表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/21

13.台詞付きキャラは男キャラの方が多いのを地味に気にしていたのでそれの解消を兼ねて

 いつものお昼休みは天辻君と一緒に食べるんだけど、今日は用事があるらしく残念。

 なので天辻君と食べる前はよく一緒にお昼してた友達に声をかけた。


「私達のツッキーが返ってきた!」


「もう何処にも行かせないからね」


 サキこと浅木夢美とカナカナこと田中香奈多を誘ったら変なテンションで迎え入れられてしまった。

 どうしよう。ちょっとついて行けない。昼休みに話す事がなくなっただけで、それ以外いっつも一緒な気がするんだけどな。



 ――ピーンポーンパーンポーン――


『お昼のラジオ、略して昼ラジ! の時間がやってきました。今日はなんとなんと! 特別ゲストに校内の超有名人、通称”星の人”、天辻大輔さんをゲストにお呼びしましたよー!』


『どうもこんにちは、天辻大輔です。"星の人"の生態が知りたいらしいのでお呼ばれしちゃいました』



 放送部がよくやっている昼ラジ(ラジオ電波を使っていないからラジオではない、は禁句らしい)が始まり、私はようやく彼の用事を知ることができた。


 まずは一曲ということで流行りの曲が流れだした。私達の間には沈黙が流れてる。

 ここからの選択を誤ってはいけない。おもちゃにされる。


「やっぱり私一人d……」


 ――がしっ


 (きびす)を返し、一刻も早く外に出ようとする。

 ところがサキに腕を掴まれ、カナカナにお弁当を奪われる始末。


「そんな寂しいこと言わないでさ、一緒に食べようよ」


「流石に教室じゃかわいそうだし、手芸部室でいいよ」


 今日のお昼が安らげないことが確定した。






『……という訳で、月の公転するスピードは位置によって微妙に変わるから新月から満月までの期間って厳密には違ってしまうんです。今の説明で分からなかった人は加速度と微分、位置エネルギーとかの理解が足りてないって事になりますが皆さんは大丈夫ですか?』


『大丈夫じゃないですよー! せっかくのお昼になんてこと言うんですか。お昼休みは休むからお昼休みって言うんですよ。頭使わせないでください。どうせ物理も数学も赤点ギリギリですよ。なんて事言わせるんですかチキショー』


 放送部の女の人(ごめん、名前聞き逃した。普段もろくに聞いてない)を振り回す天辻君、いつもの調子だなぁ。

 月は地球の周りを廻っている訳だけど、当然いつも同じ距離じゃない。楕円軌道だから遠い時と近い時がある。地球から見た大きさでいえば一割以上の差が出る。スーパームーンやマイクロムーンのことだ。


「ツッキー、いっつもこんな話してるの?」


「あー、うん。そうかな。星座神話とかもあるけど、あんまり楽しい話は多くないらしいし」


「モラハラされたらちゃんと私達に言うんだよ」


「いや、そんな難しい話してないよ。要するに月が落ちてきてスピードが上がった、跳ね上がってスピードが落ちた、ってだけ」


『そんな難しく考えないでください。要するに月が落ちてきてスピードが上がった、跳ね上がってスピードが落ちた、ってだけの話なんですよ』


 「〜〜〜〜!!」


 被った。なんかめちゃくちゃ恥ずかしい。

 二人ともそのニヤニヤ笑い今すぐやめて。


『おお、なるほど。微分が関係するっていうのはなんなんです?』


『え? スピードって位置の時間微分だからですけど?』


『?』


 ……。

 さっさと次の話に行ってほしいのに、ここで時間が止まったように無音の間ができてしまった。

 うぅ、なんなのこの間。


「いやー、ツッキーが彼氏と仲良さそうで良かった良かった」


「いいなー。私も彼氏ほしいなー」


「私の中じゃ一番恋愛に興味無さそうだったのに、蓋を開けて見ればこれですよ」


「あの、恋愛? なにそれおいしいの? って感じだった一学期のツッキーは何処にいったのか」


「いいでしょ別に。二人には浮ついた話ないの?」


「「この話ここまで!」」


 正直な話。

 天辻君を彼氏と呼ばれて悪い気はしない。

 別にお互い気持ちを言葉にして確認し合った訳じゃないけど、私も天辻君もそれを否定した事がない。都合が良かったからなんとなく居心地のいい関係に甘んじてる状態だ。


『ハッ、放送事故! えっと部長、先生。ごめんなさい。その笑顔やめてください。怖いです、怖いです』


『ちなみに速度の時間微分が加速度で、それは位置の二階微分のことなんですよ』


『やめてください、これ以上追い討ちしてもいい事なんて何一つありませんよ。主に私に』


「この時確かに私は彼女に嫉妬してしまった」


「その位置は私のものだったはずなのに」


「二人とも変なモノローグやめて」


 そんな(ちょっとしか)思ってない。

 天辻君の解説聴くのがお昼の楽しみではあったけど、今日はそれがなくて残念だけど、妬いてなんかない。だいたい私は普通に話についていけてる。なんなら当たり前のことを言ってるだけだ。


「あー怖いなー。流石クラスで天辻君を私のもの宣言した人は違うなー」


「そんな事してないってば」


「いやでもあれでしょ、あの水晶のアクセサリーってそういう事でしょ。でしょ!」


 そんな意図ない……事もない。

 じゃないとわざわざ教室で渡したりなんかしない。けどそれをこの場で認める事に若干の抵抗がある。


『というか天辻さん一年生ですよね? なんで微分知ってるんですか? え、私去年は微分という概念事態知りませんでしたよ』


『計算するのに便利だったので独学で勉強しました。先生に言ったら二年生の教科書貸してくれたので、これに全部書いてありましたよ』


『後輩に数学力で太刀打ちできないなんて』


 以前月の速度の求め方を訊いたことがある。流石に難しかったようで、何日かかかったようだけどちゃんと解説してくれた。割と分かり易かったのを思い出す。

 でもごめんね、解説してくれた時は発端が自分だと忘れてたよ。


『次、次のコーナー行きましょう! これは決して私が理解できてないからではないですよ。か、勘違いしないでよね!』


「こんなテンプレ台詞吐く人いるんだ」


「流石にわざとでしょ」


 話を逸らしたらカナカナがノってくれた。助かった。


『質問コーナー! "星の人"に訊きたいことをアンケートしてきました』


『はい、任せてください。太陽系のことなら基本的に答えられます』


 半分嘘なのは知ってる。

 天辻君が知らないこともたくさんあるけど、現代の科学技術で解明できていない謎が多過ぎる。まぁこのラジオだとそこまで深い質問もないだろうし大丈夫だとは思う。関連する知識が一つもないって事はないだろうし。


『大丈夫です。太陽系に含まれてます。ズバリ、天文部ってモテますか?』


 二人が同じタイミングでこちらを向く。

 無視だ無視。


『天文部に聞いてくださーい』


 そういえば天辻君、天文部じゃないね。忘れてた。

 というか質問コーナーってアレか、星についてじゃなくて天辻君に対しての質問か。太陽系云々にちょっと騙されてしまった。


『えー文脈で分かるじゃないですか。でも星に詳しいって素敵ですよね。実際モテるでしょう?』


『うーん。まぁあんまり話す内容ではないですけど、知り合いに元天文部部長の女子大生がいるんで、その人の話でもしますかね。好きな人に褐色(かっしょく)矮星(わいせい)赤色(せきしょく)矮星と白色(はくしょく)矮星の違いを力説したら退かれてそれきりだったそうです。その人の結論としてはモテる人はモテる、モテない人はモテない! らしいですね』


 この話何処かの観望会で私も本人から聞いたなぁ。

 戒めと後続のためにこの話を積極的に広めようという自己犠牲精神溢れる人だった。


「いや、太陽系から出ちゃってるよ」


 主題でないけど、思わず突っ込んでしまった。


「? どういうこと? これ宇宙人の話なの? "星の人"って宇宙人と交信できるの?」


「いやいや、そうじゃなくて矮星の話。太陽よりちょっと重いくらいの星が時間をかけて白色矮星になるの。赤色と褐色は知らないけど、太陽って赤くないし違うって事は分かる。たぶん太陽系には一つもないよ」


 太陽は黄色、もしくは金色らしい。

 そもそも矮星って小さな恒星のことだったはず。だったら三つある時点で二つは確実に太陽系の外だ。だって太陽系の恒星は太陽しかない。


『ちなみに褐色矮星だけ恒星じゃないです。木星が結構惜しいところまでいってるけど、惑星と恒星の間みたいな星ですよ』


 ……。

 えー。違ったのか。心の中の事とはいえ、ちょっと恥ずかしい。

 惑星と恒星の間みたいなってどういうことだろう。


「あとで天辻君に聞こうっと」


「聞いた? ねぇサキ聞いた? これはもう惚気以外の何物でもないよ」


「聞いたよ。流石、あの”星の人”と付き合えてるだけある。ごちそうさま」


 意図せず声に出してしまったようで、二人してからかってくる。

 顔を赤くしながらそれでも睨み返したら黙ってくれた。あとはその微笑ましいものを見るかの様な目をやめてほしい。


『いやそこちなまれても分かんないんですよ。ちなみにですが"星の人"はどんな人がタイプなんです? 私とかどうですか?』


『矮星の違い語っても退かない人じゃないとノーセンキューです』


『あ、私駄目でした』


「相思相愛じゃん」


「いや、話聞くだけよね?」


「ごめん私無理。いや、一回二回なら全然構わないし、たまに放課後やってる”星の人”講座もよく参加してるけど、毎日は無理。正直ツッキーすごいなって思ってる」


 あー。興味ないこと、じゃなかったとしても延々と同じ話題だと飽きちゃうのは分かる。

 天辻君、私以外だとすぐ天文の話題やめちゃうのもその関係かな。その、たまに放課後やってる奴もだいたいは五分で終わらせちゃうし。


「今日は流石に例外だろうけど、いつもすぐに星の話題終わらせるのって英断だと思う。毎回お腹いっぱいまで語られたら次から話聞く自信ないなぁ」


「私も。まぁそこら辺が"星の人"が人気たる所以なんじゃないかな」


「じゃあ二人の分は私が聴いておくよ」


 少しだけ惚気る。

 この特権を手放す気はさらさらない。


『ジャン、続いての質問は! "星の人"は何か星以外に好きなことありますか? これもちゃんと太陽系に含まれてるので応えてくれるでしょう!』


 太陽系関係ない。

 けどこれちょっと私も興味あるなぁ。


「なんかいきなり真剣になったね」


「煩い」


『うーん。この前パルクールの見学に行ってきました』


 ――ゴッ


 私が額を机に打ち付けた音だ。

 流石にサキもカナカナも心配そうな気配を漂わせてる。でも私はちっとも大丈夫じゃない。


「これ、私のお父さんと行って来たんだって。……私抜きで」


「……」


「……」


 二人は何も言わない。

 天辻君謎の人脈あるよね。私より先にパパと仲良くなったりさぁ。いやパパとは偶然だったらしいけど、パルクールやってる人達は観望会が接点だからそこまで偶然じゃない。でもだからって普通動画撮影に呼ばれたりする?


『パルクールって言うのは、あー。なんかニンジャみたいに街中を走ったりするスポーツです。障害物を颯爽と飛び越えて行くのってカッコいいですよ』


 だって

 ……いや、うん。油断した。だって私はその人達知らないし私が誘われた訳じゃないから行きたいって言いづらかったし。なんでお父さん行ってるのよ。もう私も観望会全部行っちゃおうかなぁ。迷惑かなぁ。


「え、もう家族ぐるみの付き合いなの? 早くない?」


「進み過ぎだよ。ツッキー、もうそんな遠い所に行ってたんだね」


 都合良く顔を伏せているので無視してそのまま続きを聞く。


『はい、ジャン! イヌ派? ネコ派?』


 ――ピクッ


 耳(ネコの方)が揺れる。

 大丈夫だよね。ちゃんとネコ選んでくれるよね。でものぞみちゃん強敵だからなぁ。一緒に暮らしてるって狡くない?


『なーんて。聞くまでもないですね。クラスの女の子に教室で無理矢理ネコ耳つけたって噂がありますしやっぱりネコ派ですよね。だそうです。"星の人"、なかなか良い趣味してますね』


『待っ、いや。んー、いいや。否定できないのでたぶんネコ派です。まぁ派閥に入るほど特化してないですけどね』


 いや、この耳は自前だから。

 確かにサキやカナカナと違って隠す必要がないからネコ耳姿でいる事に関しては気が楽だけど、この流れで肯定されたって嬉しさはさほどないよ。


「”星の人”そこ否定しないんだ」


「潔い。ツッキーはノリノリでにゃんにゃんしてたし無理矢理って部分は嘘八百よね」


「その言い方やめて」


 流石に風評被害が過ぎるので顔を上げてカナカナを睨みつける。


『おおう。認めちゃいますか』


『噂を知らない人のために念のため補足したいんですけど』


『はい』


『めちゃくちゃ可愛いです!』


『訂正じゃないんかーい!』


「まぁツッキーは可愛いもの。"星の人"はちゃんと見る目持ってる」


「見た目もだけど、ポーズ取ったりしてくれるもんね。個人的にはあとで羞恥心がじわじわ大きくなった時の、顔は真っ赤なんだけど平静を取り繕ってる様子が大好き」


「分かる」


 いっそ殺して。


『それで、その彼女さんとは今どう言った関係なんです?』


『僕個人への質問は受け付けますが、僕の身近な人に関してはあんまり答える気はありません』


『なるほど、それもそうですね。一般女性への質問はやめておきましょう』


「この言い回し、芸能人が結婚する時の奴じゃない」


「大して変わらないじゃん」


「それもそっか」


「二人とも馬っっっ鹿じゃないの!」


『一般女性て……。まるで僕が一般男性じゃない様に感じるんですけど?』


「「「『ないよ!』」」」


 いや、私も一般の括りには入れないかもしれないけど、少なくとも私はラジオのゲストに呼ばれるような人間じゃない。



 ……午後の授業受けたくないなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ