1ー03.責任は先送りで
ベルゼの話により、遠藤は大まかに自身の置かれている状況を把握した。
勿論、異世界召喚された云々については、あまりにも自分の常識からかけ離れた話であった為、俄かには信じきれないと言うのが正直なところだった。
その一方で目の前の美少女が吸血鬼だと言うことについては、彼女の人間離れした美しさもあり、意外にも冷静に受け止めていた。当初、彼女は遠藤の事を研究題材として保護したのだが、結果として命を救ってくれた恩人である事に変わり無かった。
「召喚だの勇者だのについては正直なところピンと来ていないのですが、貴方が私の命の恩人という事は良く分かりました。私が目覚めた時に口付けをされたのも投薬か何かをしていたのですね。本当にありがとうございます。」
遠藤はお礼を告げると共に目覚めた時のベルゼの行動についても善意に解釈して、丁重に礼を伝えた。
「あれは私が欲しただけです。」
「えぇっ?」
遠藤としては素直に礼を受けて入れてくれて、あとはスルーしてくれれば良いものをベルゼは正直な発言をする。
「私はエンド様が気を失っている間に貴方を眷属化しようと思い、ワインを口移しする時に魅了のスキルを使用しました。」
悪びれた様子も無く、あっけらかんと軽い口調で恐ろしい事実を口にする。
「でも、成功しなかったんですよね?」
遠藤は務めて冷静に受け応える。
「そうなのです。失敗して眷属化、出来ませんでした。とても残念です。」
会話を見る限り残念なのは美少女の方に見えるのだが、本当に残念そうに話す美少女にエンドは掛ける言葉が思いつかない。
ベルゼは絶句している遠藤の様子を、自分に話を促していると判断して言葉を続ける。
「エンド様が抵抗したので、反対に私が魅了される事となりました。その結果、私はあんな破廉恥な行動を・・・エンド様、ヒドイです。」
「え?どうしたら、そんな話になるの?」
ベルゼのまさかの責任転嫁に遠藤も流石にツッコミを入れる。
「しかも効果はまだ残っているのでエンド様は責任を取って下さい。」
そう言うとベルゼは遠藤の首に両腕を回して、またもや口付けを迫って来る。どうやら、まだ魅了効果が続いているらしい。
「これ、なんだか危ない状況になるのではないのか?」との懸念も残るが、積極的にグイグイと迫ってくる超絶美少女を相手に遠藤が理性を保ち続ける事は難しかった。遠藤はベルゼの舌を受け入れると後は塞き止める事など出来ず、互いに激しく絡め返した。
遠藤がベルゼを仰向けにして、上になると糸を引きながら互いの唇が離れる。暫し見つめ合った後、ベルゼが遠藤に囁く。
「優しくして下さいませ。」
ベルゼにとっては、これが自身の217年の人生での初めての体験となる。だから遠藤に「優しく」とお願いしたのだが、これまでの積極的な行為の所為もあって、遠藤には「押すな押すな」的なネタの様に伝わっていた。
遠藤は「分かっている」の合図がわりに軽く頷いた後、ベルゼに伸し掛かると、あとは激しく、力強く動いた。
「あぁ・・・」
「そんなぁ〜っ・・・」
「むリィィ・・・」
「らメェ・・・」
ベルゼが何度もの絶頂を迎え、漸く遠藤がベルゼの中で果てると、やっとベルゼの魅了状態も解消された。
激しい情事を終えた後、ベルゼは遠藤の腕に頭をチョコンと乗せて腕枕の体制で遠藤の顔を見上げる。
「優しくってお願いしたのに・・・エンド様ぁ。」
魅了が解けて素に戻った美少女の甘えた声と上目使いがクリティカルヒットして、今度こそ本当に魅了されてしまいそうだと遠藤は思う。
「初めてだったのに・・・。こんな凄い事をされたら、もうお嫁に行けません。責任を取って下さいね。」
「責任を取ったつもりが、更に責任を負わされている。オジさんは困ってしまうな。」
遠藤は理性を保てず、勢いに任せてベルゼを抱いたが、この世界に来たばかりで、責任を取れる当てがない。これは命までもは取られないにしろ、臓器ぐらいは取られる覚悟はしておいた方が良い状況かも知れない。
そして、遠藤が意識下で考えているのは、「これってコンプライアンス案件として問題になる可能性があるのでは?」という事だった。長年の会社員生活の弊害である。
一方、ベルゼは遠藤のオジさん発言に反応して来た。
「エンド様は人間族で言うなら、ちょうど20才くらいに見えます。この世界に召喚された際に肉体が過度に再生されたものと思われます。」
「ん?」
遠藤はこの時に初めて自分の肉体が若返っている事に気づく。
確かに先程の情事においても最近では記憶になかった持久力だったと思う。
と言うか、まだまだ余裕があるのだ。そして目の前には裸の超絶美少女がいる。
「責任については後で考える事として、おかわりしようか?」
「え?」
ベルゼは遠藤の言葉の意味が理解出来ず、キョトンとした表情をしていたが、遠藤は構わずベルゼに覆い被さり再び情事に耽る。
「あ〜、らメェ・・・」
この日、遠藤は責任を先送りして体力に任せてベルゼとの行為に励んだ。
セカンドライフでは美少女の「らメェ・・・」が響き渡った。