きらきらひかるその5
さて、きもちのいいおいしいごはんをたべたこどもたち。
さて、しかし、山はやさしいだけじゃないんだなぁ。
ハイキングもおりかえしとなり、また5人になってそれぞれのコースにはいっていった。
さっきまでてっていたお日さまも雲にかくれてしまい、空がくらくなってきた。
「さっきまであんなにいいおてんきだったのに」
さゆりが声をおとしてつぶやく。
「山のてんきはかわりやすいからね。雨がふってきてもいいようにウィンドブレーカーをきておこうか」
ゆきえさんのしじにしたがって、こどもたちはそれぞれ小休止のあいだにウィンドブレーカーをとりだしきた。
すこしすると、よそうしたとおりに雨がふりだした。
「あーふってきた!」
あさよりも、すこしだけつよい雨が5人にふりそぞく。森にいくまでは、まだまだそうげんを歩く時間はながそうだ。
と、れつのいちばんさいごに歩いていたあおいが、まえを歩くゆずとにはなしかけてきた。
「ゆずと、おしっこしたい!」
「え?」
「おしっこ!」
雨のおとがつよく、耳元でようやく『あおい』のこえがきこえた。
「もう、さっきしておけばいいのに」
「まってて、すぐしてくる!」
あおいは、みちから外れたしげみにはいっていった。
ゆきえさんたちは、ゆずとたちにきづかず、さきをいってしまったようだ。
「おいかければいっか。みちは1つだし、くるときにきたみちだし」
「ゆずと!」
「なに?」
「はさまっちゃった!」
みると、あおいのずぼんのコカンぶぶんのファスナーがズボンのきじにはさまっている。
「そのくらいじぶんでやれよ」
「てつだってよー」
「やだよ」
「けち!」
正直、ひとのコカンぶぶんは、ともだちでも、ふくでもさわりたくない。しかも雨でびしょびしょだ。
そんなことをおもいながらまっていると、ようやくあおいがもどってきた。
「ごめんごめん、いこうか」
「てあらったか?」
「ほら!」
あおいは、雨のなか、じぶんの手をゴシゴシしている。2人はみちにもどり、足早にあるきだした。
「あめすげー!」
「いそげよ」
雨はなかなかやまず、そうげんもなかなかおわらない。
「おーい!!」
ときどきおおごえをだしても、へんじもない。グループの3人にもまだおいつけないようだ。ゆずとはあることがきにかかり、すこし不安になってきた。
「ねぇ、こっちのみちであってるっけ?」
「みちは1本でしょ」
「1本だけど、さっきみちにはいるとき、左であってたか?」
「左でしょ」
ゆずとは右だったきがしてきた。
「……右だったきがする」
ゆずとが思っていた同じタイミングであおいがいった。さっきは、まよわずに「左」っていってたのに。
「右かな?」
「もどろうか?」
「でも、左であってたらどうしよう」
「えー」
どうしよう。
ふたりはたちどまってずぶぬれになりながらかんがえた。
「このままいこう!」
すると、あおいがきりだした。少々《しょうしょう》やけくそにもきこえる。どうやら、ながくかんがえるのはにがてなようだ。
「……わかった、いこう」
かんがえてもわからない。ゆずとはそうおもい、来たみちをあるきだそうとした。しかし、はっとした。
「ねえ、どっちあるいてたっけ?」
「え?」
そうなのだ。じつは、雨の日のそうげんは、とおくのけしきや、めじるしなどのけしきが分かりづらく、おともきこえなくなる。どっちからきたのか、おとなでもあっという間にまよってしまうことがあるのだ。
そう、いよいよふたりは、そうなんしてしまったようだ。すると、だまっていたゆずとがなにかをおもいだした。
「そうだ!そうなんしたら、そこからうごくなっていわれたんだ!」
それは、ハイキングにいくまえに、かかりのひとたちからせつめいされていたのだ。
「えー?そんなこといってたっけ?」
「あおいがきいてなかっただけだろ」
「でも、みちはあるじゃん?森までとりあえずあるこうよ」
たしかに、このままではすわることもままならない。あまやどりをしたい。
「じゃあ、森までだぞ」
「いこう」
2人はいくほうこうがわからないので、あおいのていあんで、「いっせーのせ」で、じぶんがおもったほうこうをゆびをさすことにした。
「「いっせーのーせ!!」」
2人はどうじに左をゆびさした。これにはおたがいに、すこしだけホッとした。
とりあえず、一時的にまよいをすてた2人は、左の方向にズンズン歩いていった。
それでも、歩いても歩いてもつづくそうげん。あさは、あんなにきもちのよかったばしょなのに、いまはこわくてしかたがない。
こんなばしょ歩いたっけ?
こんな石くるときにあったか?
そんな、ふあんなことばかりをかんがえた。
どれくらい歩いただろう。ようやく、森がみえてきた。
よかった!これでかえりのみちもわかるはず!
森の中をあるきだす。と、ちょうどいいすわれそうな場所があった。
木がさえぎり、雨のしずくがそうげんにいたときよりもやわらかくなった。2人はそこにすわってホッとした。
しかし、すこしして2人はあることにきづく。
「ねぇ、こんなところ、とおってないよね」
くるときはなかったはずの大きな岩がやまみちのまわりにたくさんゴロゴロしているのだった。今すわっているの岩も、くるときはなかったはずだ。
こんなとこ、とおったらぜったいにおぼえているはず。
ふあんがげんかいをむかえた。なみだがあふれてくる。とうとう、ゆずとはこわくてなきだしてしまった。
「……っぐすっ、なくなよぉ……」
そういうあおいもゆずとより、ないている。
うわーん!うわーん!
2人は声をあげてないた。
どれくらいないたのかわからないが、いつのまにか2人ともなきつかれ、あるきつかれ、ねてしまった。
ゆめのなかだろうか、なにかがきこえる。
ちゃっちゃっちゃっちゃっ
ちゃっちゃっちゃヘイヘイ♪
ちゃっちゃっちゃっちゃっ
ちゃっちゃっちゃヘイヘイ♪
ゆずとはめをさました。
なんだろう?
ヘイヘイ♪
ちゃっちゃっちゃ
おきてもきこえてくる。
ゆめじゃない!
だれかいる!?
ゆずとはうれしくなって、音のするほうにいこうとしたが、あおいのことをおもいだした。みると、あおいはぐっすりねているようだ。
すこしだけならはなれても大丈夫かな。
ゆずとはふしぎな音のするほうにむかった。
すこしだけみちを外れたむこうがわが光っている。やはりだれかいるようだ。
ゆずとは、そおっとのぞいてみた。
さて、いたのはだれだったのか?
みなさんはもうわかりますかね?
いよいよ登場しますよ!