きらきらひかるその6
ゆずとはなにをみたんでしょうか?
そこには、たくさんのケモノたちがいた。
キツネ、リス、うさぎ、たぬき、あらいぐま、ねずみ、イノシシ。みんな、おんがくにあわせておどったり、きのみをたべたり、なにやらたのしそうだ。
ゆずとは、やっぱりまだゆめのなかなんだとすこしがっかりした。だって、こんなのげんじつであるわけがない。
すると、きこえていた音がなりやみ、どうぶつたちもしずかになり、ちりぢりだったケモノたちがまんなかにあつまりだした。そこへ、1匹のケモノがまえにでてきた。
キャンプ1日目にゆずとがであった、あのへんなケモノだった。
あっ!あのときの!
と、思わずでそうになったのを、じぶんでくちをおさえ、グッとこらえる。
そのケモノはペコリとおじぎをすると、ほそいしきぼうをもって、りょうてをまえにだし、オーケストラのしきしゃのようにぼうをふりだした。
すると、どこからかすきとおるような音がきこえてくる。
どこからこの音がしているのか?
ゆずとがみあげると、雨のしずくがおちた木のはっぱにはじかれ、木のえだにしかけられた、てっぱんやペットボトルや缶にあたり、おんがくをかなでているのだ。
かぜでビニールぶくろがシャラシャラとなびいている。
ポンポントントン♪
ポンポロトントン♪
シャラシャラポロラン♪
すると、それに合わせてしきをしていたあのケモノが、いつのまにならべていたのか、たくさんのワイングラスに水を入れたもののまえにきて、なれているのか、あのみためではそうぞうがつかないほど、なめらかに、やさしくコップのふちをまわしながら、かなではじめた。
キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュッ♪
今まできいたことがないグラスハープのやさしいしらべに、ゆずとはいままでおきたことのきょうふをわすれ、ききいっていた。
キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ〜♪
しんっ……
そんなくうきがながれる。
パチパチパチパチ……
ゆずとははっとした。ケモノたちがいっせいにゆずとをみている。
えんそうのすばらしさに、ゆずとはおもわずてをたたいてしまっていたのだ。
そのしゅんかん、ケモノたちはちりぢりになってにげていった。
あっというまに、さきほどまでのくうきとはうってかわり、あたりにはせいじゃくがおとずれた。そこには、あのケモノと、ゆずとの2人きりになった。
「ごめん!ぼくがいたから……」
「なんであやまるのさ、さいごまできいてくれたんでしょう?うれしいよ」
そのケモノはやさしくこたえた。
「きみはいったいなにもの?」
「ぼくは、ねこまたまたぞう。ようかいだよ」
「ようかい?」
「そう、ねこまたっていうようかいなんだ。ふつうのひとには、ぼくがみえないよ」
「そうなの?」
やっとここにきて、あのとき、あおいがこの『またぞう』をみつけられなかったりゆうがわかった。
またぞうはぽってりしているたいけいなわりに、かるがると木をのぼり、ひょいひょいとえだにかけていたてっぱんやペットボトルやあきカンなどをビニールぶくろにいれてあつめている。あっというまに、すべてをとりおわって、またぞうがもどってきた。
「いつもここでこんなことをしてるの?」
「よっこらしょ。いつもじゃないよ。このあいだあったばしょで、はなしたじゃない。こんかいは、あずきあらいのかわりにここへきたんだ」
「こんかいは、って、いつもはここにいないの?」
「たまにあそびにはくるけど、いつもはいないよ」
「これは……ゴミ?」
「そう。にんげんがやまにすてていったゴミだよ。おもしろいくらいたくさんあって、あつめてたらこれでなにかできるんじゃないかなっておもって、さっきの『えんそうかい』をおもいついたんだよ」
「すごい」
「えへへ」
「いや、このゴミのりょうが」
「あ、そう」
「あ、いや、ごめん、ちがう、さっきのえんそうもすごかったよ」
「あ、そう?えへへ、ありがとう」
「このゴミどうするの?」
「もってかえるさ」
「どうやって?」
「こうやって」
またぞうは、大きなふくろにはいって5つくらいあるゴミをあたまにのせ、上1列にひょいひょいっと、すべてその上にのせた。ゴミはふしぎとおちてこない。
またぞうはわきのポケットからマッチをとりだし、シュッとすった。すると、きれいなみどりいろのほのおがたちあがり、それをそのままポイッとじめんになげた。
「え!?かじになっちゃうよ!」
ゆずとが思わずさけんだときだった。マッチは下におちるしゅんかん、ボゥン!とはじけ、あたりはしろいけむりにつつまれた。ゆずとが目をあけると、いつのまにか、けむりのなかから、一けんのおみせがすがたをあらわした。かんばんはひらがなでかいてある。
「えへへ。ぼくのはなしが、お子さまむけの童話になったデビューきねんでさ、お子さまたちにあわせてかんばんもひらがなにリニューアルしたんだ」
「ねこ…またてい?」
「うん、ステキなお店でしょ?」
またぞうはお店にはいると、いちだいのきかいをもってでてきた。
おもたそうなきかいをドシン!とおくと、きかいのふたをパカッとあけ、ゴミをぜんぶおしこむ。
ガチャコン♪
ガチャコン♪
ガチャコン♪
ガチャコン♪
ガチャコン♪
音がしなくなったので、どうやらさぎょうはおわったようだ。
「よし」
またぞうは、ふたをパカッとあけた。
そこにはさっきの大きなごみはなかった。
「ゴミは?」
「ん?そこにあるでしょ」
「え?」
ゆずとがよくみると、さっきのゴミのようなものはある。しかし、さっきとちがうのは、それが、ちいさくちいさくなっいることだった。
「これがさっきのゴミ!?」
「うん、それでね、きみにおねがいがあるんだ」
「なに?」
「これは、きみたちにんげんが山にすてていったゴミなんだ。ぼくがこれをすてるのはかんたんさ。でもそれだと、山にすむものにとって、にんげんは山にゴミをすてるだけの、ただのわるものになってしまうんだ。たとえ、きみがすてたゴミじゃなくてもね」
「そうなの?」
「そうさ。だって、きみはじぶんのだいじなばしょにごみをすてていくやつをすきになれるかい?」
ゆずとは、おもいだすことがあった。ゆずとのクラスには、ゆずとがだいきらいなこがいる。その子にはなんども、おかしのゴミをおしつけられたことがあったのだった。ゆずとはそんなその子が、ものすごくいやだった。
「なれない」
「でしょう?」
「山は、ケモノや、ムシや、しょくぶつたちのいえなんだ。かれらをまもってくれないかな。ゴミをすてるにんげんはいるけど、山をまもるにんげんもいるんだってことで」
ゆずとは、ついさっきのことをおもいだしていた。いっしょにまたぞうのおんがくをきいていたケモノたちのこと、さっきまでのゴミのりょうのこと。そして、あのケモノたちはここでくらしているんだと。
小さくなったゴミをみて、ゆずとはいった。
「わかった!ぼくがこれをすててくるよ!」
「ありがとうたすかるよ」
またぞうはペコンとあたまをさげておれいをいった。
さてさて、山をまもってほしいとまたぞうにお願いされたゆずと。
これからのてんかいもまだまだみのがせません!