表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

平和です 7

目の前には初めて食べるお餅に悪戦苦闘する美青年。

チーズより粘り気のあるお餅を口から切り離そうとフォークで頑張るアー君が微笑ましい。


先日、神の遣い(レフさん)が米、小豆、餅米、餅粉、醤油を厨房に届けてくれた。

二百年前の記憶を思い出しながら、餅をつくための臼と杵を絵とジェスチャーでなんとか説明した翌日。

木製の立派な臼と杵をガンツさんが用意してました。

さすが魔法のある世界……仕事が早い‼︎毎回思うけどガンツさん何者⁉︎

せっかく用意して貰ったので餅米を蒸して餅つきを厨房のみんなでやったんだけど。

見本として一番最初に私がつこうとしたのに杵が重くて持ち上がらないという……みんなの「ああ、お前ゴブリンより弱いもんね」という視線が大変痛かったです。

結局ガンツさんがついてくれました。

料理番のみんなは初めてやる餅つきだったのに手際良すぎ。口頭説明だけでなんで普通に出来るの⁉︎料理番だから?

餅を丸めるのも熱くてちまちまやってた私に対して、他のみんなは平然とした顔でさっさと丸めてた。魔族の手のひらの皮どうなってんの。

とりあえず大根おろし醤油、砂糖醤油の二種類で醤油の試食も兼ねての餅体験。

初めて食べる食感に最初は恐る恐るだったみんなも、最終的にはあれこれレシピを考案するくらいには気に入った模様。

ただ、そんなに餅米の量がないので魔王様と料理番分くらいしか賄えない。

というわけで、本日は魔王様に献上するためにぜんざい作ってみました!

ガンツさんにオッケー貰えたし、アー君にも試食して貰おうとお昼ご飯に出してみた。

焼いたお餅が香ばしいぜんざい。

「シーナ、これ美味しい」

ぜんざいに目をキラキラさせるアー君。

食べにくそうだけど味は気に入ったようで、今日のアー君も可愛いです。

「甘いのにちょっと塩っぱいアズキのスープとオモチ?が不思議だけど美味しい」

「餅粉もあるからお団子も作れるよ」

「オダンゴ……?」

きょとんと首を傾げるところも大変あざと可愛い。

「お餅みたいにモチモチしたおやつだよ」

おやつ、という単語にぱあっと表情が明るくなる美青年。小さい頃から変わらない素直さにお姉さん胸キュンです。

お姉さんが覚えてる限りの美味しいおやついっぱい作るからね。

おはぎとかきな粉餅とか。

田舎の祖母ちゃんありがとう!手伝わされてた当時、超面倒臭いとか思っててごめんね‼︎

二百年経っても意外と覚えてるから、日本人の食に対する執着心たるや。


「そういえば図書室に東の国の童話集があってね、内容が面白かったよ」

「童話?どんなやつ?」

「竜のように強い竜太郎が桃退治に行く話とか」

桃太郎じゃないんかい‼︎というツッコミを入れたくなる。というか竜太郎は桃に何の恨みがあるのか。

「ああ、寄生桃の話かな?アレ、実は美味しいけど危険だからね」

「きせいもも」

「うん。生物の体に種子飛ばして苗床にするんだよ。発芽したらその部分を削ぎ落とさないと全身の養分奪われるんだ。発芽するまで気づきにくいから寄生桃の傍には近寄らないようにね」

「怖っ‼︎」

桃怖い‼︎

そんな危険な桃なら退治されるわ!危なすぎる‼︎

お供も火竜、火炎鳥、火鼠だったし。桃に対して過剰戦力とか思ってて正直すまんかった。

燃やさなきゃこっちがやられる。

「私の世界の話に似てるようで全然違った……」

「シーナの世界の話?」

「桃から生まれた桃太郎が、猿、キジ、犬をお供に鬼ヶ島に鬼退治に行くお話」

「えっ……シーナの世界の人間て桃から生まれるの⁉︎」

アー君が純粋すぎる件について。これ肯定したら信じちゃいそうだな。

というか、ツッコむとこそこなんだ。お供の猿キジ犬にはコメント無しか。

「ちゃんと女性のお腹から生まれるよ。童話だからね、色々逸話があるんだよ……」

実は桃を食べて若返った翁と姥がハッスルして出来た子が桃太郎だとか。

子ども向けに改編されてるのが一般的だしね。日本昔話は純粋なアー君には言えない内容も多いんだよ。

「因みに竹からお姫様が生まれてくる話もあるよ」

「タケって?」

「木の一種だね。中が空洞になってて、その竹を切ったら小さな女の子が中から出てくるの」

「ドライアド?」

「絶対違う」

ドライアドだとしたら木を切った時点で翁がシバかれると思うの。

友人にドライアドの子いるけどとても強かというかキツめの性格してらっしゃるよ。前に衛兵が訓練中に武器飛ばして庭園の木を折った時、めちゃくちゃ締め上げてたから。故意じゃない事故で半殺しにしてたから。翁死んじゃう。

「その女の子は成長すると絶世の美女に育って色んな男性に求婚されるけど、結局は故郷の月に帰るの」

「…………月神の子か。なら魔族だね」

「そういやみんな月の神様を「父神」って呼ぶね」

「魔族の祖は月神だからね。人間は太陽の女神を母神と呼ぶらしいよ」

それらしい話をこの世界の創世神話みたいなのに書いてあった気がする。

字を覚えるのに必死だった頃に勉強の一環で読んだからうろ覚えなんだよね。

今度もう一回借りて読んでみようかな。

「魔王領の民は、死んだら月にある父神の庭に行く」

「私もそこに行けるかな……それとも魂だけ元の世界に帰るとか?」

帰ったら閻魔様に地獄行き判定されそう。親不孝の罪で。できればこの世界の出来事は治外法権でお願いしたい。

「シーナも一緒がいいな。シーナがいるなら父神の庭も寂しくないし」





日本の神様、仏様、閻魔様。

すみません、弟が可愛いこと言うので死後はこちらの神様のお世話になりたいと思います。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ