびに加勢しようとした化け蟹がいるんだよね。ハサミで足を切ろうとしたらしいよ。結局ヘルクレスに踏みつぶされたんだけど」
「どこかで聞いた話ね」
「ほんの五分前をどこかとか言わないでよ。しっかり覚えてたじゃん」
かに座……。
悪役なんだよね。いや、悪役まで行けてたらまだ良かったのかもしれない。モブ以下の物語しかないのに黄道にあるばっかりに名前だけ有名になってしまった。
「見事うみへびを打ち倒したヘルクレスは、お腹の中のフェリスを救出してめでたしめでたし、だ。題目は……『フェリス』の大冒険、あたりにしようかな。今夜限りの即興神話だ。どう? 星と星座はちゃんと全部本物、それも昔使われてたとかじゃない、現在の名前を使ってるよ」
「うんまぁ、ありがと」
お礼はちょっと予想外だった。
俯いているうえに辺りも暗いからよく分からないけど、ちゃんと要望には応えられただろうか。
「ちなみにフェリスって名前は四年ほど前に正式に決まったばかりだよ」
なんでねこ座が復活したのか知らないけど、今の天文学者はネコ派なんだろう。
「四年……。星ってそんな頻繁に名前変わるものなの?」
「え、どうだろ? そもそも、星の名前って時代によってスペルが違ったりするのを統一したのが二〇一六年のことで、あそこで夏の大三角を形成しているベガ・アルタイル・デネブも正式に名前が決まってから十年経ってないんだよね」
「なんか意外。天文って、そういうのもっとずっと昔に全部決まってるものだと思ってた」
僕もだ。
まぁ決まったのアルファベット表記だから日本だとそこまで気にならないんだけど。
織姫や彦星といった日本での呼び名は関係ない。まぁ織姫と彦星よりベガとアルタイルで覚えてる人の方が体感多いから仕方ない。
「ねぇ、さっきみたいに神話を話すのって、いつもやってることなの?」
「いつもは流石にもっと下調べしてる。それに話すことって神話だけじゃないからいつもってわけじゃないよ」
僕の場合、星空案内してる時に館長はじめ他のスタッフがフォローしてくれたり、時に常連さんから解説を受けたりするんだけど、できれば自分で星空を案内したいから今日こそはと入念に調べる。おかしいな、古くからの情報はともかく、最新の情報にも鋭いツッコミが入る。
自分の世界に、一瞬だろうと浸るべきではなかった。
「じゃあさ」
少し和んだはずの空気がまた元に戻った。
月見山さんはねこ座だけでなく、もう一つ夜空に対する虚無感を抱いていた。
「やっぱり月がないと話しやすい?」
「ん?」
「今日新月だからこんなに星が綺麗なんでしょ。ヘルクレス座も、今なら結構見えるけど月が明るいと見えないんだよね。流星群も、今年は月の所為で見えなかったって聞こえた」
こっちもか。
いやむしろこっちが本命か。
さっき誕生日と星座でみずがめ座を真っ先に出してた時にもちょこっと広げようと思ったけどそれどころじゃなかったからね。
いいよ、その挑戦受け取った。星空案内人の名に懸けて納得させてみせる。
「満月は邪魔者なの?」
名簿を見てびっくりしたことを思い出す。
月見里さんの下の名前を漢字で書くと雪月。みずがめ座はだいたい一月と二月生まれの人の星座。
そして、雪月は二月の満月のことだ。